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安倍の戦争法案、15日に採決 数の力で押し切る与党(信濃毎日新聞社説) 

2015-07-01 | Weblog

社説:安保をただす 法案の採決 日程ありきの与党方針

7/3 審議を尽くすことなく、押し切ろうというのか。安全保障関連法案について、15日の委員会採決、16日の衆院通過を目指す方針を与党が固めた。日程ありきの姿勢が鮮明だ。

自民、公明両党の幹事長が会談し、確認した。

特別委員会での審議は週内に80時間を超えるとみられる。

与党はこれを採決の目安としてきた。

問われるのは時間でなく、審議の中身だ。

かみ合わないやりとりを重ねても採決を正当化する根拠にはならない。

衆院憲法審査会で参考人の学者がそろって法案を「違憲」としたのをきっかけに、審議の焦点は憲法との整合性に立ち戻った。ここにきて自民党勉強会での「マスコミを懲らしめる」といった発言をめぐっても紛糾している。

関連法案は2本、うち1本は10の改正法案をひとくくりにしている。

集団的自衛権の行使、地球規模での他国軍支援、国際紛争後の治安維持活動など内容は多岐にわたる。

一つ一つ問題点を掘り下げる必要があるのに、精緻な議論ができる状況ではない。

審議入りから1カ月余り、いまだに分からないことだらけだ。

法案にある「存立危機事態」や「重要影響事態」とは、どんな場合を指すのか。

政府の説明は「全ての情報を総合し、客観的、合理的に判断する」などと、つかみどころのないものに終始している。

後方支援には「兵たんなしに戦闘はできない」「戦争の一環」といった批判が続く。

中谷元・防衛相は、空中給油機による米軍戦闘機への給油が可能になるとの認識も示している。

「他国の武力行使との一体化」を禁じる憲法解釈とつじつまが合うのか。

武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対処、国連平和維持活動(PKO)などの国際貢献の在り方を含め、議論を尽くすべき点はほかにも多い。

世論調査では、法案そのものについても、今国会での成立についても、「反対」との回答が多数を占める。

撤回や廃案、慎重審議を求める意見書の可決も地方議会で広がっている。

国民の理解は得られていない。

与党は、採決の前提となる中央公聴会を13日までに開きたい考えだ。

衆院通過の環境づくりを慌ただしく進めようとしている。

意見を聴いたという体裁を整え、数の力でごり押しするなら、政治不信をさらに深める。


社説:安保をただす 閣議決定1年 出発点の無理が鮮明に

7/1 新たな憲法解釈の閣議決定から、ちょうど1年になる。

「集団的自衛権が現行憲法の下で認められるのか、そうした抽象的、観念的な議論ではない。国民の命と平和な暮らしを守るため現行憲法の下で何をなすべきかの議論だ」

安倍晋三首相は昨年7月の記者会見で強調していた。

今、その正当性があらためて問われている。集団的自衛権の行使容認を「憲法違反」とする指摘が絶えない。出発点に無理があったことを示す展開だ。

閣議決定以来、政府は「憲法解釈の基本的な考え方は何ら変わらない」と繰り返してきた。これに対して、憲法学者ら多くの専門家が「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」などと異を唱えている。

どんな場合に集団的自衛権を行使するかは依然、曖昧だ。

首相は「海外派兵は一般に許されない」とした上で、中東での機雷掃海を例外に挙げる。唯一の事例かとの問いには「安全保障において『これが全て』と言うことは差し控えたい」と、将来の拡大に含みを残している。

政府の判断で武力行使を制約なく広げられるなら、憲法は無いも同然になる。

1年前、首相は「今後とも丁寧に説明を行いながら、国民の理解を得る努力を続けていく」としていた。言葉とは裏腹に論点をすり替えるような発言が目立つ。

自衛隊員のリスクが高まるとの指摘に「木を見て森を見ない議論が多い」とした。「戦争に巻き込まれるとレッテル貼りのような議論が行われるのは大変残念だ」とも述べている。海外活動を拡大する法案への当然の懸念なのに、正面から答えようとしない。

これで国民の理解を得られるはずがない。世論調査では「十分に説明しているとは思わない」との回答が8割を超えている。

中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発をはじめ、日本を取り巻く環境が変化しているのは確かだ。国際社会もテロや紛争などさまざまな難題を抱える。

防衛上どんな課題があり、どう対処すべきなのか。国際社会の平和や安定にどう貢献したらいいのか。本来なら国民的な議論を深めるべきなのに、国会で堂々巡りが続く。論理的に説明できない法案がまっとうな論議の妨げになっていることを政府は認めるべきだ。


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