mardinho na Web

ブラジル音楽、その他私的な音楽体験を中心に

藤田朋子"The Woman in me"(1989)

2013-05-31 22:09:15 | Yutaka/横倉裕
女優の藤田朋子さんの歌手デビューアルバムです。
CDの中に藤田さんのプロフィールが書いてあり、そこに「特技 英会話・歌」とあります。
このアルバムはその二つの特技を結合させたもので、全曲英語で、なかなかの歌唱力を見せています。
しかし、私がこのCDを買ったのはひとえにこのアルバムをプロデュースし、曲のアレンジを手がけているのがYutakaこと横倉裕さんだからです。
横倉さんは1970年代初頭にカリフォルニアに移住していたので、このアルバムもカリフォルニアで録音されています。Yutakaさんはプロデュース、アレンジ、キーボードを手がけています。
時期から言うと、前に紹介したDeNovoとBrazasiaの中間の時期に作られたこのアルバムですが、中身はだいぶ違います。DeNovoとBrazasiaはどちらもブラジル音楽&フュージョンですが、藤田朋子"The Woman in me"はほとんどロックです。Yutaka作の"Summer without you"(ちなみに、この曲はNovo時代に「この星の上で」というタイトル&日本語詞で作ったものを、サビの部分を若干改作し、全く別の内容の英語詞に変えたものです)、Don Grusin作の"Wait for me"の二曲のみフュージョン&AOR風ですが、他はロックです。藤田さんの意向を重視し、プロデューサーのYutakaさんは余り自分を出さなかったのだろうと推測します。

ヘイト・スピーチをやめてラブ・スピーチを!

2013-05-31 21:21:30 | anti facism
東京・新大久保の通称(?)「韓流通り」で、韓国・朝鮮人を攻撃するデモが繰り返されているらしい。
特定の民族や人種を侮辱、攻撃する言動は欧米ではヘイト・スピーチ(hate speech)と呼ばれて法的に規制されている。ナチズムや人種差別の復活を許さない決意の現れであろう。一方、日本では規制を受けない。しかし、日本でも差別はいけないという思想はかなり浸透していて、ヘイト・スピーチはそれほど目立つものではなかったように思う。
それが近年急に激しくなってきたのはインターネットの普及が一因ではないかと思う。インターネットの匿名性に隠れて、秘めていた攻撃性を思い切り炸裂させている人たちがいる。おそらくそういう人たちはヒマを持て余しているのであろう。ネット上では差別主義者が多数派であるかのようにさえ見えてしまう。
新大久保のデモはそうしたインターネット上で活動していた差別主義者が現実世界に吹き出してきたものだ。匿名性に隠れて攻撃を続けるのは卑怯だと言われるのがしゃくだから現実世界に姿を現したに違いない。
それにしても竹島問題で韓国に不満があるのであれば韓国大使館にデモをかけるのが常道というものであろう。なぜ在日韓国・朝鮮人という、日本と韓国・北朝鮮の狭間におかれている弱い立場の人たちをことさらに攻撃するのだろうか。
今朝のNHKのニュースで「韓流通り」でお店を経営する韓国人女性が「日本が好きで日本に来たのに、こんなに攻撃されて悲しい」と言っていた。このコメントに込められたラブ・スピーチに心和んだ。安心してほしい。韓流通りは今日も韓流スターと韓国料理を愛する日本人たちでごった返している。
韓国・朝鮮人への憎しみをたぎらせている(自称)愛国者の皆さん。ヘイト・スピーチを大声で叫ぶ代わりに、日本がどんなに素晴らしい国か、自分はどんなに日本を愛しているかを叫びながらデモしたらどうですか? ラブ・スピーチに溢れたデモなら周りの人も拍手するよ。

