mardinho na Web

ブラジル音楽、その他私的な音楽体験を中心に

粉飾で明け暮れた2014年

2014-12-30 17:31:21 | 日常
2014年の初めには、佐村河内守という作曲家が実はべつの人にすべて曲を作ってもらっていたということが発覚した。
「聴覚に障害ある芸術家然とした人物が作ったすごい曲」という物語に動かされる日本人が多いことを利用した巧妙な詐欺だった。
次に、若い女性研究者がSTAP細胞という万能細胞の作成に成功したというニュースで湧いたが、これも大嘘であったことが発覚した。多数の共著者や権威ある科学雑誌の査読者まで欺いた点でなかなか手の込んでいたが、「若い女性による世紀の発見」という演出(粉飾)が効果ありすぎだったため、その反動も強く、有能な研究者の自殺という痛ましい結末をもたらした。
朝日新聞が従軍慰安婦の強制連行に関する報道に誤りがあったことを認めた。だが、それによって従軍慰安婦への強制性が否定されたかのような粉飾がかえって猛威をふるっている。歴史の粉飾はなかなか反証が難しいのでやっかいである。
振り込め詐欺の被害額は今年350億円を超えそうで、史上最高を更新した。バブル崩壊後の日本で生まれたもっとも成功した「ビジネスモデル」かもしれない。
粉飾と詐欺に明け暮れた観のある2014年の最大の粉飾は「アベノミクス」かもしれない。2%近いマイナス成長なのに安倍自民党は選挙で大勝。アベノミクスで唯一効果が出ているのは円がどんどん安くなっていることだが、外国からみると安倍政権の2年間に日本のGDPは1兆ドルほど減少している。
それでも雇用情勢は悪くないので、もう日本はいずれにせよ余り高い経済成長を期待しないほうがいいということかもしれない。

山本潤子さんに寄せて

2014-12-25 01:56:11 | 日常
1984年、私は東京の古い下宿に住む大学生でした。当時大学は「レジャーランド」と呼ばれ、テニスサークルが花盛りでした。大学を出れば、どうせ一流企業や官庁で長時間労働しなければならないので、厳しい入試と厳しい職業生活の間の束の間の休息期間である大学生活を謳歌しよう、みたいな空気が流れていました。
私は、理性の上ではそういう考えは全く受け入れていませんでしたが、まったく影響を受けなかったと言えば嘘になるでしょう。
深夜まで読書に励む反面、睡眠時間はけっこう長くて朝は9時前後に起きていたと思います。眠気覚ましにまずFMラジオをつけると、FM東京のいつもの番組が聞こえてきます。朝9時となりますと、夫と子供を送り出して一息ついている若い主婦を想定した番組をやっていました。ナレーションや音楽が決まったルーティンで進みますので、30年後の今でもその時流れていた音楽を何曲か思い出すことができます。そのあたりの時間帯でやっていた番組で、「今月の歌」みたいな感じで毎朝1か月間ぐらい流れる曲があり、初めの頃は村下孝蔵の「少女」が流れていました。それもけっこう懐かしいですが、なんといってもハイ・ファイ・セットの「素直になりたい」を聞くと、その頃の空気の匂いまでが思い出されるようです。
まあ正直言って当時は英語だらけのふざけた歌詞だと思っていました。
30年経って聞いてみますと、当時わからなかったことにいくつか気づきます。
まず、音楽的にはR&Bだったということ。
ハイ・ファイ・セットと言えば「フィーリング」で、私はそれも大好きでしたが、聞き比べてみると「素直になりたい」で山本潤子さんはハスキーな声で歌っています。R&Bなので声を変えたのでしょう。

Michelle Shaprow, "Earth One" (2014)

