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モルツーの日々@競馬と本と日本史他

本が好きな書店員(出版社営業部から書店員に出戻りました)。史跡巡りの写真を素敵に撮りたい。馬も好き。

『いのちの初夜』北条 民雄

2015年10月27日 | 書籍紹介と読書記録
短い小説だったが、身体に残る小説。

ハンセン病になり療養所に来た患者の絶望と、そこからの再出発を模索した物語。
療養所に来た初日の夜だけを描いていて短い。

偏見や差別の具体的なドロドロしたやり取りの場面が出てくるようなことはなくサラリと読めてしまうのだが、患者たちの心情を想像すると、病の恐ろしさや生命について深く考えこんでしまう。

ハンセン病患者の実状を書き遺していて意義深いうえに、短く纏めながらも読者に対して物凄く重たいモノを渡していて、文学作品として秀逸。


読了日:2015/07/12

『火花』又吉 直樹

2015年10月26日 | 書籍紹介と読書記録
なるほどこれは芥川賞だ。

純文学ジャンルは文芸棚の中で地味な印象があるが、知名度が高い上に中身の伴っている、素晴らしい純文学作品が登場していたのだと、受賞をきっかけに読んでみて遅れ馳せながらようやく知った。
単語の使い方や文章のテンポも良いし、登場人物たちの「漫才師」という生き方を通して人間の内側を描き出していて、これぞ現代の文芸作品だと思う。

「芸人が書いた話題作でしかない」と喰わず嫌いしている人にこそ強くオススメしたい。


読了日:2015/07/18

『ふしぎの国のバード 1巻 』佐々 大河

2015年10月22日 | 書籍紹介と読書記録
明治になりたての日本を「江戸時代の日本」を探して旅をした女性冒険家イザベラ・バード。

どんな御一行様かと思いきや、バードと通訳の二人だけ!東京から日本海側を通って北海道に至る行程に挑む彼女。

カッコイイです。

本書もとてもテンポ良くまとてめあって読みやすくて、バードファンが増えるんじゃないかなーと。
基本的なスタンスとして日本の文化を尊重してくれているバード(原著では罵詈雑言も有るには有るみたいですが)。
現代日本人に当時の文化風習を伝えてくれた功績は大きいと思います。


読了日:2015/07/05

『残心 世界のハンセン病を制圧する』笹川 陽平

2015年10月21日 | 書籍紹介と読書記録
日本では「凄く少なくなってるし罹ったとしても治せる病」であるハンセン病。
しかし、世界にはまだ現在進行形で罹患する人が居て、昔と変わらず差別対象になっている現実があるのだと知ることができた。

その現実を変えるため、笹川財団が行ってきたこと。
本書内では、著者である笹川氏の自慢も多少見え隠れするが、どうであれ現地に赴いて患者や元患者と直接話しをして、ハンセン病をどうにかしようとしているその心意気は素晴らしいと思う。


読了日:2015/07/26

『“ひとり出版社”という働きかた』

2015年10月20日 | 書籍紹介と読書記録
ひとり出版社として広い海を進んでいる人たちの話に、勇気をもらえた。
私が目指すのは本屋であって出版社ではないけれど、こんなふうに、不況な業界でもやりようはあるのだと知ることができて嬉しい。

インタビューの内容は、出版業界に限らない「生き方」の部分にスポットを当てている力加減なので、「ビジネスインタビュー集」として業界外にもオススメできるかと。
売ることへの情熱も感じられて、書籍営業のエネルギー充填させてもらったカンジ。


読了日:2015/08/01

『物乞う仏陀 (文春文庫)』石井 光太

2015年10月19日 | 書籍紹介と読書記録
『遺体』(東日本大震災を取材したルポ)の筆者による、アジアにおける乞食の実際の姿を取材したノンフィクション。
筆者の一人称で、感情も混じえつつの文章なのでとても読みやすい。「乞食はかわいそう」などと浅いところで思考停止にとどまらない著者について行くことで、貧困や障害から乞食になる人々の現実の姿を垣間見ることができた。
「現在」の「日本」で衣食住足りて生活出来ていることは、世界の視点で見れば凄くラッキーなことなのだと謙虚に受け止めたい。
読もうと思ったきっかけは世界のハンセン病のことを知りたかったからなのだが、その章は文庫での加筆部分だとのこと。文庫版で得した気分。

読了日:2015/08/08

『アルスラーン戦記(4) 』荒川 弘(講談社コミックス)

2015年10月18日 | 書籍紹介と読書記録
荒川弘作品と田中芳樹原作はとても相性が良いなぁとシミジミした。
両者のプロフェッショナル感が合致していると言うか。
この4巻での、ファランギースの部屋にギーヴが窓から訪ねるシーンのコメディ的な「間」の良さとか、もう最高だと思う。
漫画家が原作のことを深く理解してその良さを損なわない形で咀嚼してあって、なんていうか、「昔ハマった作品をこんな素敵な形で再度楽しませてくれてありがとうー!!!」な気持ちで一杯です。幸せだー。

読了日:10/11

『馬語手帖―ウマと話そう』河田 桟

2015年10月13日 | 書籍紹介と読書記録
馬のテンポはニンゲンとは違うんだよね、など、分かってるようでなかなかハッキリとは意識しないでいる事柄を、改めてハッキリ提示してもらえた気がする。
イラストも可愛くて、乗馬に行く前後に読み返しまくろうと思う。

本の背の下に居る小さな馬マークがめちゃめちゃカワイイ。

読了日:2015/08/08

『重版出来! 6 』(ビッグコミックス)松田 奈緒子

2015年10月11日 | 書籍紹介と読書記録
オムニバス的な構成で、とてもスッキリと読めた今巻。
漫画家の卵さんたちの葛藤に涙し、過疎地個人書店の苦労とやり甲斐に心打たれ、校閲部署のプロフェッショナルな仕事ぶりに憧れ、これモデル居るだろうな~と思ったらオマケ漫画でやはりな展開だったり。
中でも、周りに心を許さない漫画家卵さんがとあることで慟哭するシーンにはかなり涙腺持ってかれた。
また、ウェブ漫画で使い捨てにされる漫画家さんも居るのかなぁと考えこんでしまったり。

「出版業界モノ作品」がある中で、内輪ウケに留まらずちゃんと面白い作品になっている。


読了日:10/11