たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

まさかの台風接近の奄美大島へ。

2019年07月23日 | 奄美の山と滝
◎2019年7月18日(木)~20日(土)

 別に好んで台風5号の接近に合わせて奄美大島旅行に出かけたわけではない。出発日前日の朝に妻から「台風が発生したみたいよ」と言われ、その時点では、他人事のあっそうで終わったが、午後になってから気になってネットで調べるとかなりヤバい天気図になっている。これって沖縄、奄美直撃じゃないの。もはや明日のこと。今さらツァーのキャンセルもできず、成り行きに任せるしかないと腹をくくったが、正直のところ飛行機が半端に飛ばれても困る。むしろ欠航になって欲しい思いも出てくる。そうなったら、旅行代金は全額戻ってくるのだろうか。
 話はちょっとややこしくなる。自分が今いる会社に同部署の同僚はいない。前橋の本部にはいる。つまり、所属部署の人間としては太田駐在員のような存在だ。だから、外に出ても中にいても仕事上の監視の目はないから好き勝手なことができるし、売り上げを求められる仕事でもないので、業務日報もズサンなものになったりする。だが、一人だからゆえの不自由さがある。他部署のルームで居候になり、形の上ではその部署の長に各種の届け出をしなければならないし、その部署の仕事も手伝わないといけない。ここのところ頻発している休日出勤理由の大方はこれだ。
 勤め先の会社には、今時そんなと思うような社員旅行という制度がある。これは自由参加だが、昨年の場合は営業部に同居していて、旅行に行かない者は休暇を取れと言われて休んだ。今年は23、24日がそれにあたる。だから、奄美大島の旅程も23日から25日で予約し、支払いも済んでいた。ところがだ。5月から別の部署に引っ越しさせられていて、その部署の仕事は年中無休。長に休暇届けを出すとあっさりと却下されてしまった。事務所が手薄になるからダメとのこと。その当人は社員旅行に行ってのゴルフを楽しみにしている。この部署の仕事に、こんな時には何でオレが頼られるのか理不尽な話だ。
 却下されたのでは仕方がない。旅行社に変更の連絡すると、日程の変更はできず、キャンセル、新規申し込みという段取りになるとのことで、15%のキャンセル料を取られてしまった。まだ送金の余裕もあったのにさっさと払ってしまったのがわざわいした。今度は18日から20日の休暇届けに長が印鑑を押したのを確認してから送金した。
 まぁ、こんなことで今回の日程になったわけだが、これに台風が直撃しそうな気配になり、すっかり意気消沈した奄美旅行への旅立ちになってしまった。

 ツァーとはいってもいわゆる格安ツァーで、団体行動をとるわけではなく、飛行機と宿とレンタカーの手配があって、いくつかのオプションを自分で選択できるといったもので、そんなのは旅費込みだし、すべて選ばないと損ということになるが、2泊3日、一人で行くのでは、ハブのショーやら大島紬の泥染め体験、島のグルメを堪能したところで、3泊ならともかく、2泊でそんなムダな時間を費やして何になるといった気分が強く、マングローブカヌーのオプションだけを選び、あとはきれいな海と滝めぐりにせっせと励むつもりでいた。ちなみに海に潜ったりする趣向は自分にはない。あくまでも眺めて歩いて満足するだけ。この台風接近情報で、東シナ海のコバルトブルーの海は絶望的になった。15日に現地のレンタカー屋に送った荷物の中には沢タビや海パン、ビーチサンダルも入れていた。

【一日目・18日】
 格安ツァーゆえか(とはいっても余計なキャンセル代を考慮すると決して安価ではなくなっていたが)、航空会社は成田発のVanilla Air。そういえば聞いたことがあるといった航空会社だ。外国籍と思っていたが、日本の航空会社だった。しかも、成田は成田でも第三ターミナル発で、そんなターミナル、あったっけと首を傾げたが、太田から成田空港行きのバスの停留所には確かに第三ターミナルも含まれていた。新しいターミナルなのだろう。後で調べると、第三ターミナルはLCC(Low Cost Carrier)、つまり格安航空会社向けの発着ターミナルだった。これにはVanilla Airよりは知っていたJetstarなんかも含まれるが、SkymarkはLCCではないらしい。LCC扱いの航空会社はそれなりの基準があるようだ。
 このLCCと第三ターミナルについては、往復ともにまさかと思うことがかなりあった。まずは第三ターミナルには驚いた。ここは国際線の発着もあるのに相当に歩く。下車したバス停からカウンターまで10分以上歩いたし、電車利用だと第二から歩かないといけないらしい。階段を使うのが多く、足の具合が本調子ではない自分にはかなり応えた。まして、どこにでもある動く歩道なんてものはなく、途中で立ち休みしたくらいだ。ターミナルの建屋は急造モロ出しで、これから整備するのか、骨組みが表面に出たバラック風の体育館のようだった。これが、来年のオリンピックまでに整備されるのだろうか。この状態では、およそこれが国際空港のターミナルなのかと疑ってしまう。LCC向けに見合って安っぽい。
 Vanilla Airは相当にマイナーらしく、その不便な第三の中でもカウンターはかなり奥にあった。ようやく着いてほっとして、まずは腰かけたかったがそんなベンチはない。ここまで差別化されているのかといった思いはこれで終わらず、帰着時にさらに驚くことになる。
 一人旅だったし、格安だからとわきまえ、バカにされたような気分は起きなかったが、万が一にもありえないものの、妻以外の女性を同伴していたら、財布の中を覗かれたようで恥をかきそうだ。

