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日本の歪んだ就職市場 とうとう入社試験有料化に

2014-03-05 | Weblog

ドワンゴの入社試験有料化、その是非をどう考えるべきか

 大手IT企業のドワンゴの入社試験有料化に対して、厚生労働省が行政指導を行いました。入社試験に受験料を課すことについては様々な意見があるようですが、これはどのように解釈すべきなのでしょうか?

厚労省が行政指導を行った意図は?

 厚労省が行政指導を行った背景には、お金を払える人だけが採用試験を受けられるという状況が広がっていくことへの懸念があると考えられます。またネット上で賛否両論が戦わされたことも大きく影響しているでしょう。

 ドワンゴの受験料は2525円とそれほど高いものではありません。しかし、低額とはいえ、受験料を課す企業が増えてくると、何十社も受験する人にとっては大きな負担になってきます。お金に余裕のある人は多数の企業を受験でき、そうでない人は受験できる数が減るという事態が生じる可能性はあるといってよいでしょう。

 一方でドワンゴは地方からの受験生には受験料を免除するなど、機会の均等にはそれなりに気を配っています。また現実問題として地方からの受験生は莫大な交通費を自己負担しており、機会の平等を本気で確保すべきということであれば、むしろ地方と東京の格差の方が重大問題であるという考え方もあります。また大学受験では高額の受験料が社会的に認知されていることを考えると整合性が取れない面も指摘されています。私立大学の高額の受験料を払えず、受験を断念する地方の学生は大勢いるというのが現実です。

背景にある歪んだ就職市場

 受験料の徴収そのものが問題視されていますが、その背景にはやはり歪んだ就職市場という現実があると考えてよいでしょう。いくら就職難とはいえ、1人の学生が100社以上も受験するというのはやはり異常な事態です。採用側のニーズと学生側のニーズに大きなミスマッチがあり、それがこうした事態を招いていると考えられます。

 2013年の大学卒業者数は約56万人ですが、1990年と比較するとその数は1.4倍に増えています。しかし学生に人気の大手有名企業の採用枠は増えていません。かつては、大学の就職課や採用業務を委託された人材企業が、事実上、学生の振り分けを行っており、特定の企業に学生が集中するという事態はあまり生じていませんでした。ただし、こうした行為が一種の学歴差別を生み出していたとの批判があり、現在では誰でも好きな企業にエントリーできる仕組みになっています。そうなってしまうと一部の人気企業に学生が殺到する状況となり、ドワンゴのように応募する学生の数を制限したいと考える企業も出てくるわけです。

結局のところいつもと同じ議論になってしまうのですが、こうした事態が発生する最大の理由は、やはり新卒一括採用という日本独特の採用慣行があると考えてよいでしょう。学生の採用が随時、様々なルートで行われるようになれば、特定の時期に一部の企業にのみ学生が殺到するという事態は回避できると考えられます。また転職市場が活発になれば、新卒時の就職活動に対する過度な努力も必要なくなるでしょう。

 昭和の時代から日本では採用に関していろいろな社会問題(例えば「青田買い」など)が起こってきたのですが、そのほとんどが新卒一括採用、学歴主義、終身雇用という独特の雇用慣行を背景にしています。しかし、毎年のように批判されながらも、この雇用慣行は続いています。やはり日本人はこうした雇用慣行を心の底では望んでいるのかもしれません.3/5付 THE PAGE35


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