mardinho na Web

ブラジル音楽、その他私的な音楽体験を中心に

手倉森監督の用兵術

2016-01-23 22:35:28 | 日常
 AFC U-23選出権(リオ五輪アジア最終予選)で、手倉森監督は最初のグループリーグで登録メンバー23名のうち22名を出場させた。サッカー解説の山本昌邦氏は誰が先発してもチームの戦い方ができる団結力が日本の強さだという。
従来の日本代表や五輪代表では、先発する主力メンバー、試合状況に応じて繰り出すサブ、そして主力メンバーがケガや不調だったりしたときの控え、というヒエラルキーが割とはっきりしていたように思う。ところが今回は日程が詰まっていることもあり、第1戦の北朝鮮戦と第2戦のタイ戦とではかなりメンバーを入れ替え、結果的に消化試合となったサウジ戦ではさらに控えの選手を出した。
 その結果、準々決勝のイラン戦が延長戦になったとき、中3日のイランに対して日本は中2日でより不利だったにもかかわらず、フレッシュなメンバーで臨んだ日本のスタミナがイランを上回り、大勝することができた。手倉森監督の用兵術の勝利だと言って過言ではない。
 イランに勝ったことで、あと2戦のうち1試合勝てばいいという状況になった。こうなったからには次の準決勝はベストメンバーをぶつけて何が何でも勝つ、という戦い方ではなく、イラン戦とは先発をかなり入れ替えて、コンディション重視で選手を選ぶことになるだろう。そしてその次の試合、つまり決勝もしくは3位決定戦は再びイラン戦と似たようなメンバーになるだろう。
 ただ、手倉森監督は完全にローテーション制で考えているのではなく、やはりチームの柱と目しているメンバーが何人かいるようだ。大会の流れから言えば一番重要な試合は初戦と準々決勝だった。その両方に先発した選手がこのチームのコアメンバーだと思う。すなわちGK櫛引、DFの岩波、植田、室屋、MFの遠藤、中島、FWの久保である。準決勝はこの7人のうち5人ぐらいを残して、他はイラン戦で控えだった選手のなかから出してくるのではないか?
 イラン戦で膠着状態が続いて、次に出すカードはFW浅野だろうということは私にも予測できたが、私は浅野に代えて出されるのはオナイウだろうと思っていた。オナイウはくさびのボールを奪われることが多く、ゴール前での決定的シーンでもミスしてしまうし、役割を果たせていないと思ったからである。
 ところが浅野と交代させられたのは久保だった。久保もマークされてなかなか役目を果たせなかったとはいえ、実力ではチーム屈指の選手であるはずなのにこの重要な局面でなぜ?と思った。だが、試合を最後までみて、オナイウを残したのは監督の教育的配慮だったという気がしてきた。
 延長後半、もう日本が点を入れて試合の帰趨があらかた決まったような段階で、オナイウがいいプレーをしたのに対して手倉森監督から「オナイウ、ナイス!」と声がかかった。これを聞いて、監督はこの最終予選を選手を成長させる機会ととらえていることがよくわかった。もし交代で出されるのがオナイウだったとすると、オナイウは結局「いいところを見せられなかった」と評価され、彼自身もこの交代を懲罰として受け止めたであろう。だが、延長の最後までピッチにいたことで、オナイウには守備も頑張り最後まで走り続けた、と一転していい評価がなされた。これでオナイウは次の試合に気持ちよく望めるだろう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