2014-12-25 01:15:16 | USA
ミッシェル・シャプローを知ったのは2カ月前。
デビュー作の"Purple Skies"を聞いたらとても良かったので、2作目の"Earth One"を買いました。
デビュー作から3年目にして2作目ですが、なんとなく余裕を感じます。特に生活に困っていないので好きなように音楽を作っています、という感じを受けます。
2作目の"Earth One"はBeatlesのSargent Peppersのようにアルバム全体が一つのショーになっていますが、もっと徹底していて全体として一つのミュージカルのようです。
地球から宇宙の虚空に向けて発信されている"Earth One"というラジオ局の番組、という設定ですが、最初は前作"Purple Skies"のエンディングから始まり、"That was `Purple Skies` by Earth One"と始まりますので"Earth One"というのはミッシェル・シャプローその人でもあるようです。
このラジオ・ショーのテーマはLoveなのですが、そのスポンサーであるFirst Airは欲望ギラギラの会社のようで"You Really Look Good with Your Money"というCMソングが入ります。
冒頭から空中に舞い上がり、CMソングも航空会社で、そのあとも香港や北京に飛んだりして最後まで宇宙空間を遊泳しながら口笛を吹いてフィナーレを迎えます。
個々の曲がどうのこうのというより、全体を聞き流すのが正しい聞き方のように思います。

Bebel Gilberto at Bluenote Tokyo, Nov.28, 2014

2014-12-05 01:06:17 | bebel gilberto
ジョアン・ジルベルトとミウシャの娘にしてシコ・ブアルキの姪、ベベウ・ジルベルト。ブラジル音楽界の貴花田といってもいいかもしれない。
ベベウが5年ぶりのアルバム"Tudo"を発表し、それを機にブルーノート東京で公演を行った。
5年ぶりというと、ずいぶん久しぶりという感じがするが、ベベウに限ってはもともとそういうペースでアルバムを発表してきたので、沈黙していた感じがしない。
ちなみにベベウのアルバムはこれまで5作あって:
Tanto Tempo (2000)
Bebel Gilberto (2004)
Momento (2007)
All in One (2009)
Tudo (2014)
ベベウは1966年生まれで、父ジョアン・ジルベルトの1980年のアルバムでその可愛らしい歌声を聞かせているが、初リーダー作は実にその20年後というゆったりしたデビューだった。
それからも14年間で5枚という実にゆったりしたペースでアルバムを出してきた。その音楽自体がTanto Tempo(時間がたっぷり)というデビュー作のタイトルに象徴されるように、究極のリラックス音楽だからスローペースでアルバム作りをするのも理解できる。

ところが、2014年11月28日のブルーノート東京公演で彼女はかなりハイだった。
まずは曲目を書いておく。(カッコ内は収録されているアルバム)
Sun is shining (all in one)
Saudade vem correndo (tudo)
Momento (momento)
Nada não (tudo)
Cada beijo (Bebel Gilberto)
Tudo (tudo)
Areia (tudo)
Somewhere else (tudo)
August day song (tanto tempo)
Harvest moon (tudo)
Simplesmente (Bebel Gilberto)
So Nice (Summer Samba) (tanto tempo)
Tout est bleu (tudo)
Close your eyes (tanto tempo)
Sem contenção (tanto tempo)
Samba de benção (tanto tempo)

ボブ・マーリーのSun is shiningをアルバムよりいっそうレゲエらしく。
ニール・ヤングのHarvest Moon, フランスの曲Tout est bleu、父は決して歌わなかったマルコス・ヴァーリのSummer Sambaなど、他人の曲でも見事にベベウ節になっている。
14年間の5枚のアルバムのなかで少しずつ冒険もあるのだけれど、基本的なベベウ節は不変というか、とにかく期待を裏切ることがない。
もっともライブではやや羽目をはずしたところがあって、バリトン・サックスやギターを担当したイケメンのJorge Continentinoと一緒にダンスしたり、ギターとベースのマサ・シミズに大好きと言ってブチュ。
ライブだと、ベベウの音楽の魅力の一つであるコーラスがないのが残念だけど、ハイな彼女を見ることができてよかった。