拙車の置いてある駐車場の近辺は細い道だらけである。特に唯一の進入経路の途中は100メートルほどすれ違いができない場所があり、そこを自動車、歩行者、自転車、犬連れの人などが行きかう。
元日にスケートに行くべく、昼前に駐車場を出発した拙車はふだん利用している脱出経路ではなく、進入経路の方に向かった。するとすれ違いできない箇所の向こうからこちらに入ろうか躊躇している車を視認した。拙車はその車の横に、割と広くて舗装された民家の玄関先があるのに着目し、そこに入り込むべく前進し、首尾良くそのスペースに入った。ところが、先方が前進するにはなおもう少し幅が不足していたらしく、行きにくそうにしている。そこで、拙車はお尻を左に引くべく、ハンドルを右に少し切りながら10-20センチほど前進した。その時、ズズッという嫌な音がした。先方は無事すり抜けたが、広い場所に出て拙車のバンパーの下部をみると、案の定、20センチ前後の白い傷が何本もついていた。すれ違った場所で何に引っかけたのだろうと戻ってみると、地面に置いてあった大きな岩にこすった痕があった。あそこは無理をせず、バックして先方に通過を促すべきだった、と後悔しても後の祭り。傷は塗装して直してもらうことにしよう。
翌1月2日拙車は邪気を払いにいくことにした。以前調べておいた経路により、環八から人見街道を通り、東八道路を経て神代植物公園の西を通って甲州街道に入った。ここまではいつになく大変すいていて、天気も快晴で気持ちがいい。
調布ICから中央高速に乗る。予想していたよりもやや混んではいたが、高速道路は先行車・後続車との車間距離と、時々現れる標識に注意しながら走ればいいので、一般の幹線道路よりはかえって走りやすい気もしてきた。
中央高速に乗った時から眼前に富士山が見える。じっくり見るわけにはいかないが、視野の端に入るだけでもなんだかすがすがしい気分だ。大月ICから河口湖方向に進み、出発してから途中の給油を入れても1時間40分ぐらいで河口湖畔に着いた。
河口湖はまるでドライブのためにあるような場所だ。湖畔には広々とした無料駐車場がある。湖の周りに道路が整備され、河口湖を跨ぐ大きな橋まで架かっているので、景観は台無しだがドライバーは喜ぶ。
あいにく無料駐車場のある場所からは山に遮られて富士山は見えない。すると大きな音で「カチカチ山ロープウェイ」なるものに誘う声が聞こえた。無料駐車場から道路を隔てた向かいからロープウェーで山の頂上に行くと、眼前に雪をいただいた新春の富士山が迫ってきた。
静まりかえった大きな空間に、巨大な山峰がそびえ立つ。自然の暴力的とも言える大きな力に押しつぶされそうに感じる。暴風吹きすさぶ襟裳岬や、黄河の滝を見たときにも、いま自分は安全柵も設けられた、いわば飼い慣らされた空間から見ているが、最初にこの光景を見た人間はどれほどの恐怖と畏怖を感じたのだろうと思った。世俗丸出しの「カチカチ山」の頂上からみても、やはり富士山は畏怖を感じさせる。
歩いて下りても大した距離ではないことに気づき、帰りは左に富士山、右に河口湖の絶景を眺めながら尾根道を下りた。途中には太宰治の文学碑もある。
車は確実に人間の足腰を退化させるようで、ロープウェーは満員なのに、この絶景のハイキングコースを登る人はおろか、下りる人さえ私以外に1組の親子があったきりだった。そういえば、ロープウェーの乗り場にある10台分たらずの駐車場の順番待ちで4-5台の車がアイドリングしながら待っていた。道路を隔てた向かいにある湖畔の無料駐車場にはまだまだ空きがあるのに。そのことに気づかずにこっちに来てしまったのだと思いたいが、100メートルほどを歩くのが嫌でこちらに並んでいるのだろうか。アメリカ人は自宅の玄関から5メートルのところにあるポストに手紙を投函するのにわざわざ車で行くという話を聞いたことがあるが、それに近いような不気味さを感じる。
