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カンパとシマノ、ブレーキの利き方設計の違い

2012-04-01 13:07:32 | シマノ製品調査
今度は、妻がレコードのブレーキを持って来てくれた。エライゾ、我が妻!


よく記事とかブログで、カンパとシマノのブレーキタッチ、効き具合の比較を目にします。

「シマノは強烈なストップパワー。ガツンと効く」

「カンパはコントローラブル。制動中のコントロールがし易い」

まぁ大体、書いていることはこんなもんでしょう。


何故こうなるか?現物を見て、考えてみました。

まず、両社のブレーキを見て下さいな。


構造は同じですね。

カンパの設計思想が出てるのが、2箇所あります。


まず、ワイヤーで引っ張られるアーム。

カンパはこのブレーキを「スケルトン」と呼んでいます。「スケルトン=肉抜き=軽量化」だと思ってましたが、間違ってました。
この形状は、アーム剛性の非線形化(又はプロファイル化)狙っていますね。つまりは、あえて剛性ダウンさせてます。


何故か?

カンパはエルゴノミックを全面に立てています。
人がブレーキを「握り締める」時、どうなるでしょうか?

人間の手は「繊細」であると同時に「力強さ」もあります。
誰でも鶉卵を摘めるし、アルミ缶ぐらいなら潰せます
でも、人間に出来ないのは、「アルミ缶を2/3だけ潰して」って要求なんです。

つまり、「人は高い握力のコントロールが苦手」なんです。

カンパは、高い握力で以て高い制動力が出ている時、あえてそのアーム剛性が下がる設計になっています。

証拠は、上下のアームの位置。

下アームがタイコの中心に、上アームがタイコのモーメントを受ける位置に繋がっています。
また、上アームは、下アームとの繋がりがなく、薄く弧を描いた形状になっています。つまり、上アーム剛性を上げる設計とはしていません。上アームは、完全に「剛性コントロールアーム」です。

この設計の結果、ある所まではリニアに制動力が立ち上がり、その後、上アームの変形により、剛性が下がり、高い握力域でもコントロールできるとのインフォメーションをライダーに与える…となります。

因みに、カンパのコントロール性をより上げたい人は、この上アームを更に薄く削るとイイでしょう。
逆に制動力に不満のある人は、上アームと下アームをくっ付ける(板を貼るとかで)とイイでしょう。
(もちろん、オウン・リスクで)


カンパのブレーキのもう一つのポイントは、パッドとアームの間。ここです。

くびれてます。このクビレにエロさを感じる人も多いでしょう。(←そうか?)

ブレーキ時、ブレーキパッドはホイールに引きずられます。このパッドからブレーキアームへの力は、ピボット部においてモーメントとなり、ピボットシャフトの作動抵抗を増大させます。
このモーメントを抑制する為に、カンパはあえてこのクビレを付けました。つまり、「アームのパッドが付いてる先っぽを変形させて、力を吸収しちゃえ!」です。

えっ?「パッド面が動いてもいいのか?」って?
いいんです。だって、「相手のホイールって、回ってるじゃん!」

ブレーキ中にピボットが抉るなんてことは、確かに避けたいもんですが、まぁ、しかし、カンパって合理的な解釈が好きですね。


一方、シマノはどうでしょう?

ありゃ?技なし?クビレなし?
ひたすら剛性番長?
そりゃ、ブレーキは効くけどね。

先のモーメントでピボットが抉る話は、シャフトの熱処理、表面処理、クリアランス縮小ってトコで対応してるんでしょう。

考えられる問題は、そのシビアさ。
遊びのない高剛性なアームなので、制動力の立ち上がりはハンパないでしょう。
高い握力域でも制動力はリニアな特性のままで、そこで握力を5kg上げたら、5kg分の制動力が上がるでしょう。初期制動の5kgと同じように。


ブレーキの機能については、カンパの圧勝でしょう。
2~3歩、カンパの設計の方が上です。


でもね、どちらを使うかとなると話は別です。

街中で欲しいのは、とっさの時に、一発で減速できる事なんです。
レースで欲しいのは、そして、峠の下りで欲しいのは、フルブレーキの時のコントロール性なんです。


まとめると、こんな感じでしょうか。

・シマノ:街乗りで強い。下りは不利かも。

・カンパ:レース機材。咄嗟の時もコントロール性で乗り切れ!

あれ?他の人と書いてる事が同じですね。


ただ、一概にも言えないのが、人って、「慣れて脳が学習する」んですよね。

シマノのガッツンブレーキだって、脊髄反射レベルまで慣れてしまえば、なんてことはない。
カンパのコントロール性だって、慣れてしまえば、只の効かないブレーキ。


…やはり、どちらを選ぶかは、個人の好みでいいのかも。


今日はここまで

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (タイガー)
2012-04-02 07:35:50
おはようございます。

このシリーズ、勉強になりますね~。
ブレーキについては、やはり命に関わるパーツなんで疑問に思っていました。

カンパのスケルトンは、私も軽量化だと思っていましたが、かなり奥深い設計なんですね。

私はシマノの105までのブレーキしか使ったことがありませんが、これも慣れなのか特に大きな不満は今のところありませね。
でも、いつかはアルテやデュラのブレーキにアップグレードしたいと思っています。
これは性能云々よりも、物欲解消って事かも分かりませんが・・・。
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Unknown (fit)
2012-04-02 09:57:52
そこまで奥深く考えた事なかったなぁ~
観察する思慮するって面白いですね。
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Unknown (Mr.H)
2012-04-02 20:01:12
タイガーさん
ちょっとカンパ贔屓で書いてしまいましたかね。
でも、今日シマノのHPを見てたら、シマノの製品が大分イメージできてきましたよ。
やっぱり、デュラですよ。デュラエース。


FITさん
素人の駄文を読んで頂き、ありがとうございます。如何せん、入院生活がヒマ過ぎて…。
設計者としてのリハビリみたく、気楽に書いてますが、もっと深い世界があることは、想像させますね。
本業も方も精進しないといけませんね。

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