中国統計年鑑のデータがWindows8やInternet Explorer 10で読み取れない問題

2013-05-28 09:50:48 | 日常
新しいノートPCを購入したらWindows8が入っていた。
正直言ってお節介な機能が多すぎて使いづらい。なかでも我慢ならないのは「中国統計年鑑」をはじめとして、中国の統計書のデータCDを閲覧できないことであった。
もともとこれらのデータCDには「アクティブコンテンツ」というものが入っているらしく、それの実行を許可しないとこれまでのWindowsXPなどでも閲覧できなかった。
しかし、Windows8になると、Internet Explorerの設定をあれこれ変えてみてもいっこうに閲覧できないのである。
さらにいえば、Windows7であっても、Internet Explorer9であれば閲覧できるのだが、Internet Explorer10となると閲覧できない。
どうやらWindowsよりもブラウザーの方が問題らしい。
ノートPCを持っている最大の目的は旅先でこうしたデータを扱うことだから、閲覧できないとなると、我がノートPCはかなりの程度無用の長物となる。
なんとか閲覧できるようにする方法はないものか、日本語、英語、中国語でインターネット検索をかけてみた。
日本ではIE10をアンインストールしてIE9に入れ替える方法を伝授していた人がいた。やってみたがWindows8が入っているPCではIE9は対応していませんと表示されてダメである。
中国ではこの問題に直面する人は少なくないようで「質問箱」にそうした質問が見られたが、回答は「僕はちゃんと見られるよ」といった解決にもならない回答である。

さて結論を急ぐと、Lunascapeという無料ブラウザーをダウンロードしたらうまく閲覧できるようになった。Windows7でもWindows8でも大丈夫である。Lunascapeには閲覧モードが三つあり、そのうちTridentエンジンというものにすると閲覧できる。
Google Chrome, Mozilla Firefoxも試してみたがダメだった。どこか設定を変えれば閲覧できる可能性もないとは言えないが、手間がかかりすぎるのであきらめた。


L.A. Transit "DeNovo"(1986)

2013-05-24 23:19:13 | Yutaka/横倉裕
Yutakaこと横倉裕さんの音楽は中毒性があるみたいで、一度聞くと次も聞きたくなります。
このL.A.Transitというグループの"DeNovo"(どちらがグループ名でどちらがアルバム名なのかよくわからない!)は実質的にはYutakaさんのプロジェクトだったようで、Yutakaさんのセンスが光っています。Summer without you, Muito masなどYutakaさんの作曲した曲も入っています。
メンバーにはYutakaがキーボードと歌、Oscar Castro Nevesのギター、吉田和雄のドラム、Jose Marinoのベースなど、セルジオ・メンデスのバックをつとめているブラジル音楽に長けた人たちですから、ブラジル色は極めて濃厚ですが、しかしブラジルというよりアメリカ西海岸の乾いた空気を感じる音です。
曲目はMas que nada, Wave, Zazueira, How insensitive, Agua de beber, Tristeza、とブラジル・ボサノヴァ好きには超おなじみの曲ばかりですが、Yutakaさんの素晴らしいセンスの編曲で新しい曲に生まれ変わっています。
セルジオ・メンデスの編曲は、皿の上に子供の好きそうなハンバーグとかスパゲティとかを少しずつ乗せたお子さまランチのようで、ブラジル音楽という皿の上に、ビートルズ、ポップス、ロック、ラップ、インド音楽などを少しずつ乗せているところが特徴ですが、Yutakaはすべて自分のなかに消化して自分のカラーに染め上げるような編曲をしています。
L.A.Transitというグループ名も面白いです。1988年に私が初めてブラジルに行ったとき、ロサンゼルスで飛行機を乗り換えました。L.A.Transitも日本とブラジルがロサンゼルスで出会って生まれた音楽です。
Yutakaさんのキャリアのなかでこのアルバムは「習作」だったのかもしれませんが、埋もれさせておくには大変惜しい秀作です。

