mardinho na Web

ブラジル音楽、その他私的な音楽体験を中心に

飯田経夫『日本の反省-「豊かさ」は終わったか』PHP新書、1996年

2008-10-27 16:52:13 | 
なぜか今アメリカ経済で起こっていることを余り「バブル崩壊」とは呼ばないけれど、資産価格が上昇するなかで過度のレバレッジ(借金)を効かせていた経済が資産価格が下落に転じるとともに破綻したのはまさに日本のバブルの形成と崩壊をなぞったかのごとくである。その影響は世界に及び、今日の日本の株価は26年ぶりの低水準だとか。
アメリカ経済は相当ヤバい状態にあって、アメリカが重病になれば世界中が少なくとも発熱ぐらいはする、ということは誰しも多かれ少なかれわかっていたはずなのに、アメリカのバブル崩壊を予想した人は少なかった。むしろ、ここ2年ほど日本の論壇誌をにぎわしていたのは「中国のバブル崩壊して世界不況」という荒唐無稽なシナリオだった。それがいかに誤った議論であったかは、中国がなお9%で成長して世界経済のなかで数少ない光明になっているものの、他国を救うほどの影響力を持っていないことからも明らかであろう。
アメリカのバブル崩壊は「投資銀行」というビジネスモデルの終焉を示しているという。金融業がリーディングインダストリーだという経済はどこかおかしい。結局、貯蓄超過主体から貯蓄不足主体へ資金を取り次ぐにすぎない金融業は、経済における貯蓄の成長(それはGDPの成長と大差ないだろう)と足並みをそろえて成長するぐらいがちょうど良くて、GDP成長率を上回って成長しているようであれば、そこには何らかの詐術が隠されているのである。債権をブレンドすることで不良債権を隠して他人に押しつけてしまう「サブプライム・ローン」というのも要する一種の詐術だったのではないか・・・。

以上は12年前に書かれた飯田経夫氏の『日本の反省』の調子で、今日の世界経済を論じてみた。この本は、専門的な議論ゼロで、飲み屋でよくしゃべる初老の先輩のご高説を我慢して拝聴しているような感じだが、この御仁の御説は「そうですね、そうですね」と相づちを打ちたくなる。
豊かさを達成した日本では、消費拡大の決め手がなく、低成長は不可避だ。それで自足すればいいのに、アメリカに迫られて「内需拡大」を約束してしまったから、バブルを招いて、バブル崩壊と国力の衰退を招いた、と主張する。本書はアメリカ経済の危うさや、日本の悲観癖なども指摘し、何やら今日の状況を予言しているかのようである。日本の輸出依存度は高いわけではなく、日本経済がそれほど悪化しているわけではないので、アメリカにお付き合いして極端な株安になっているのは要は日本の悲観癖のせいだと思えてならない。

阿佐ヶ谷ジャズストリート2008&黒船レディ&銀星楽団(2008年10月24日)

2008-10-25 23:03:04 | 黒船レディ
阿佐ヶ谷ジャズストリートが10月24日、25日に開催された。杉並区の山田区長いわく「横浜、神戸と並ぶ日本3大ジャズフィスティバル」とのこと。その真偽のほどはともかく、杉並区内の一つの町が二つの政令指定都市と肩を並べていると自負しているのが面白い。
黒船レディ&銀星楽団はここ数年阿佐ヶ谷ジャズストリートの時に「バルト」でライブをやっている。ジャズの祭典ということもあって、最近オリジナル曲の比重を高めつつあった黒船レディも、今回のライブでは古いジャズの曲を多めに取り上げた。1曲目はYou are the cream in my coffee.黒船レディのライブに行き始めた頃は必ず演じていた曲なので懐かしい。前よりもゆっくりめのテンポだった。レディが「忘れ物」という日本語詞をつけたDo you know what it means to miss New Orleans? は映画のなかでビリー・ホリデーとルイ・アームストロングが共演しているそうだ。どんな感じか聞いてみたい。
翌25日も昼から家族で阿佐ヶ谷ジャズストリートを見て回った。杉並区役所前ではかなり大がかりな編成のビッグバンド。「都庁スウィングビーツ」という創立60年にもなる由緒あるアマチュアのビッグバンドとのこと。ランディ・ブレッカーの曲などなかなか難曲に挑んでいた。Corcovado, Waveと、A.C.Jobimの曲も2曲披露。
阿佐ヶ谷駅前広場ではHIBI★Chazz-Kという工事作業服姿のクインテット。サックス4本(ソプラノ、アルト、テナー、バリトン)+ドラムスというユニークな編成でDuke EllingtonのCaravan, J.ZawinulのBirdlandなど。
来週はいよいよジョアン・ジルベルトの4回目の来日公演だ!

