現代版D FAレンズを入手して、ひとしきり撮影して思う事は、やはり現代流の写りと言う事です。レンズ硝材の違いもあると思うのですが、コーティングやレンズ構成も大幅に見直されていますので、旧来タクマーとの違いもよく判る感じです。Mレンズからはツァイスとの技術提携も進みましたので、このあたりのレンズから現代流の写りに変わって行ったという感じです。
端的に表現すると里びの雰囲気という感じなのですが、どちらかというと抜けがあまりよくなくてもっさりとした写りと言う事になります。昔レンズは結構収差を残しているというか、かなり改善はされているけれどいくばくかは残っているという雰囲気になります。逆にこの雰囲気が微妙な味付けとして表現に使えますので、一概に悪いとも言い切れません。
良く撮影するのがネイチャーやお里の雰囲気と言う事になるのですが、どちらの被写体も新しいという雰囲気ではありません。俗にいう古ぼけた感じであって、侘びと寂の雰囲気が漂います。樹木や河原の土手もそれこそ何十年同じ形で存在していますので、少し古ぼけた雰囲気を醸し出しています。
この様な被写体をD FAレンズで撮影すると、何となく新しいような雰囲気になってしまう訳で、雰囲気が違った感じになってしまいます。これはペンタックスQ用のレンズでもいえることで、抜けの良い新しい雰囲気で写ってしまいますから、少し画像を古ぼけた雰囲気にしようとするとかなり難儀するという感じです。
青空と新雪の初々しい感じでは、殊更よく写ってくれるのですが、民家の軒先に吊るして干してある玉ねぎなどは、鮮やかに写ってしまって面白くないという感じです。やはり住み分けという感じで、新緑の季節や桜の花など鮮やかさを求める時にはD FAレンズがマッチしそうですし、秋の少し寂しげな雰囲気の時にはタクマーが似合いそうです。
タクマーで撮影するとうっすら里びの雰囲気になってくれる訳で、どぎつく変化すると言う訳ではないのですが、やはりこの描写は自然がいっぱいの石川県ですから、とてもマッチするという感じです。では、D FAレンズを使ったときに里びの雰囲気となると現像ソフトウエアの出番になるのですが、K-1には里びのモードが付いているという嬉しさが有ります。
それでも里びのモードはかなりきつく写りますので、少しマニュアルで彩度を持ち上げながら各色の増減度合いを少しフラットに持ってくる調整も必要というところです。いずれにしても現像ソフトウエアのテイストで作ってしまってありますので、殊更気にもならないのですが、現代レンズの完璧な写りに少々味わいの鼻薬を付けるという感じです。
その時の雰囲気を予想しながら、撮影行で持ち出すレンズを選べるというのは、ある意味贅沢なことかもしれません。現代版の抜けの良さや多少もっさり写りのタクマーを、被写体の雰囲気に合わせてチョイスできる訳で、面白いと言う訳です。今まではタクマーとQ用レンズと言う組み合わせでしたが、選択肢が増えて良かったという感じです。
それでは、先月下旬に撮影した写真から掲載します。
PENTAX K-1 SMC Takumar 300mmF4
撮影データ:1/160sec F8 ISO200
暖かな日が多くなって、早くもとさみずきの花が満開になりました。結構早い満開という感じで、桜の花が咲きだすころには盛りを過ぎてしまう勢いです。