マリヤンカ mariyanka

日常のつれづれ、身の回りの自然や風景写真。音楽や映画や読書日記。手づくり作品の展示など。

「天国でまた会おう」

2019-06-28 | book
おもしろくて、どんどん読みたいけれど、
早く読み終わるのがもったいないので、
本を閉じてしばらく反芻する・・・
時々そんな本に出合います。
ピエール・ルメートルのこの本もそうでした。
ルメートルのミステリーは緻密で意外な展開が面白いのですが、
残酷描写がきつくて苦手でしたが、
「天国でまた会おう」はミステリーではなく、
ゴンクール賞(フランスの文学賞)を受賞した文芸作品。
ちょっと、ユーゴーやディケンズの小説を読んでいるような感じがしました。
第1次大戦の戦場での二人の兵士の出会いから始まります。
真面目で不器用な青年と、
生き埋めになったその青年を助けようとして、
顔の半分を爆弾で失った天才肌の画家、
その二人の主人公を中心に物語はどんどん転がっていきます。

兵隊の命など虫けらほどにも思わない権力者たち、
戦争を金儲けの手段にしか見ない資本家、
付和雷同する庶民が赤裸々に描かれます。
登場人物が、悪者も、役人も商売人も
それぞれ生き生きとして個性的で読むほどに引き込まれます。

二人は国を相手に大掛かりな詐欺(復讐)を企み、
少女の力を借り、ついに実行します。
はらはら、どきどき・・・

戦争とは、権力者たちが、金儲けのために、
貧乏人に殺し合いをさせることだ、
という作者の考えが貫かれています。
ハッピーエンドとは言えませんが、ラストでほっとしました。

題の「天国でまた会おう」は、第一次大戦で、
敵前逃亡の汚名を着せられ、
裏切り者として処刑(銃殺)された青年が
妻に残した最後の言葉だったそうです。
7年後に間違いだったことが分かり、
名誉回復したそうです。

『天国でまた会おう』
ピエール・ルメートル(フランス、1951~)
平岡敦 訳  早川書房 2015

同名で映画化されていますが未見です。
小説とラストが違うそうです。
見てみたいような、見なくてもいいような。
でもやっぱり見たいかな。

図書館で借りた重い単行本で読みましたが(上の写真)
調べてみると、文庫化(上・下)されているようです。
しかし、文庫の表紙絵が残念すぎる・・・






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