『脳を創る読書』 実業之日本社 酒井邦嘉 著
本書の著者は、言語脳科学の第一人者といわれる酒井邦嘉さんです。
著者によると、読書は脳の想像力を高めるといいます。ここで言う「想像力」とは、「自分の言葉で考える」ということです。
人間の脳に対する入力の情報量は、「活字→音声→映像」の順で増えていきます。
活字<音声<映像
反対に、想像力で補わなければならない情報量は、これとは逆の順番になります。
活字>音声>映像
つまり、入力の情報が「活字」「音声」「映像」で与えられ、受け手が同じ内容を理解したとすると、脳に入力された情報が少なければすくないほど、想像力で補われる部分が大きくなります。
本書では、面白い例をいくつか挙げて説明されていますが、一つ紹介します。
妻「あなた、私のことを疑ってるの?」
夫「そうじゃない」…(A)
妻「今年の夏も暑いかしら」
夫「そうじゃない」…(B)
妻「あなたって、いつもそれしか言えないの?」
夫「そうじゃない」…(C)
著者の解説を次に引用します。
――(A)は活字で読んだり、ドラマなどの音声だけを聞いたりしても、「否定」というのはわかるだろう。(B)は、冷夏の長期予報がない限り、夏はとかく暑いと予想されるので、活字を読んだだけで迷わず「肯定」と受け取れるだろう。しかし、字面は(A)と(B)は全く同じだ。それでも両者を区別できるのは、過去の知識や経験などからの想像であり、足りない情報を補いながら文章を読んでいるためだ。
しかし、(C)のようにもっと曖昧な場合は、肯定なのか否定なのか活字だけではわかりにくい。この人物がプライドの高い人なのか、ひょうきんな性格なのかによって、解釈がかわってくる。
一方、この文章を朗読するときは、「そうじゃない↘(語尾を下げる)」、「そうじゃない↗(語尾を上げる)」というように、語尾のイントネーションで明確に否定と肯定を区別することがもとめられる。黙読の際にも、読者の多くは、「頭の中で響く」イントネーションの違いを自覚できていたと思われる。
以上見てきたように、入力の情報量は活字より音声のほうが優り、逆に想像力で補わなくてはならない情報量は、活字のほうが音声より優るのである。――
「読む」ということは、単に視覚的にそれを脳に入力するというのではなく、足りない情報を想像力で補い、曖昧なところを解決しながら「自分の言葉」に置き換えていくプロセスであり、それは、人間だけに与えられた驚くべき脳の能力に支えられていることがお分かりになったと思います。
ちなみに、本書の内容は、次のようになっています。
第1章 読書は脳の想像力を高める
第2章 脳の特性と不思議を知る
第3章 書く力・読む力はどうすれば鍛えられるか
第4章 紙の本と電子書籍は何がどう違うか
第5章 紙の本と電子書籍の使い分けが大切
以上
本書の著者は、言語脳科学の第一人者といわれる酒井邦嘉さんです。
著者によると、読書は脳の想像力を高めるといいます。ここで言う「想像力」とは、「自分の言葉で考える」ということです。
人間の脳に対する入力の情報量は、「活字→音声→映像」の順で増えていきます。
活字<音声<映像
反対に、想像力で補わなければならない情報量は、これとは逆の順番になります。
活字>音声>映像
つまり、入力の情報が「活字」「音声」「映像」で与えられ、受け手が同じ内容を理解したとすると、脳に入力された情報が少なければすくないほど、想像力で補われる部分が大きくなります。
本書では、面白い例をいくつか挙げて説明されていますが、一つ紹介します。
妻「あなた、私のことを疑ってるの?」
夫「そうじゃない」…(A)
妻「今年の夏も暑いかしら」
夫「そうじゃない」…(B)
妻「あなたって、いつもそれしか言えないの?」
夫「そうじゃない」…(C)
著者の解説を次に引用します。
――(A)は活字で読んだり、ドラマなどの音声だけを聞いたりしても、「否定」というのはわかるだろう。(B)は、冷夏の長期予報がない限り、夏はとかく暑いと予想されるので、活字を読んだだけで迷わず「肯定」と受け取れるだろう。しかし、字面は(A)と(B)は全く同じだ。それでも両者を区別できるのは、過去の知識や経験などからの想像であり、足りない情報を補いながら文章を読んでいるためだ。
しかし、(C)のようにもっと曖昧な場合は、肯定なのか否定なのか活字だけではわかりにくい。この人物がプライドの高い人なのか、ひょうきんな性格なのかによって、解釈がかわってくる。
一方、この文章を朗読するときは、「そうじゃない↘(語尾を下げる)」、「そうじゃない↗(語尾を上げる)」というように、語尾のイントネーションで明確に否定と肯定を区別することがもとめられる。黙読の際にも、読者の多くは、「頭の中で響く」イントネーションの違いを自覚できていたと思われる。
以上見てきたように、入力の情報量は活字より音声のほうが優り、逆に想像力で補わなくてはならない情報量は、活字のほうが音声より優るのである。――
「読む」ということは、単に視覚的にそれを脳に入力するというのではなく、足りない情報を想像力で補い、曖昧なところを解決しながら「自分の言葉」に置き換えていくプロセスであり、それは、人間だけに与えられた驚くべき脳の能力に支えられていることがお分かりになったと思います。
ちなみに、本書の内容は、次のようになっています。
第1章 読書は脳の想像力を高める
第2章 脳の特性と不思議を知る
第3章 書く力・読む力はどうすれば鍛えられるか
第4章 紙の本と電子書籍は何がどう違うか
第5章 紙の本と電子書籍の使い分けが大切
以上
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