mardinho na Web

ブラジル音楽、その他私的な音楽体験を中心に

「良い日本人」と「悪い非日本人」をイメージづける偏見助長のマスコミ

2015-09-27 17:44:12 | anti facism
日本に住む外国籍の人、あるいは外国籍の人の血を引く人が犯罪を犯すと、テレビの報道では必ずその外国人性を強調して報道する。最近ペルー人の男性がかなり異常な連続殺人事件の容疑者として捕まった。名前や境遇から彼が日系人であることは明らかなのに、なぜか「日系」ということには触れず、枕詞のように「ペルー人の○○が」と外国籍であることをことわったうえで内容を伝えている。
にしゃんたさんというスリランカ出身の人がその問題を鋭く指摘している。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nishantha/20150927-00049907/
ノーベル物理学賞をとった中村修二さんは米国籍を取得しているのに日本人として報道されている。王貞治氏は日本国籍を持たないのに国民栄誉賞が与えられ、日本人の鑑としてたたえられている。傑出した業績を挙げた人は無理してでも日本人だとみなし、犯罪の容疑者やスキャンダルの当事者が日本人と外国人の混血であったりした場合には必ずその外国人性の方を強調する。
ついでに言えば、日本人が外国で交通事故や殺人の被害にあって死んだ場合のほうが、国内で同じ目に合う場合よりも報道される蓋然性が高いようにも思える。
こうした報道は日本に住む外国出身の人たちや外国籍の人たち、混血の人たちを知らず知らずに傷つけている。にしゃんたさんのような勇気のある告発がもっともっと必要である。
またこうした報道姿勢は、ラグビーの日本代表に象徴されるように日本という国が外国人や外国出身者の助けを必要としているという現実から日本人の目をそらしている。日本人は人種と国籍を問わず人間を平等に見ることができなくなり、国際性をどんどん失って劣化する。
にしゃんたさんの記事の後のコメント欄に、つまらない屁理屈で反論しているオジサンたちは劣化した日本人の実例である。

ヴィニシウス 愛とボサノヴァの日々(DVD)

2015-09-27 16:04:10 | Bossa Nova
リオ五輪の公式マスコットの名前は投票の結果、トムとヴィニシウスになった。いうまでもなく、「イパネマの娘」ほか多数の名曲を共作したトム・ジョビンとヴィニシウス・ジ・モライスから来ている。それにしても、むくつけきオジサン二人とは似ても似つかないかわいらしいマスコットにトムとヴィニシウスと名付けるとは! それだけリオを世界に愛される都市にするうえでの二人の貢献は他に比肩しがたいぐらいすごいということであろう。
さて、そのヴィニシウスの生涯を関係者へのインタビューと、劇めいた詩の朗読とで描いたミゲル・ファリアJr監督『ヴィニシウス 愛とボサノヴァの日々』。確か2009年頃に日本でも公開されたが、見逃してしまったためDVDを購入してみた。劇的な展開があるわけでもないので映画館で2時間見るのは少々辛かっただろう。DVDで気の向いたときに半分ずつぐらい見るのがちょうどいいかもしれない。
ともあれ、ヴィニシウスはすごい人だった。若いころには詩人として名を馳せる。オックスフォード留学後には生計を立てるためにブラジル外務省に入省し、外交官として働く。その傍らでミュージカル「黒いオルフェ」を書き、トム・ジョビンとともにその挿入歌を作る。数年後、「黒いオルフェ」はフランスの映画監督によってリメイクされてカンヌ映画祭で優勝。トムとヴィニシウスが改めて作った挿入歌の数々とともにブラジル文化を広く世界に知らしめることになった。
そのあとも数々の名曲を作詞するばかりでなく、自らもギターを持ってステージに立つ。トムとのコンビのあとはカルロス・リラとも共作。さらにバーデン・パウエルとコンビを組んで、ボサノヴァ後の新たな展開としてアフロ・サンバを提唱。バーデンの後も数々の若い作曲家と共作し、トッキーニョと組んでからはステージにも立って(というより座って)、ヨーロッパでツアーをやってスターになった。活発すぎる文化活動は当然外務省の顰蹙を買い、軍事政権とそりが合わずに外務省を退職。
そうした活動の傍ら、ヴィニシウスは愛に生きる人でもあり、生涯に9回も結婚した。どうやら50歳を過ぎて以降のほうが結婚、離婚のサイクルが早まったようだ。また、酒を浴びるほど飲んだ人でもあり、お金には無頓着だった。若いころは家族を貧乏させ、「イパネマの娘」などの印税が入って金持ちになったら、レストランに札束を持って出かけ、そこに居合わせた全員におごってしまった。
本当に太く長く生きた人だった。外交官の仕事が外国との関係のなかで国益を増進させることだとすれば、ヴィニシウスは外交官が何百人束になってもかなわないぐらいブラジルに貢献した。世界の人々がブラジルに対して持つ好感度というソフトパワーを、一人で何倍にも拡大したのがヴィニシウスだった。ヴィニシウスはサンバ、ボサノヴァなど音楽や踊りを世界に発信するだけでなく、自らその重要なクリエイターとなった。
この映画ではヴィニシウスと親しかった数々の人たちが話し、かつギターを持って歌ってヴィニシウスの歌詞の特徴を説明する。その顔触れが豪華で、カルロス・リラ、フランシスコ・ハイム、エドゥ・ロボ、シコ・ブアルキ、ジルベルト・ジル、カエターノ・ヴェローゾ、マリア・ベターニア、トッキーニョと、まさにブラジル音楽史そのものだ。本来ならばここにトム・ジョビンとバーデン・パウエルもいればよかったのだが、残念ながらすでに亡くなっていて、この映画のためのインタビューはかなわなかった。
本当に、愛を与え続け、創造性を吐き出し続けた不世出の人だった。

