おやままさおの部屋

阿蘇の大自然の中でゆっくりのんびりセカンドライフ

「蜩の記」再読

2014年09月22日 07時25分12秒 | 読書


台風よ日本海辺りで消滅してくれよもう雨は懲りた

葉室麟の『蜩の記』を読み終えた。

二度目だったが流石に直木賞もらった作品だけあって、人の感情の機微と某藩のお家事情=権力抗争と人間関係の詳細を丁寧に描き出している

確かは葉室は新聞記者出身だったと思うが表現が緻密で、構成がしっかりしている。

選考会では批判意見も出たらしいが、理不尽な日限の定められた切腹処分と藩主家の家譜作成の命。

処分はご側室が抗争で殺されようとした際に、これを助けるために一晩側室と共にしたという「不義密通」の「罪」を問われ、10年という期限付きの切腹を申し渡される主人公戸田秋谷。藩の命で家譜作成の手助けをするために実は秋谷の監視のために派遣された檀野庄三郎。これ男が秋谷の人柄に次第に惹かれていきついには秋谷を何とか助命できないかと努力を始める。

家譜作成のために資料を集め事実関係を丹念に調べ、書いていく作業が続く。出来上がる頃には自裁しなければならない厳しい現実。しかし秋谷は生死をすでに超越し感情の揺れを見せない。

ここで読者の疑問。秋谷の不義密通はまったく事実無根で側室は生きているのだから(その後出家)調べれば秋谷の無実は明らかになるし、切腹の根拠もなくなる。藩首脳部として実力者で藩家老とそりの合わない秋谷殺すことは総ての前提。だとしたら家譜編纂を命じて潔白の論証が明白になる恐れがある仕事をなぜ命じるのか?

それはそれとして最後まで面白く読めたのは事実しかも2度までもー最近は歴史小説が断然面白い。

今は乙川優三郎の作品を読んでいるのだが色合いが違ってこれも面白い。