元日にスケートに行くべく、昼前に駐車場を出発した拙車はふだん利用している脱出経路ではなく、進入経路の方に向かった。するとすれ違いできない箇所の向こうからこちらに入ろうか躊躇している車を視認した。拙車はその車の横に、割と広くて舗装された民家の玄関先があるのに着目し、そこに入り込むべく前進し、首尾良くそのスペースに入った。ところが、先方が前進するにはなおもう少し幅が不足していたらしく、行きにくそうにしている。そこで、拙車はお尻を左に引くべく、ハンドルを右に少し切りながら10-20センチほど前進した。その時、ズズッという嫌な音がした。先方は無事すり抜けたが、広い場所に出て拙車のバンパーの下部をみると、案の定、20センチ前後の白い傷が何本もついていた。すれ違った場所で何に引っかけたのだろうと戻ってみると、地面に置いてあった大きな岩にこすった痕があった。あそこは無理をせず、バックして先方に通過を促すべきだった、と後悔しても後の祭り。傷は塗装して直してもらうことにしよう。
翌1月2日拙車は邪気を払いにいくことにした。以前調べておいた経路により、環八から人見街道を通り、東八道路を経て神代植物公園の西を通って甲州街道に入った。ここまではいつになく大変すいていて、天気も快晴で気持ちがいい。
調布ICから中央高速に乗る。予想していたよりもやや混んではいたが、高速道路は先行車・後続車との車間距離と、時々現れる標識に注意しながら走ればいいので、一般の幹線道路よりはかえって走りやすい気もしてきた。
中央高速に乗った時から眼前に富士山が見える。じっくり見るわけにはいかないが、視野の端に入るだけでもなんだかすがすがしい気分だ。大月ICから河口湖方向に進み、出発してから途中の給油を入れても1時間40分ぐらいで河口湖畔に着いた。
河口湖はまるでドライブのためにあるような場所だ。湖畔には広々とした無料駐車場がある。湖の周りに道路が整備され、河口湖を跨ぐ大きな橋まで架かっているので、景観は台無しだがドライバーは喜ぶ。
あいにく無料駐車場のある場所からは山に遮られて富士山は見えない。すると大きな音で「カチカチ山ロープウェイ」なるものに誘う声が聞こえた。無料駐車場から道路を隔てた向かいからロープウェーで山の頂上に行くと、眼前に雪をいただいた新春の富士山が迫ってきた。
静まりかえった大きな空間に、巨大な山峰がそびえ立つ。自然の暴力的とも言える大きな力に押しつぶされそうに感じる。暴風吹きすさぶ襟裳岬や、黄河の滝を見たときにも、いま自分は安全柵も設けられた、いわば飼い慣らされた空間から見ているが、最初にこの光景を見た人間はどれほどの恐怖と畏怖を感じたのだろうと思った。世俗丸出しの「カチカチ山」の頂上からみても、やはり富士山は畏怖を感じさせる。
歩いて下りても大した距離ではないことに気づき、帰りは左に富士山、右に河口湖の絶景を眺めながら尾根道を下りた。途中には太宰治の文学碑もある。
車は確実に人間の足腰を退化させるようで、ロープウェーは満員なのに、この絶景のハイキングコースを登る人はおろか、下りる人さえ私以外に1組の親子があったきりだった。そういえば、ロープウェーの乗り場にある10台分たらずの駐車場の順番待ちで4-5台の車がアイドリングしながら待っていた。道路を隔てた向かいにある湖畔の無料駐車場にはまだまだ空きがあるのに。そのことに気づかずにこっちに来てしまったのだと思いたいが、100メートルほどを歩くのが嫌でこちらに並んでいるのだろうか。アメリカ人は自宅の玄関から5メートルのところにあるポストに手紙を投函するのにわざわざ車で行くという話を聞いたことがあるが、それに近いような不気味さを感じる。