晴れ、16度、福岡
少し冷えて来た朝の匂い。金木犀の匂い。空気が澄んで来るからでしょうか、夏とは違って、匂いに敏感になってきます。食べる物も、松茸や栗、やはり香りが楽しみです。
イヤーな匂いですが、私にとっては、これも秋の匂い。銀杏です。大きな樹齢が解らないくらい古いイチョウの木が夏にはいい木陰を作ってくれる、実家の菩提寺。寺の裏手の墓地に廻った途端、まだ、緑の葉を付けたイチョウが4本見えます。燃えるような黄金色に色付くには、後ひと月以上もかかりそうです。ところが、足元にはもう一杯の銀杏です。
小さい時から、この匂いは大嫌いです。雨の後なんて、実がつぶれてグッチャリとなって、匂いもひときわ悪くなります。でも、この道しか、墓に通じる道はありません。避けて通れない場所です。踏むのもいやだから、つま先だって歩きました。
あのおいしい銀杏が、この臭い実の中にあると知ったのは、随分大きくなってです。白く堅い銀杏を買って来ても、まだ、匂いは付いています。ところが不思議なもので、主婦になり、子供を持つと、まあ、なんと強くなる事か。この臭い銀杏を一杯拾って、家の裏で水に漬け、実をとって銀杏にします。食べれるまで、一週間ほどかかります。
幼稚園の頃の息子を連れて、銀杏をとったのは、このお寺ではありません。どりこの坂、という面白い名前の坂の下でした。拾っているうちに、日がくれて肌寒くなったものです。
今年のお寺の銀杏、小さいですね。実の付いた銀杏、いまも好きな匂いではありません。でも、私には、思い出のある秋の匂いです。