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年末からお正月にかけて、何かと大きなエビを使います。お金がなかった頃は小さなエビでした。香港では、小エビは近海で捕れます。炒め物にしたりするのはその小エビで充分です。というより、近海物の小エビはとても美味しい。香港の中華料理にエビがふんだんに使われるのは、そうした背景があります。大きなエビはというと、これは香港より南の東南アジアからの輸入ものです。立派な伊勢エビ、オマール、何でも空輸で入ってきます。生きたまま空輸されるエビたちが梱包から出てくるところを見たことがありますが、まるで、真綿に包まれた宝物のような状態です。これらの大型エビより小さいものも、冷凍で入ってきます。
アメリケーヌソースのことを知ったのは、かれこれ30年以上前のことです。東京の村上開新堂の山本道子さんの本で読みました。確か山本さんがアメリカにいる時の話で、ロブスターとも呼ばれるオマール海老を使って作られたアメリケーヌソースです。無駄のない文章から、残ったロブスターの殻から作られるソースとは、一体どんなものだろうと興味が尽きませんでした。でも、ロブスターをソースを作るほど買う余裕なんてありませんでした。
普通のブラックタイガーの殻が冷凍庫に溜まったとき、30年以上前に読んだ作り方を真似て作ったアメリケーヌソースです。年末から殻だけ蓄えても1キロ近くあります。オーブンでこの殻を焼く方法もあるのですが、ちょうど、オーブンの中ではパンが発酵している最中です。 そこで、厚手の鍋に入れて強火で色が真っ赤に変わるまで乾煎りしました。乾煎りしながら、ガシガシと殻を潰します。
色が真っ赤に変わると小麦粉を入れ、また、ガシガシ。木しゃもじを直角に立てるような感覚です。ここに、トマトペーストを入れて、まだガシガシ。本来はここで、魚からとったストックを入れるのですが、ありませんから、ひたひたに水を入れました。肉のソースを作る時は、何時間も煮込みますが、こうした魚介類は40分も煮れば充分です。
これを漉せばソースの出来上がりです。肉類と違って、細かな殻の破片やひげなどが入っています。目の細かい、 シノアと呼ばれる、こういう円錐形の漉し器で漉します。漉しながらも、ガシガシ、無駄なく美味しいところをいただきます。見出し写真が、漉しているところです。
このソース、パスタソースとしても白身魚のソースにも使えます。
いつでしたか、前菜に、ビスクというスープをいただいたことがありました。赤に近いオレンジ色のスープに、エビとカニの身がほんの少し入ったスープでした。とても美味しく、前菜ですが、おかわりをしたくなったほどでした。その後、ビスクにつて調べると、作り方はアメリケーヌソースとほとんど変わりがありません。とろみを付けるのに、お米を使うか小麦を使うかが、一番大きな違いだそうです。
品のいいオマールからとったソースではないので、やや野性的なエビの香りがします。うっかりして、チャック袋に入れて冷凍庫になおしてしまったので、写真がありません。さあ、ビスクにするか?パスタソースにするか?楽しい悩みが待っています。