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自分の名前を雪輪模様の中に篆書で彫った小さなツゲのはんこを作ってもらったのは、3ヶ月ほど前のことでした。苗字ではありません,名前を彫ってもらいました。小さいはんこですから,篆書で書いた私の名前など判別付きかねます。それでも嬉しいので,本の裏に蔵書印みたいにポンポン捺します。手紙の封筒にもポンポン。そしたら,主人が今度は猫の後ろ姿のはんこを日本から買って来てくれました。
香港に来て以来,はんこを捺すのは、お月謝袋に領収の判を捺すときだけでした。朱肉は日本いる時から使っていた、ケースに入ったスポンジのような朱肉です。30年ほど一度も補充していませんが,まだしっかり使えます。普通,はんこを捺した物は、人様の手に渡ります。役所に提出したり、銀行の窓口で渡したり、つまり手元には残りません。
本の裏に捺した名前のはんこを見ていると、何となく気になることがありました。朱肉の色です。深みのない朱色,今まで気にならなかった朱肉の色が気になり始めます。朱肉はもともとは中國伝来の物です。筆や墨を売っている専門店に行けば朱肉があるとは解っているのですが,時間がないまま、先日文房具屋で見つけたのが,朱泥。スポンジタイプの朱肉ばかりの中に、ポツンと上海製造の小さな缶がありました。中を確かめたくても,セロテープで封がしてあります。家に帰り開けてみると,昔ながらの朱肉でした。
まだ朱肉が作られる前は,泥を使って判を捺していたと聞いたことがあります。きっとその名残で,朱泥と呼んでいるのでしょう。スポンジタイプの物と捺し比べてみました。 色の違いが解るでしょうか? 朱泥の方が,深みがある赤です。朱色というから、黄色がかった赤なのでしょうが,私は朱泥の赤の方がしっくりと感じます。朱泥は,赤い色素に松脂やヨモギ,和紙を塗固めた物だそうです。そういえば,昔の朱肉は独特な匂いがありました。松脂やヨモギの混ざった匂いだったのかも知れません。
この朱泥,とってもお安い物です。書道具専門の店に足を運んで,また違った朱色に出会いたいと思っています。