城主になった女 井伊直虎 | |
梓澤 要 | |
NHK出版 |
「大河ドラマ主人公、柴崎コウ氏主演」と聞いて、打ち震えた女子(おなご)は私だけではないはずだ。
そんなキャスティング、かっこよすぎるじゃないか、と。
その時に想像した直虎さんのイメージは「芯のしっかりとした女性」であって、男勝りで武器を振り回す「男に混ざる系」のイメージでは無かった。
本書を読んで、彼女がイメージ通りの「芯の強い系女子(じょし)」であるらしいと想像できて、とても嬉しく思っている。
特に、出家時のエピソードが揮っていた。
許婚・亀之丞の親が戦国の争いによって命を狙われ亀之丞自身も遠方に逃げ落ち延びるのだが、それを知った直虎は、「出家する」と言い張り、親にも相談せずに馴染みの寺へ行って出家してしまう。
この時、直虎はまだ8~9歳くらい。
9歳の女の子が許婚の状況を理解し、剃髪してしまう。
しかも、それを知った両親が嘆きに嘆いて「どうか名前だけは尼の名前ではなく今のままで」と言っても本人は頑として「どうか出家した者として尼の名前を付けてください」と、その馴染みの寺の和尚に懇願したとのこと。
困った和尚さんが付けた名前が、井伊家の嫡男に付けられる「次郎」という名と、僧侶であることを現す「法師」を合わせた「次郎法師」という名前だったというのだが、10歳未満の女の子が大人達を困らせながらも凛として己の主張を通しているあたり、今からドラマでこのシーンがどう描かれるのか楽しみで堪らない。
本書の作者は、2006年に井伊直虎の小説を出している。(『女にこそあれ次郎法師』*2016年に文庫化)
現地を訪れ、その地の史料も読み込んでいるようで、とても骨太な取材に基づいて「直虎像」を作り上げているようで信頼がおける。
井伊家といえば、ひこにゃんの彦根城のイメージがあるが、そもそもは浜松市、浜名湖の少し北側の「井伊野」あたりだったとのこと。
彦根と併せて、直虎巡りをしてみたくなった。
NHK出版から今年(2016年)8月に出版された本書。
当然ながら、2017年大河ドラマを意識して作られていると思われる。原案本では無いが、巻末には「ゆかりの地紹介」も掲載。毎週本編後に放送される「あの部分」を彷彿とさせる。
「真田丸」がいよいよ佳境にさしかかる中ではあるが、来年の大河ドラマが待ち遠しいかたへぜひお勧めしたい。
犯人に「声」を利用された子供と同世代と思われる作者の「子供を事件に巻き込んだことへの憤り」が感じられた。