Yutaka続報

2013-05-18 23:45:41 | Yutaka/横倉裕
Yutakaこと横倉裕さんは1990年にBrazasiaなど数枚のアルバムを出しました。
Brazasiaは北米でけっこう人気があるようで、2007年にカナダの歌手Carol Welsmanのアルバムでトップでカバーされています。
ただ、Yutaka自身は1990年代初頭の数枚のアルバムを出したきりです。
もっとも、その後はCarlos Yutaka Del Rosarioというフィリピン人のような名前で引き続きアメリカ西海岸で音楽関連の仕事をしています。2000年代後半にはこの名前でセルジオ・メンデスのバンドに入り、日本を含め世界各地でツアーをしていました。
そのライブの様子をYou Tubeで見ることができます。セルジオ・メンデスのバンドでの彼の役割はキーボード奏者ですが、セルジオ・メンデス自身ももちろんピアノ、キーボードを弾くので、いわばその身代わりに弾いているようです。ライブを見ると、ステージ上のほとんどライトが当たらないような位置に彼はいて、優れたソングライター、アレンジャーを遇するにはあんまりではないかと残念に思います。
その一方で、Carlos Yutaka Del Rosario氏はレコーディング・エンジニアとしても活動しています。なんとなく予感がして小野リサの"Look to the Rainbow: Jazz Standards from L.A."のCDの裏の細かい文字を見たら、やっぱりいました。Mixed by Geoff Gillette, Carlos Y. Del Rosario...。これが1970年代初頭に日本で本格的ボサノヴァをやっていた人だと気づく人は少ないでしょう。


ブラジルと日本~Yutaka "Brazasia"(1990)

2013-05-02 22:26:10 | Yutaka/横倉裕
横倉裕さんは学生時代の1972年にボサノヴァグループNovoを結成してアルバムを録音し、そこから2枚のシングルを発売したが、売れ行きがふるわなかったため、アルバムは発売されないままとなりました。
横倉さんはその後渡米し、カリフォルニアで音楽活動を続けたようです。
そして1990年にYutakaの名義でGRPレコードから発売したのがこの"Brazasia"(ブラゼイジア)。そのタイトルの通り、ブラジル音楽とアジア(日本)の要素をミックスし、アメリカ西海岸的なフュージョンに仕上げています。
最初の曲"Brazasia"は純和風な琴の調べが快適なサンバのリズムに包まれていく流れで、なんとなく裕さん自身の足跡を暗示しているようです。ピアノでメロディーを弾いてみると、ブラジルへの憧れとともに、日本への想いも感じられます。
GRPレコードというのは、デイブ・グルーシンとラリー・ローゼンが運営していたレーベルでジャズ・フュージョンに力点をおいていたようです。そういえば私が愛好していたデイブ・グルーシン&リー・リトナーのHarlequinもGRPレコードから発売されたものでした。Harlequinは実質的にはイヴァン・リンスのアルバムではないかと思うほど、二人がイヴァン・リンスに傾倒していたことが伺えますが、この"Brazasia"もイヴァン・リンスがアメリカで吹き込んだアルバムみたいな空気が流れています。リー・リトナーのギターの代わりにYutakaさんの琴、という感じです。2曲目ではJazzyな琴のソロまで聴かれます。
バックを受け持つのはベースにArtur Maia, ドラムスにTeo Lima、ギターにOscar Castro Nevesと、手練のブラジル人ミュージシャンたちですし、3曲目の"Morena"はYutakaさんがポルトガル語で歌うForro風の曲、5曲目の"Lambada Nova"はその名の通りランバダのリズム(・・ジルベルト・ジルはこういうリズムを「アフォシェー」と呼んでいたようにも思います)、6曲目の"Urban Jungle"の出だしはイヴァン・リンスの"Antes que seja tarde"を思い出させ、7曲目の"Sao Jorge"の冒頭はカンドンブレなどブラジルの民族音楽風だったりするなど、ブラジル的要素が和風にまさっている感じがあります。
アルバムの謝辞で「(何曲か共作したブラジル人の)アントニオ・アドルフォとオスカル・カストロ・ネヴィスには、私の音楽的ルーツにふれる機会を与えてくれてありがとう」と書いています。ここでいう「音楽的ルーツ」とはどう考えてもブラジル音楽のことですね。このアルバムを作った時点で、Yutakaさんが日本にいた頃からボサノヴァをやっていたことなど知られていようはずがなく、渡米してからこのアルバムを作るまでYutakaさんはブラジリアンな世界から離れざるをえなかったのかもしれません。むしろ琴の音色を売り物にやってきて、ようやく自分の音楽的ルーツであるブラジル音楽を全面に打ち出した本作を作ることができた、ということかもしれません。
いずれにせよ横倉裕さんは寡作ではあるけれど、一枚一枚のアルバムが長く人を惹きつけてやまない完成度と魅力を持っていると思います。