以前ここで、高野秀行、著の
『幻のアフリカ納豆を追え!』を紹介したことがありますが
同じ著者の最新刊は「酒を主食とする人々」です。
酒が主食!ほんとう?と思いますが・・・
著者はたまたま手にした一冊の生態人類学者の本を根拠に、テレビクルーと一緒に、エチオピアに出掛けることになります。
出発前から、そして到着後もハプ二ングの連続。
著者は、若い頃から世界各地の話し言葉に強い関心を持っていて、
どんな辺境の地の人たちとも、言葉を交わすことが出来れば笑顔になれることを身をもって体験し、
その経験が、ここでも発揮されます。
知らない言葉に出会う度に、繊細で鋭い耳と、ひたすらの努力、
どんなに違って見える姿や暮らしでも、
互いの心が通じるところを探していく姿は素晴らしい。
そして、ついに酒を主食とする人々と出合います。
酒(パルショータ)はソルガム(コーリャンの仲間)を発酵させてつくられており、
発酵することによって、バランスが取れた必須栄養素が含まれた物質に変化するそうです。
子どもも妊婦も、それぞれの年齢や体調に合わせて水で薄めて飲んで、機嫌よく酔っぱらっているのだそうです。
肉などの固形物も少しは食べるそうですが、あくまで一日3食の主食はパルショータ。
外で何かほかのものを食べたり、他の酒、市販のビールのようなものを飲んだりしても、
最後はパルショータ。
パルショータを詰めたペットボトルやヒョウタンを持って出かけ、
お腹がすけば、少し飲み、喉が渇いたら水で薄めて飲む、
著者は、見た目は自分より体格がいい彼らだけど、本当に健康体なのだろうか、
もしかして、なにか、特有の病気とかないのだろうかと、ちらっと疑って、地域の大きな病院を訪ねます。
結論を言えば、問題ない!子どもの栄養失調が極めて少ない
そして医師は、『最近は低地で高血圧と糖尿病が増えていますね、
都市化によって、肉や油を取り、車で移動する人が増えていますから・・・』と答えるのです。
著者はパルショータが主食の暮らしを自ら体験します。身体も心も爽快だったそうです。
日本に帰ってからしばらくの間、固形物を食べると胃がもたれて、体調が悪かったそうです。
(肝心のテレビ番組では「酒を主食とする人々」は放映されなかったそうです!)
↑ 目次の背景写真は、畑での鳥追いの様子。
『酒を主食とする人々』エチオピアの科学的秘境を旅する
高野秀行 著 2025年1月発行 本の雑誌社