雨、25度,91%、シグナル8
自分の読んだ本のことを書くのには,随分と抵抗がありました。本を選ぶ,それを読む,すっかり自分がさらけ出てしまいそうです。ですから,もっぱら本に付いて書くのは、装幀のことが多かったように思います。しかも,ここ15年ほどは,出来るだけ英語の本を読むことを心がけてきました。洋書は香港にいれば,日本より安く,豊富に手に入ります。主人に,格好ばかり付けるな,といわれ続けても諦めません。幾人かの現代作家のものは、新刊を待って読むようになりました。日本の本を売っている本屋も,香港に数件ありますが,まず,随分と値段が高めです。しかも,日本語ですから,あっという間に読み上げてしまいます。
この数ヶ月,身辺が何となく落ち着きません。いえ,よく考えれば,今年に入って私の周りは流れが変わって行くような,変化が起きています。こんな時でも,なぜか本を側に置いています。主人が私にと買って来てくれた本、主人が自分で読んで面白いからと,読め読めという本、なんだか本棚にある主人の本で気になっていた本,読み始めたら,ベットにひっころがって,1日とかからない本ばかりです。
「みちくさの名前。」雑草図鑑 吉本由美
ずーっと昔,大橋歩さんのアシスタントをなさっていた吉本由美さんの本です。猫が好き、旅行好きのこの人の本はいつも本屋で立ち読みでした。この本は主人が,花の名前を覚ることが出来ない私にお土産です。人に本を頂くと,何より先に読まないと申し訳ないと思ってしまいます。そこで、読みかけの本を差し置いて読むことに。人から頂く本は,最初の選ぶ時点での視線の違いから,自分とは違った選択なので,時には得難いものがあります。主人の思惑通りに行かず,いまだ花のの名前を覚えることは出来ません。日本に帰ったらこの本片手に散歩しましょう。
主人が読め読めと仰った本。日本を縦断して,日本の食文化をイギリス人一家が体験する話です。東京、京都の項目が多いのは解りますが,もっと地方料理にも目を向けて欲しかった本です。福岡の博多ラーメンも一項目割かれています。フンフン,博多ラーメンは確かに語れば,福岡の人は10人が10人,違う自分たちの思い込みを語ってくれるような食べ物です。香港でも,日本のラーメン屋のブームで我が家の下の一帯だけでも,20軒近くのラーメン屋があります。しかも,香港人に人気なのは博多ラーメンです。お昼時長い長い行列を作って食べてくれています。ありがたい。
主人が読んで本棚にあった本です。藤沢周平の本は,こうした実話を元にしたものも,フィクッションも30代後半に随分読みました。この方の書く本は,いつもいい余韻が残ります。本棚にあるこの本の「漆」の字に惹かれて読みたい読みたいと思いつつ,やっと,ベットに持って上がりゴロンと読み始めました。東北の漆に興味があります。私が思っていたような漆の情報は手に入りませんでしたが,久しぶりに藤沢周平の世界にどっぷりと浸かりました。
作家も画家などものを作る人は、その人の人柄が反映されます。そして,人柄はお顔にも出てくるように思います。時折、作家の顔写真を見て、もうこの人の書くものは読むまいと思うようなことがあります。ある女性作家、お顔が好きではありません,そこで,その人の書くものは,どんなに評判でも読みませんでした。あるとき,その方が香港にいらしていたのでしょう。偶然にもホテルのロビーで見かけました。たくさんの連れの方に接するその女性作家を見て,あー、この人の書いたものを読まずによかった。としみじみ思ったことがあります。顔で決めることは私の悪いくせです。藤沢周平さんの風貌は,やはりあの余韻ある世界を作り出しているものと共通していると思います。