mardinho na Web

ブラジル音楽、その他私的な音楽体験を中心に

悲しきGPS付携帯電話

2008-09-23 18:15:31 | 日常
9月18日に福岡市の公園で小学校1年の男の子が殺された事件は母親が犯行を自供してとりあえず一件落着となった。事件の状況を聞くにつけ、第三者の犯行である可能性は低いだろうと心中思っていた(但し誰に対しても口に出すことはできなかったが)。
この事件でのカギは被害者の男の子が持っていたGPS付携帯電話である。小学校1年生が携帯電話を持っているのは、今どきの子供でもやはり珍しい。しかも親が子供の居場所を把握できる(といってもその精度はカーナビほど高くないが)GPS付きだというのは、親の溺愛ぶりをうかがわせるのに十分である。
そこまでしたのに殺人の被害に遭ってしまう、しかも犯人は携帯電話を与えた当の親だとは。このどうにも矛盾した心情をどう理解したら良いのだろうか。
いやGPS付携帯電話を与えるという行為そのものが、子供への愛よりも、自己中心性が極端に強いことの現れだと思えてならない。GPS付携帯電話を与えるということは常時子供に親の声を届けられ、居場所も把握できるようにするということであり、過干渉だ、というのが真っ当な感覚であろう。
子供を独立した人格でなく、自己の延長のようなものだと思い、それゆえにGPS付携帯電話を与えないと不安になり、思い通りにならないので殺してしまったのではないだろうか。
母親は、自分も死ぬつもりだったと言っているようだが、犯行直後からの周到な演技を思うにつけ、この発言も自己正当化の言い訳のように聞こえてならない。

谷脇康彦『世界一不思議な日本のケータイ』インプレスR&D、2008年

2008-09-18 12:47:57 | 
タイトルから、日本のケータイ電話業界のヘンさを指摘したジャーナリスティックな本を想像していたが、著者は総務省で通信産業を管轄する「事業政策課長」の要職にある方であり、内容は日本の携帯電話業界の構造をどのように改革すべきか、という提言である。
通信業界はネットワーク外部性があることで自然独占が成り立ちやすいことから、政府が介入する根拠が生まれる。本書も、他の業界だったら政府がここまで介入していいのかと言われそうなことまで突っ込んだ議論が展開されている。基本的には、「垂直統合型」の日本の携帯電話業界を「水平分業型」に変革すべきだとの主張であり、そのための具体的な政府の施策にまで言及している。私なら、垂直統合型の替わりに「垂直囲い込み型」、水平分業型の替わりに「垂直分業(ないし分裂)型」と呼びたいものだが、いずれにせよ著者の言うとおり、日本の不思議な構造は何とか変革したいものだ。
本書は主に供給サイドの不思議な構造を取り上げているが、利用サイドの不思議な構造も興味深い。本書によると、日本の携帯電話ユーザーの1ヶ月の通話時間は平均97分、それに対しアメリカは672分だそうだ。(中国はもっと長いかも知れない)
日本のテレビで「ケータイ中毒」に陥る人のことを取り上げていたが、それは「ケータイメール中毒」に違いない。
日本のケータイにはいろんな機能がてんこ盛りなのに、もっぱらメールに使われるという「宝の持ち腐れ」状態(=メールだけの用途であれば、基地局や端末をいまの何分の1にも簡略化できるはず)になったのはなぜなのか。

開き直れ!三笠フーズ

2008-09-16 19:31:35 | anti facism
世間は三笠フーズや他の何社かが非食用として払い下げられたコメを不正に転売していた事件で大騒ぎである。
だけど、三笠フーズさん、ここで一発開き直ってみたら?
すなわち、「事故米と言ったって、食べても全然問題ないんです。せっかくのお米がもったいないと思って思わず転売してしまいました!」
もちろん、食用に使わないという前提で安く買ったコメを高く売った行為はずるい。だけど、毒をばらまいたわけではないことを主張してほしい。太田農水大臣や大阪府もさんざん「食べても問題ないレベル」だとお墨付きを与えているではないか。
ニュースでは基準値の6倍ものメタミドホスが検出されたと報じている。だけど、その後で「毎日食べ続けても問題のないレベル」とも報じている。
残留農薬の基準値が0.01PPMだということも新聞では報じられているのだけど、テレビおよび視聴者のリテラシーがまったくないために「6倍」の方にみんな唖然とする。だが、0.01PPMというのは「1億分の1」のことである。パーセントでいえば、0.000001%である。もし「残留農薬基準値の0.000001%の6倍にあたる0.000006%のメタミドホスが検出されました」と報じられたら、みんなはどう思うのだろう? そもそも、基準が厳しすぎるのではないだろうか、と思うのではないか?
0.01PPMというのは、数㎞先で農薬をまいたら検出されてしまうぐらいのレベルらしい。0.06PPMというのは「農薬漬け」を意味するのではなく、むしろすごく減農薬に努力した結果を示しているのではないか?

