MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

Mozart の♭の響き ② 四重奏から交響曲へ

2009-05-09 00:23:00 | 私の室内楽仲間たち

05/09 私の音楽仲間 (53) ~ Mozart の♭の響き

          ② 四重奏から交響曲へ




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                  ## → ♭♭♭
                3つの♭、3つの音符
                    深まる謎




 前回は、ある弦楽四重奏曲の "メヌエット" を弾いて、私が
愕然としたことをお話ししました。



 それは Mozart の変ロ長調の曲ですが、第Ⅱ楽章に突如
現れた、ト短調の "メヌエット"。 それが、交響曲第25番
ト短調第Ⅲ楽章のメヌエットと、雰囲気があまりにも似ている
のです。



 両者の間には、何か関係があるのでしょうか。 以下にご覧
いただくのは、それぞれの冒頭部分です。




     弦楽四重奏曲第6番 変ロ長調 K.159 第Ⅱ楽章





        交響曲第25番ト短調 K.183 第Ⅲ楽章






 1772年10月、Mozart はザルツブルクを離れ、三度目のイタリア
旅行に旅立ちます。 16歳の年でした。

 翌年の3月に帰郷するまでの間に、6曲の弦楽四重奏曲
書かれています。 第2番から第7番までがこれに当たり、
ミラノ四重奏曲集』と呼ばれています (K.155~160)。



 これらはすべて長調で書かれていますが、その調性を見てみる
と、順番に ""、""、""、""、"変ロ"、"変ホ" となっています。

 別の書き方をしてみましょう。 の数で表わすと、順番に
##」⇒「」⇒「」⇒「」⇒「♭♭」⇒「♭♭♭」 となります。


 この "♭への流れ" が意図的なものかどうかは別として、
主要な各長調が万遍なく試みられています。

 問題の四重奏曲は、このうち変ロ長調のものです。 三つの
楽章は、調号がすべて "♭♭(二つ)" で書かれ、うち、第Ⅱ楽章が
ト短調の "メヌエット" です。




 イタリア滞在中、翌1773年1月に17歳を迎えた Mozart は、3月
に故郷のザルツブルクに戻りました。 すると今度は、2か月の
間に交響曲が四つ生まれます。

 そして7~9月の第3回ウィーン旅行から帰ると、さらに4曲の
交響曲
が1年の間に書かれました。

 これらは "ザルツブルク交響曲" と呼ばれており、第22番から
30番までに当たります。
 (なお『第28番ハ長調』は、今日では 1777年の作とされています。)




 ただしこれらの番号は、成立の順番とは異なることが、今日
では判っています。



 完成した順に並べてみると、

『第26番変ホ長調』、『第27番ト長調』、『第22番ハ長調』、

『第23番ニ長調』、『第24番変ロ長調』、『第25番ト短調』、

『第29番イ長調』、『第30番ニ長調』

となります。



 これだけを眺めてみると、交響曲の場合は、調性の偏りは特に
ありません。 ♭調と#調が、バランスよく並んでいます。 短調
のメヌエットは、この中にはもちろん一つしかありません。



 問題は、その楽章の数にあります。




 (続く)