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良いカーボンフレーム選びの為には

2012-01-26 22:31:16 | フレーム調査
最近、仕事が樹脂の調査ばっかり。
…とくれば、これはカーボンフレームについて調べるしかありませんね。(←仕事しろよ)


以前、「これからのカーボンフレームは…」と書きましたが(こちら)、更に調査を進めると、もっと深い世界が。

以前から不思議に思っていました。カーボン繊維は、日本のメーカ(東レ、三菱レイヨン、東邦テナックスとか)が、世界シェア70%を握っています。
自転車だけではなく、航空機メーカのボーイングも東レと独占契約を結んだとのニュースは有名です。それぐらい、日本の炭素繊維メーカは強いのです。(競合他社は撤退していった)


じゃあ、何故、日本のカーボンバイクはスゴイことにならないのか? これが、ずっと疑問でした。


カーボンを成型する際には、
①「炭素繊維」を選び、
②「樹脂(マトリックス)」を購入して、
③「モノコック」「ハンドレイアップ」「ラグ接合」などの工法を選択して、
カーボンフレームが完成します。(塗装もするけど)

①②③それぞれについて、調べてみました。

①炭素繊維
「日本にいるなら、炭素繊維屋に行って「これください」で済むじゃん」って思ってましたが、ここで、さっきの「独占契約」との言葉が出てきます。
ピナレロ、BMCなどの自転車ビルダーからすれば、無論、自分のフレームに最適な「最高の炭素繊維」を独占的に使いたいので、もちろん独占契約をしたいもんです。

「炭素繊維屋は、沢山のビルダーに売りたいので、独占契約はしたくないのでは?」と思ってましたが、逆でした。
炭素繊維業界は、これまで長い間激しい競争をしてきて、利益が出難い構図になってます。つまり、価格の暴落です。
こんな状態で、利益を出すには、「効率よく生産する」しかありません。

つまり、効率よく生産するために、ある程度の量を計画的に出せる「独占契約」が、炭素繊維屋にとってもありがたいのです。
こうなると、少量の生産しか見込めない日本のビルダーに成す術はありません。常に大量に出回る「カタログモデルの普及版の炭素繊維」を購入するしかありません。



②樹脂(マトリックス)
ツールドフランスで、あのエバンスが乗って優勝したBMCのフレームには、新開発の樹脂「ナノコンポジット・エポキシシステム」が導入されています。
この樹脂は、CFRP用エポキシ樹脂で世界シェアの8割を誇るハンツマンが、スポーツ用開発したものですが、この素材を日本に入れると発表したのが、去年の11月/末。
2009年に開発して以来、やっと日本に導入して、売り込むそうです。きっと、日本では、需要がなかったので、急いで入れる理由がなかったのでしょう。



③工法
日本のメーカのカーボンフレームといえど、多くは台湾で生産されます。
かつては「工賃の安い台湾の方がコストを下げれる」と考えてましたが、そうではなく、単に日本では、「カーボンフレームを作れる所が多くない」ようです。



ここまで来ると分かると思いますが、炭素繊維だけは世界一でも、CFRPとなると「日本のCFRPの技術は遅れている」と言わざるを得ません。

何故CFRP技術が進化しないのか?
これは私の推定ですが、日本では、射出成型、プレス、フォーミングなど、CFRPを使わないAlternativeな技術が発展してしまったからではないでしょうか。


「日本の技術は世界一。技術大国日本」なんて巷では騒ぎ立てられますが、世界一の技術があるが故に、見過ごしている技術も多いもんです。
日本のビルダーのカーボンバイクは、今は買い時ではないかもしれません。じゃあ、海外ビルダーのは何でもOKかって言うと、…玉石混合なんでしょう。

驚いたのは、欧州のサイトでは、特にCFRPの情報が入りやすいこと。
良いロードバイク選びをする為には、日本の炭素繊維、欧州の樹脂業界、成型技術の動向に目を向けてから、考えた方が良さそうです。


…とか言って、結局はカッコイイフレームを選んじゃうんだけどね。


今日はここまで