MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

繰り返しは嫌

2014-03-05 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

03/05 私の音楽仲間 (569) ~ 私の室内楽仲間たち (542)



               繰り返しは嫌




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




          関連記事 『ラズモーフスキィ』第

               やさしいのに合わない…
                   減七で幻惑
                   序奏は倉庫
                    細く長く
                曲との出逢い、再会
                 支え合い?妨害?
                   忠実な片腕
                 事前のインプット
                単純な音符の二面性
                   優美な音階
             各馬一斉にスタート…しないね
               沈黙を呼ぶ第Ⅳレース
                  第五コーナー?
                Beethoven の騙し絵
                    刻苦勉励
                 作曲家 対 演奏家
                演奏家 対 ギャラリー
                  繰り返しは嫌




 演奏例の音源]は、Beethoven の弦楽四重奏曲 『ラズ
モーフスキィ』第3番
、その第Ⅱ楽章の一部です。

 すでにお聞きいただいたもので、Violin は私、T.さん、Viola S.さん
チェロは T.さんです。 音源には談笑の声が入っています。




 音源は、譜例の4小節目、137からスタートします。
 
             ↓





 …というのは嘘でした。 おかしいですよね、いくらなんでも…。

 「当たり前じゃないか! そんなのが見破れないとでも思って
いるのか!? 失礼だぞ!」



 申しわけありません。 正しい譜例は、次の[譜例 2]でした。
ただし、一番〔 〕は編集でカットしてあります。

 同じ演奏例の音源]です。








 そこで質問です。 貴方が “おかしい” と気付いたのは、
なぜですか? 下にあるのは、最初の[譜例 1]です。

 「…まず、Vn.Ⅰの高い音が聞えないじゃないか。
それぐらいは、すぐ解るさ。」



 ほかには?





 「 + で 12小節あるはずなのに、音楽は
6小節分しか聞こえないぞ。 それに…。」

 …いいえ、もう充分です…。



 新しい演奏例の音源]は、上の譜例の12小節前からスタート
します。 譜例の部分は、【0:33】の辺りから聞こえ始めます。

 Violin は私、U.さん、Viola T.さん、チェロは Su.さんです。




 もうお解りですね。 下の[譜例 2]は、楽章の冒頭でした。

 最初の小節は、“繰り返す” ように指示されているので、
内容は同じ。 続く14小節間も同様です。








 ところが、下の[譜例 1]の137小節以下は、音楽は
基本的に同じでも、かなり変化しています。

 Vn.Ⅰが “高音” で歌っているのも、その一例ですね。
でも重要なのは、2つの内声です。







 一段目で歌い出すのは、Vn.Ⅱ

 “p” とあっても、Vn.Ⅰに負けない “パッション”
が必要ではないか。 私はそう感じます。



 次いで Viola が、【Re Mi Fa Mi Re Do …】。
この部分では初めて登場する、新しいラインです。

 これは、Vn.Ⅱの【La Si Do Si La Sol#】を、
5度下で模倣する動きでもあります。




 以下、後半の6小節でも。 そして、続く14小節 + 14小節でも。

 単なる “繰り返し” を超えた、作曲者の創意工夫が見られます。




 以下は、やはり Beethoven の曲の中から、Menuetto、
Scherzo 楽章での “繰り返し” を巡る記事です。

 弦楽五重奏曲 ハ長調、交響曲第1番 ハ長調、それに弦楽四重奏
曲の幾つかに触れています。




   関連記事 初期の不徹底? 自由に、繊細に




 今回の『ラズモーフスキィ』 第3番の第Ⅱ楽章
は、メヌエットでもスケルツォでもありません。

 “Andante con moto quasi Allegretto”。 自由
なソナタ形式と見ることも出来ます。 その場合、
[譜例 1]は再現部の開始に当ります。



 しかし、冒頭では “繰り返し記号” を用いていながら、再び
現われる際には、数々の趣向が凝らされているのです。




 さて、今回は陽の当らないパートだった、チェロの Su.さん。

 全曲を二度ほど通したことになりますが、右手の指が痛くて
堪らなかったそうです。



 この楽章は大半がピツィカートだからですね。 ご苦労さま…。

 204小節ある楽章のうち、作業の大半がこれ。 多いときには、
連続すること110回!



 数えたらピツィカートの数、全部で440だって。

 “繰り返し” も入れてね。




        『ラズモーフスキィ』 第3番

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