ジョルジ・ベンジョールatブラジル・フェスティバル2008

2008-09-07 18:38:42 | Jorge Ben
長年の願望(27年ぐらい?)かなってジョルジ・ベン改めジョルジ・ベンジョールのライブを見ることができた。
昨年から始まった代々木公園でのブラジル・フェスティバルの最後を飾るスターとして登場したのだ。これ以外に日本でどういうスケジュールになっているのか寡聞にして知らない。明日から出張だからこれが最初で最後のチャンスかもしれない。
それが無料ライブだとは!!
ジョルジ・ベンジョールが登場する1時間前ぐらいに到着すると、日系ブラジル人男女シンガーによるロックで会場は大盛り上がり。ブラジル国旗の緑と黄色が振られる。ついでSerdinhoという人が出てきて何やらトークショー。我々ブラジル人は日本で長時間労働して頑張っている、というようなことを話していたようだ。それから日本各地に住むブラジル人や日本人をステージにあげてインタビュー。ジョルジ・ベンジョールの好きな曲は何ですか、とか聞いていた。
そしてジョルジ・ベンジョールが登場するとさらに大盛り上がり。ブラジルの若い人にものすごい人気なんだな。
最初の曲は1974年のアルバムTabua de Esmeraldaからo Homen da Gravata Florida。
ついでSalve SimpatiaとBanda de Ze Pretinhoをまぜこぜにしたもの。この辺はLive in Rioと同じだ。
後はどのような順番だったか忘れたが、Que Maravilha, Santa Clara Clareou, Oe Oe, Pais Tropical, Chove Chuva, Mas Que Nadaといったあたりまで聞いたところで突然の土砂降りに見舞われた。
集まったブラジル人観客たちは大喜びだったが、子連れの私は「冷たい」という子供の声に負けて無念のリタイヤ。まだ半分以上残したところで帰路についた。
残念だけどビデオをかなり撮ったので、後からゆっくり玩味することにしよう。

聞こえのいい口実

2008-09-04 13:29:12 | 日常
先日、定員の10分の1ぐらいしか埋まっていないガラガラのANAの国際線航空機に乗っていた。下界の風景を眺めるのが好きな私は窓際を希望したが、あいにく翼の上だった。飛行機が長崎県上空あたりに差しかかってきたところで、私はかなり後方の席に勝手に移動し、大分市を見たり、高知を遠くから眺めたりして楽しんでいた。
すると、乗務員が「確認したいのですが、お客様の元の席はどこですか」と言ってきた。要は、空いているから移動してもいいのだけど、「重量の関係から」移動していい範囲には限度があって、ここはダメなのだという。
面倒だから大人しく元の席に戻ったが、重量のバランスが悪いから動いちゃダメ、という説明は前にも聞いたことがある。
しかし、この説明はどうにも納得がいかない。荷物と服とを合計してもたかだか70kgが移動しただけで飛行機はバランスを崩して運航に支障を来すのだろうか。そうしたら機内食のサービスのために乗務員が前後に移動するのも危なくないだろうか? 本当にそうだとしたら、体重が大きい人がトイレに行こうとするのを身を挺して防がねば・・。
たぶん本当の理由は、エコノミーのキップのなかにも値段によりクラスが分かれていて、私が買ったような安いヤツは座れる範囲が決まっているということではなかろうか。それならば、「お客様がお求めになった安いキップは、トイレの横、揺れの激しい最後尾、翼の上などに移動範囲を限定させていただいております」と正直に言えばいいものを。

同様の「聞こえのいい口実」の例として、電車のなかでの携帯電話の使用制限がある。
東京のJR各線では、10年前ぐらいから「携帯電話は心臓ペースメーカーに悪影響を与える恐れがありますので、使用をご遠慮下さい」というアナウンスが流されていた。これはなかなか抑止力のある説得である。携帯電話をかけたら隣の人が胸を押さえて倒れた、なんてことは誰も経験したくない。
だけどこれはおよそ非科学的な説得である。携帯電話が発する電波は300mW程度の微弱なもので、世の中をさまざまな電波が飛び交う中、携帯電話でペースメーカーが止まってしまうぐらいなら、ペースメーカーをつけているひとは怖くて外を歩けないではないか。
NHK東京の地上波アナログ放送の出力は50kWである。携帯電話(300mW)から30センチの場所で受ける電波の強さ(電力束密度)は、50kWのテレビ送信アンテナから122メートル離れたところで受ける強さと同じである。だが、東京タワーの半径122メートル以内にペースメーカーをつけた人は入っちゃダメなんていう話は聞いたことがないぞ。
後にJRのアナウンスは、「携帯電話の使用はお客様同士のトラブルの原因になるとともに、心臓ペースメーカーへの悪影響も心配されますので、着信音を切り、優先席付近では電源を切ってください」というものに変更され、なるほど要はケンカの原因になるからやめてください、というのが本当に言いたかったことなのね、とわかった。だが、メンツがあるのか、「心臓ペースメーカーに悪影響」説をいまだに捨てない。このアナウンスを考えている人は相当に意固地らしい。