01/27 私の音楽仲間 (357) ~ 私の室内楽仲間たち (330)
?調で登場する主題
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
前回に引き続き、ハイドンの『太陽』四重奏曲集 (作品20)
から、今回は、第6曲 イ長調です。
この曲にも、終楽章にフーガがありますが、取り上げるのは、
その第Ⅰ楽章。 型どおりのソナタ形式で作られています。
古典的なソナタ形式の楽章では、主題の数は2つですね。
またその調性にも、決まりがあります。
第1番 変ホ長調の、第Ⅰ楽章を見てみましょう。
2つの主題の調性は、
提示部 : No.1 変ホ長調、No.2 変ロ長調。
再現部 : No.1 変ホ長調、No.2 変ホ長調。
第2番 ハ長調では、
提示部 : No.1 ハ長調、No.2 ト長調。
再現部 : No.1 ハ長調、No.2 ハ長調。
このように長調の楽章では、主調と、属調 (主調がハ長調なら
ト長調) の2つで主題が現われ、また再現するのが普通です。
短調の場合は、少し違います。
なお、この曲集では、長調、短調が3曲ずつあります。
短調が "多め" ですね。
今回、Violin の T.さん、Viola の Sa.さん、チェロの
Y.S.さんとご一緒した、第6番はイ長調。
やはり第Ⅰ楽章はソナタ形式ですから、上の図式は
提示部 : No.1 イ長調、No.2 ホ長調。
再現部 : No.1 イ長調、No.2 イ長調。
になるのが普通の形です。
ここでも、「一応はそうなっている」…のですが、下線
で示したイ長調の箇所は、まずイ短調で始まります。
下の[譜例]の "130" の箇所です。
その前の部分は、第一主題に続く流れで、イ長調
です ("125"~)。 ○内は調性で、"A" はイ長調の
こと。 以下、同様です。
しかも、調性は定まらず、一旦ト長調 (G) へ転調した
かと思うと ("134")、たった2小節で、またイ短調 (a)
ヘ戻ります。
そのイ短調は4小節間続き、最後に、やっとイ長調が
現われて終止します。
以上は、第二主題の再現部での様子でした。
この主題、提示部ではホ長調であるべきところ、まず鳴るの
はホ短調。 紆余曲折を経てから、ホ長調に落着くわけです。
登場早々にして転調が続く、この第二主題。 "130" に
始まる4小節間では、意外な美しさの連続です。
このように、予想外の調性で主題が始まるのは、当時
としては珍しいことでしょう。 しかも、当初は調性が安定
しません。
この『太陽』四重奏曲集に賭けた、ハイドンの実験的な
意気込みが感じられます。
なお、上に挙げた第1番、第2番では、 調性に関する
限り、第二主題は "ノーマル" です。
しかしハイドンは、ここでも別の観点から趣向を凝らして
います。 これはまた機会を改めて…。
[演奏例の音源]は、この箇所のものですが、[譜例]では
2小節目 ("125") から始まります。
[譜例]に続く5小節目、イ長調の終止で終ります。
ちなみに、最初の3小節 (125~127) は、通常なら2小節
で済むはずの音形ですね。 フレーズ全体も "4小節" では
なく、5小節という "歪んだ形" になっており、その後で第二
主題が現われることになります。
[音源サイト]