03/05 私の音楽仲間 (569) ~ 私の室内楽仲間たち (542)
繰り返しは嫌
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
関連記事 『ラズモーフスキィ』第3番
やさしいのに合わない…
減七で幻惑
序奏は倉庫
細く長く
曲との出逢い、再会
支え合い?妨害?
忠実な片腕
事前のインプット
単純な音符の二面性
優美な音階
各馬一斉にスタート…しないね
沈黙を呼ぶ第Ⅳレース
第五コーナー?
Beethoven の騙し絵
刻苦勉励
作曲家 対 演奏家
演奏家 対 ギャラリー
繰り返しは嫌
[演奏例の音源]は、Beethoven の弦楽四重奏曲 『ラズ
モーフスキィ』第3番、その第Ⅱ楽章の一部です。
すでにお聞きいただいたもので、Violin は私、T.さん、Viola S.さん、
チェロは T.さんです。 音源には談笑の声が入っています。
音源は、譜例の4小節目、【137】からスタートします。
↓
…というのは嘘でした。 おかしいですよね、いくらなんでも…。
「当たり前じゃないか! そんなのが見破れないとでも思って
いるのか!? 失礼だぞ!」
申しわけありません。 正しい譜例は、次の[譜例 2]でした。
ただし、一番〔 〕は編集でカットしてあります。
同じ[演奏例の音源]です。
そこで質問です。 貴方が “おかしい” と気付いたのは、
なぜですか? 下にあるのは、最初の[譜例 1]です。
「…まず、Vn.Ⅰの高い音が聞えないじゃないか。
それぐらいは、すぐ解るさ。」
ほかには?
「⑥ + ⑥ で 12小節あるはずなのに、音楽は
6小節分しか聞こえないぞ。 それに…。」
…いいえ、もう充分です…。
新しい[演奏例の音源]は、上の譜例の12小節前からスタート
します。 譜例の部分は、【0:33】の辺りから聞こえ始めます。
Violin は私、U.さん、Viola T.さん、チェロは Su.さんです。
もうお解りですね。 下の[譜例 2]は、楽章の冒頭でした。
最初の6小節は、“繰り返す” ように指示されているので、
内容は同じ。 続く14小節間も同様です。
ところが、下の[譜例 1]の137小節以下は、音楽は
基本的に同じでも、かなり変化しています。
Vn.Ⅰが “高音” で歌っているのも、その一例ですね。
でも重要なのは、2つの内声です。
一段目で歌い出すのは、Vn.Ⅱ。
“p” とあっても、Vn.Ⅰに負けない “パッション”
が必要ではないか。 私はそう感じます。
次いで Viola が、【Re Mi Fa Mi Re Do …】。
この部分では初めて登場する、新しいラインです。
これは、Vn.Ⅱの【La Si Do Si La Sol#】を、
5度下で模倣する動きでもあります。
以下、後半の6小節でも。 そして、続く14小節 + 14小節でも。
単なる “繰り返し” を超えた、作曲者の創意工夫が見られます。
以下は、やはり Beethoven の曲の中から、Menuetto、
Scherzo 楽章での “繰り返し” を巡る記事です。
弦楽五重奏曲 ハ長調、交響曲第1番 ハ長調、それに弦楽四重奏
曲の幾つかに触れています。
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今回の『ラズモーフスキィ』 第3番の第Ⅱ楽章
は、メヌエットでもスケルツォでもありません。
“Andante con moto quasi Allegretto”。 自由
なソナタ形式と見ることも出来ます。 その場合、
[譜例 1]は再現部の開始に当ります。
しかし、冒頭では “繰り返し記号” を用いていながら、再び
現われる際には、数々の趣向が凝らされているのです。
さて、今回は陽の当らないパートだった、チェロの Su.さん。
全曲を二度ほど通したことになりますが、右手の指が痛くて
堪らなかったそうです。
この楽章は大半がピツィカートだからですね。 ご苦労さま…。
204小節ある楽章のうち、作業の大半がこれ。 多いときには、
連続すること110回!
数えたらピツィカートの数、全部で440だって。
“繰り返し” も入れてね。
『ラズモーフスキィ』 第3番
[音源サイト ①] [音源サイト ②]