Gilberto Gil, Luminoso Voz & Violao

2008-10-23 23:18:22 | gilberto gil
けっしてとっつきやすいアルバムではない。私も2,3回聴いて後はずっとお蔵入りだった。ギター弾き語りで伴奏なにもなし、というのが苦手なわけではない。ジルベルト・ジルはギター弾き語りの名手でもある。なぜ聴かなかったのか。知っている曲が少なかったからだ。
改めてこのアルバムを引っ張り出して、解説を読みながら聴き直してみると、なるほどこのアルバムはジルベルト・ジルがライブで演奏するような代表曲を弾き語りしたというのではなくて、他の人に提供した曲、アルバムのなかでもB面のあとの方の曲などが多く、曲を選んだのも本人じゃないのだ。もともと本のおまけとして作られたCDなので、余り金も時間もかかっていない。
だけどこのCDを歌詞の対訳なども読みながらじっくり聴くと、自分がジルベルト・ジルをよくわかっていなかったことを痛感させられた。レコード棚をさらってみると、呆れたことにLP10枚余り、CDも7-8枚あり、ずいぶん熱心に買い集めたものだと思うが、その割には聴き方が浅かった気がする。
ジルベルト・ジルは歌う思想家だ。アフリカをルーツとする南北アフリカの音楽文化の融合、といったことを考え実践していて、やや頭でっかちな風でさえある。同じことを自然体で脳天気にやってしまうジョルジ・ベンとは対照的である。

Gilberto Gil, Banda Larga Cordel

2008-10-20 00:01:17 | gilberto gil
ブラジルの文化大臣ジルベルト・ジルの最新アルバムが出た。
言うまでもなく大臣がレコードを出したのではなく、もともと大変著名なアーティストが大臣になったわけだけど。
2006年の前作「声とギター」(voz e violao)はおとなしすぎてジルらしくないなと思っていたが、このBanda Larga Cordelはとてもいい。「リズムの探求者」ジルベルト・ジルらしく、ブラジルの地方音楽forro、レゲエ、ボサノヴァ、アフリカ音楽、ロックなどいろいろなリズムと、テクノロジーを結合している。好奇心旺盛ぶりは歌詞にも現れているようだ。
ジルは9月にコンサート出演のために来日したが、その際に日本の文部科学大臣との会見なんかはあったのだろうか。ジルがもし文部科学省を訪問していたとして、「"Realce"は大好きなアルバムです」なんて言う文部官僚がいたら文部科学省もなかなか楽しい官庁なのだけれど。

育児休業に入った!

2008-10-14 23:32:16 | 育児休業の日々
10月1日から育児休業に入った。
「育児休業をとるよ」というと、「あら産休いつから?」と聞いてくる人がいるけど、産休はお産をするための休暇で、育休は子育てをする休暇だという基本がわかっていない。
育休は給料が出ない。代わりに雇用保険からなにがしかの補助があり、社会保険料は免除となる。給料がないので、所得税の天引きはないけれど、住民税は昨年の所得に基づいて決まっているので、たぶん雇用保険からの補助は住民税で消えてしまう。

育休とは何をするか? 
そもそも育児とは、要するに「子供の消化管に適切なインプットをし、そのアウトプットを適切に処分すること」と私は定義している。
これほど唯物論的な定義を他にしている人がいるだろうか?
目下生後8ヶ月すぎの我が子の場合、一日に離乳食を二回作って与え、その後でミルクを与え、それ以外に2回ミルクを与える。他に家族の夕食、自分の昼食を作るのが、育休を取って家事労働に従事する私の役割ということになる。