モルツーの日々@競馬と本と日本史他

本が好きな書店員(出版社営業部から書店員に出戻りました)。史跡巡りの写真を素敵に撮りたい。馬も好き。

新刊紹介『天皇陛下「生前退位」への想い』『日本人が知らない「天皇と生前退位」』

2016年10月31日 | 新刊紹介

2年ほど前までかなり頻繁に頑張っていた「気になる本を1日1冊」というカテゴリー。
書店員に戻ったらそんな欲求も薄れるのかなぁと思っていたのですが、むしろ増してしまっております。
店に居ると、お店に来てくれるお客様にしかアピールできないんですよね、面白そうな本があっても。
そこで、この「伝えたい欲求」を満たすため、ちょいと時々このカテゴリーで投稿させていただこうと思います。

「こんな本出てますよ!」のお報せです。

天皇陛下「生前退位」への想い
保阪 正康
毎日新聞出版

「生前退位をほのめかすお言葉」があった時に、これは当然、関連書籍が出てくるだろうなと思っていましたが、書籍としてはようやく出てきたという印象です。
著者は、やはりというかなんともしっくりくるカンジの保阪正康氏。
「サンデー毎日に短期集中連載中の「天皇陛下『生前退位』を解読する」に加筆して単行本化」だそうで(amazonの内容紹介より)、「お言葉」の奥にある気持ちとか思惑とかが解説されているようで、読み応えがありそうです。
2016/10/28発売。

日本人が知らない「天皇と生前退位」
八柏 龍紀
双葉社

一方、こちらは今上天皇だけに留まらず、歴代の(つまり歴史上の)天皇についてにページを多く割いているもの。
歴史上の天皇の「生前退位」は半数以上になるんですね。
今上天皇のお気持ちをもっと詳しく知りたい場合は1点目の『天皇陛下「生前退位」への想い』の方がオススメですが、日本史にあまり詳しくないかたにはこちらの『日本人が知らない「天皇と生前退位」』がオススメです。
こちらは新書サイズに近い大きさでソフトカバーなので、とっつき易いかと思います。
2016/10/26発売。



*当記事は、私が店頭で気になった書籍を取り上げています。読了した上で書く「ブックレビュー」ではない点、紛らわしくてすみません。ただ、ここでピックアップしたことで「こんな本があるんだ!」という出会いに繋がったりなんかしちゃったら幸甚です。


読了レビュー『貧困 子供のSOS - 記者が聞いた、小さな叫び』

2016年10月07日 | 書籍紹介と読書記録
貧困 子供のSOS - 記者が聞いた、小さな叫び
読売新聞社会部
中央公論新社


「貧困」という言葉を、よく見聞きするようになった。
よく見聞きするようになったことで、逆に何の引っ掛かりもなく聞き流してしまっているような気がする。
一日一食しか食べさせてもらえない子供。
酷い場合には一食も食べられない子供。
服を買ってもらえない子供。
周りの子がみんな持っている物を持てずにいる子供。
「貧困」の影響を受けると、子供達は「未来への希望」を失ってしまい、さらなる貧困スパイラルに陥ってしまうのだという。

本書では、そんな「子供の貧困」にスポットライトをあて、子供自身への取材をメインとしている。
読売新聞で連載記事に加えて、そこには載せ切れなかった周辺の事柄にページの大半が割かれていて、大変興味深い。
取材をしている間の子供の様子や、親の言葉、彼らと関わりをもっている支援団体者からのコメントなど、とてもリアルに雰囲気が伝わってきた。
また、一節一節は簡潔にまとめられているため、とても読みやすい。
その分やや物足りなさを感じなくはないが、子供の貧困問題を考えるための入口の一冊として、お勧めできる。

「貧困」の問題点は、直近の生活もさることながら「この先、自分の人生はどうなるのだ」という不安感だと思う。すでに社会に出ている大人でもその不安感に囚われると夜も眠れなくなるだろうに、その人生においてまだ「将来」しか無いような子供にとっては、「未来への希望」がどんなものかも知るチャンスが無いままに無気力になってしまうのもむべなるかなと思う。

私自身は子供が無く、どちらかというと客観的な視点で本書を読んだが、だからこそ、貧困が子供に与える影響は「虐待」と呼べる事柄だろうと納得し、危機感を覚えた。
一個人では大したことはできないが、何か小さなことでも行動を起こしたいと思うし、本書を読んで行動を起こす人が増えていけば良いなと願う。

「貧困」が子供に与える影響がリアルに伝わってきた。「生活保護は甘えだ」と思う人にもぜひ読んでいただきたい。


読書記録2016年7月

2016年10月04日 | 書籍紹介と読書記録

2016年7月は2冊。
念願の書店員に戻り、立ち仕事にカラダが付いていかずに居た頃です。

 

まっ直ぐに本を売る―ラディカルな出版「直取引」の方法
石橋毅史
苦楽堂

主にトランスビューについて書かれた本。
当たり前なことをフラットな感覚で行っているだけなのだと感じられて、驚いた・・・なんてことはあまり無かった。
自分の腕に収まる範囲のことを、無理なく行っているカンジのトランスビューという存在。
でもその有り方はとても全うで、大きくなりすぎた現存の取次ぎの方が無理あるシステムなのではないかと思えてしまった。
「業界再編」の気配を感じながら働いているが、こういった存在が増えていくのではとも思う。



無私の日本人 (文春文庫)
磯田道史
文藝春秋

読みたいなーと思っていたら、ダンナが買ってた。
ラッキー。
羽生結弦が「殿」役で出てることでも話題の映画「殿、利息でござる!」の原作本(小説ではないが)。
この著者は、知られていない史料から、当時の人間の営みを再現して我々に見せてくれる。『武士の家計簿』で感服した覚えがある。
本書もそのチカラは健在で、とある東北の村で、村人達が村の将来を考えて自分達のアイデアで行動していく姿に衝撃を受けました。「お上任せ」でない人達は、ちゃんと当時も居たのだなと。
映画はまだ観ていないのですが、羽生クンはこの役だろうなーという「殿」もちゃんとかっこよく登場。
ちなみに、映画とは別のエピソード2編も収録されているが、その2編を含めて『無私の日本人』というタイトルなのだと感じさせられた。


以上、2冊でした。