ラグビー実況と大本営発表

2015-09-24 00:23:12 | anti facism
ラグビーのルールはよくわからないし、テレビで試合を見たこともない。
数日前にラグビーのワールドカップで日本代表が南アフリカ代表に勝利したことがテレビのニュースで大騒ぎになっている。史上最大の番狂わせらしい。
試合前の日本代表の世界ランキングは13位で、南アフリカは3位だったそうだ。サッカーでは13位が3位に勝つことは割によくあるが、ラグビーだと、日本が南アフリカに勝つのはサッカーでベトナム代表がブラジル代表に勝つような感じなのかもしれない。
この機会にラグビーのルールでも覚えようとテレビで日本代表VSスコットランド代表の試合を見てみた。画面の端にルールの解説がタイムリーに出たり、アナウンサーも時々ルールを解説してくれるので、初心者にはありがたい中継ではあった。
しかし、試合が進むにつれてだんだん聞くに堪えなくなってきた。前半をスコットランド12:日本7で終え、アナウンサーが「前半リードされるのは想定内です」と叫び、解説者が後半はスタミナのある日本に分がある、と応じる。後半に入ってアナウンサーが「スコットランドの足が止まってきました」と叫びだしたころから、単なる希望的観測にしか聞こえなくなり、ばかばかしくなったので副音声の英語に切り替えた。足が止まるどころか、そこから先スコットランドは5つもトライを決め、日本は一つとして決められなかった。明らかにスコットランドの選手のほうが切れのいい動きをしている。再び日本語に切り替えると、日本代表は中3日で戦っているから不利だとか、次につながる戦いだった、とか言っている。最後は言い訳と負け惜しみか。太平洋戦争中の大本営発表となんの違いがあろう。
私は少なくとも解説者には日本の応援団を務めるのではなく冷静な分析をしてほしかったが、日本の視聴者の多くは間違いであっても日本代表を誉めそやし、最後まで期待をつないでくれる解説を聞きたいのかもしれない。前半リードされたのは想定内だとか、スコットランドの足が止まっている、というのはいずれも誤った分析であったことが素人目にも明らかなのだが、それでも多くの視聴者はこのアナウンサーと解説者には分析力がない、とは思わず、二人がいう通り、日本代表は次につながるいい戦いをした、次のサモア戦は勝つだろう、と信じ込むのかもしれない。
私はラグビーのルールも知らない素人なので本来なんの発言権もないが、日本代表は主力のマフィー選手がけがで退場してしまったし、次のサモアはランキングではスコットランドより上らしいから、普通に考えれば次も余り勝ち目はないのではないか。

