01/20 私の音楽仲間 (354) ~ 私の室内楽仲間たち (327)
叫ぶ動機
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
1847年5月、作曲家メンデルスゾーン (1809年2月3日
~1847年11月4日) は、最愛の姉を亡くします。
そして彼自身も、それから半年もしないうちに旅立って
しまったのは、よく知られた話です。
共に急死で、死因は脳卒中、あるいはクモ膜下出血とされて
います。 姉ファニー (1805年11月14日~1847年5月14日) は、
弟の作品のリハーサル中にベルリンで。 またフェリクスは、
ライプツィヒで妻と散歩中のことでした。
二人は、共にハンブルクに生まれました。 しかし1812年の
ナポレオンの占領の際に、一家はベルリンへ移住しています。
自身も優れたピアニスト、作曲家の資質を備えたファニーは、
1819年にツェルターに入門しています。 翌年には声楽アカ
デミーで研鑽を積み始めますが、共に弟と一緒でした。
ファニーは1829年に結婚しますが、その後も二人は、強い
信頼関係で結ばれていました。
姉の死を悼んで作られたと言われる曲に、弦楽四重奏曲
第6番ヘ短調があります。 これが、自身の最後の室内楽
作品となってしまいました。
[譜例①]は、その第Ⅰ楽章の冒頭。 ViolinⅠのパート譜
です。
チェロ、Viola の鋭い fp で曲が始まると、絶え間なく続くの
は細かい動き。 胸騒ぎのような律動が、聴く者を捕えます。
4パートすべてが、16分音符で音を刻んでいます。
これが9小節目で ff に達すると、今度は新しい、"付点
音符に始まるリズム動機" が現われます。 どのパートも、
すぐに同じ叫び声を上げて、これに続きます。
しばらくして、突然 p で第一主題が現われます (23小節目)。
先ほどのリズムに先導されています。
この "付点音符 + 3つの八分音符から成るリズムは、
以下、重要な役目を果たします。
[譜例②]は展開部から、ある箇所をスコアで見たものです。
このリズムが、やはり至るパートから聞かれます。 これほど
徹底的なメンデルスゾーンは、滅多に見られないのではない
でしょうか。
よく見ると、3つの八分音符と一緒に、音程の動かない
八分音符が書かれています (116、124小節)。
これは、単なるリズムの補強かもしれません。 あるい
は "運命の動機" として、それとなく作曲者が配置した
ものなのでしょうか。
このところ、よく登場する形ですね。
関連記事 『SCHERZO で実験』 『運命の動機の動機?』
音源は、Violin の O.S.さん、Viola の B.さん、チェロの
Y.S.さんとご一緒したときのものです。
3人とも何度か経験しておられる、この曲。 片や、曲の
存在は知っていても、相変わらず "今回が初めて" だった
私です。 激しく、また優しいメンデルスゾーンに圧倒されっ
ぱなしでした。
[第Ⅰ楽章 展開部からの演奏例]
[譜例②]の2小節目、"C 110" と書かれているところから
始まり、譜例が切れた辺りで終ります。
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