海外派兵に熱心だが、難民受け入れはしないニッポン

2015-09-17 00:27:53 | anti facism
安保関連法案の参議院での採決が大詰めを迎えている。
野党的に言えば「戦争法案」、自民党の呼び方では「平和安全法制」が可決されると、日本はアメリカの戦う戦争のなかで日本の安全に影響する恐れがあるという申し訳が立つものにおつきあいすることになる。そうするのは、中国や北朝鮮が日本だけをターゲットにしてちょっかいを出してきた時に、アメリカがより確実に日本を助けてくれるようにするためだ。恩を売っておけば助けてくれる、というのは日本的にはわかる理屈である。ただ、靖国に参拝するなどしてケンカを売って、相手にケンカを買われた時に、果たしてアメリカは助けてくれるのか? 靖国参拝に「失望した」とコメントしたアメリカだから、アメリカにおつきあいしたからといって、日本がおとなしくしていないといざというときは助けてくれない、と考えるべきだろう。
ともあれ、「平和安全法制」は世界平和のためなんだ、と安倍首相は力説している。では日本は軍隊派遣以外に世界平和への貢献をどれだけしているのか。
いまシリアから多数の難民がバルカン半島を経てドイツと北欧に向かっている。
難民も大変だし、難民をいっぱい受け入れているドイツも大変だろうと思う。だが、ドイツを上回る経済規模を持つ日本にはなぜ来ないのだろうか。
本日みたNHK「持論公論」ではその理由を明らかにしていた。要するに日本は難民受け入れにきわめて冷たいのだ。シリアからの難民申請が63人からあり、実際に受け入れられたのはわずか3人だという。ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどが数万人単位でシリア難民の受け入れを表明したという。主要国のなかでシリア難民を受け入れていないのは日本、韓国、ロシアだけだ、と国連の機関から批判されている。GDPの大きさから言って、この中で最も責められるべきは日本であろう。
ドイツが難民受け入れに積極的なのはナチス時代に多数の難民を生み出す戦争を引き起こした反省から来ているという。日本(安倍政権)は侵略戦争で大勢の難民と死者を生んだことを反省しておらず、本音は敗戦国という汚辱を晴らして聖戦だったと認めさせたい。だから今も難民を受け入れず、黙って嵐のすぎるのを待っているのだろう。

暗い嗜好を隠さない人々

2015-09-14 23:21:59 | 日常
2年ぐらい前のことだったかもしれない。私が通勤で利用している地元の駅で人身事故があった。自殺か事故か、どんな人が電車に轢かれたのか、まったくわからないが、とにかく私が仕事から帰る途中、その駅で下車したとき、ちょうど反対車線では線路に警察か駅員かが降りて片付けをしていた。横目でチラとみただけだが、大きなビニール袋に線路上に散らばった遺体の破片を拾って入れている。轢死というのはようするに遺体がバラバラに散らばるということなのだという残酷な現実があった。散らばった遺体の片付けをしなければならない人たちの苦労を思った。
しかし、バラバラになった遺体よりももっと恐ろしかったのは、ホーム上で遺体を片付ける様子を「鑑賞」している人がざっと30人ぐらいいたことだ。年齢は30代ぐらいで、男も女もいる。普段はエスカレーターを忙しそうに駆け上がったりしているような感じの人たちが、この残酷な場面をじっくり鑑賞し、スマホで撮影している人もいる。暗い嗜好を隠そうともしない人がこんなにいるとはまったくの驚きだった。