 奄美空港行きの便は運行していた。着陸不可能な場合は成田戻りという条件付きだった。それはそれで困ったもので、うまく奄美に到着したとして、今度は帰りの便に予定通りに乗れるのかが気になってくる。ずっとホテルで読書とテレビで過ごしましたではお話にもならない。おまけに、Vanilla Airの奄美便は一日一往復便だけで、これから乗る便が折り返しの帰路便になる。明後日、成田発便が欠航になればキャンセル待ちとなり、空港で少なくとも一晩は過ごすことになる。その翌日の日曜日は前橋で仕事がある。休暇の一日はその振替休暇にしているから、後の処理がややこしくなる。この時点では成田戻りを願う始末だった。
 LCCはこんなところでも差別されるのか、なかなか離陸しなかった。その前に追記しておくが、搭乗口から移動式通路で直に機内に入れるわけではなく、階段を下って空港敷地を歩いてから機内に乗り込む。これではローカル空港の風景と同じ。話を戻す。離陸の待機時間が長い。JALやらANA、第一、第二ターミナル発着の国際便が優先されるのだろう。奄美までは2時間ちょい。自分の座席が窓際で、隣席が空席なのが救われる。
 アテンダントの制服は普段着っぽい。シートの狭さは感じない。200人乗りまでいかない中型ジェット。機内サービスはまったくなし。シート前のポケットにメニュー表が入っていて、現金を出して缶ビールやらカレー、牛丼、カップラーメンを注文する形で、500円のコーヒー付きクロワッサンを食べたかったが、ズボンのポケットの小銭入れには200円しかなく、札入れは上の棚のバッグに入れているから我慢した。
 台風接近とは思えぬ雲上をしばらく飛んで、やがて横揺れがひどくなって、結局、奄美空港に無事に着陸。成田への引き返しはなかった。こうなったら台風の中で奄美を満喫するしかなくなった。どうにでもなれといった心境だ。
 空港には1時半に着き、そのまま空港近くのレンタカー屋で車を借りる。格安ツァーで一人だし、軽自動車でもあてがわれるのかと思ったが、日産NOTEだ。一応は満足。送った荷物を引き取り、いざ出発。その前に窓口の女性にコンビニのありかを聞くと、ここから車で20~30分はかかるらしい。奄美空港の周辺は閑散としていて、レストランどころか商い中の店や食堂すらなく、目につくのはレンタカー屋とそれ目当てのガソリンスタンドだけだ。コンビニの場所を聞いたのは腹が空いていたからだが、結局、この先、セブンやらローソンの看板のあるコンビニを見つけることはなく、地方でよく見かけるコンビニ風のひなびた店屋でアンパンを買って昼食代わりにした。
 雨は降っていないが風は強い。さも台風接近といった感じの黒い雲が上空を覆っている。まずの目的地は原生林マングローブパーク。ここで4時からのカヌー乗りを予約している。ナビをセットすると、空港から1時間半はかかる。寄り道の余裕はないなと思いながらもしばらく行くと、左に「明神岬展望台」の看板が目に入った。すぐそこだろうと行ってみた。

(明神崎展望台の入口)


(舗装道だが歩きに結構疲れる。湿気がすさまじい)


(展望台から)


(三角点)


(展望台から別方向)


 駐車場に車はない。車止めのゲートを越えて登る。コンクリの歩道が上に続いている。あれが展望台だろうとだまされるのが何度かあって、着いたところは展望台どころか、山のピークで三角点が埋め込まれていた。後で調べると、標高128.4m三角点・点名「アカスミ」とあった。湿気のせいもあって、かなりの汗だく。歩きに10分もかかってはいないが、30分は歩いたような気分になった。眼下には太平洋が広がっていた。波が荒い。きれいな入り江が淡く見える。
 台風接近の状況では、この薄く青い浜辺を上から見られただけでもハッピーかもで、これから先、もしかすると奄美のきれいな海を見るのもこれが最後かと思いつつ下る。汗は絶え間なく流れている。
 だいぶ下ってから、登って来るオッサンに出会った。彼もまた汗だくでゼーゼーしながら、まだ先ですかねと聞かれ、ここで1/3くらいだと答えるとため息をついた。
 天気がよろしくなく強風が吹きすさんでいるのに汗だけはたっぷりとかく。駐車場に着くと、先ほど出会ったオッサンもまたレンタカーの「わ」ナンバーだ。車のエンジンをかけてエアコンを全開。涼んだところで改めて外に出て立ちションを終えると、オッサンが下って来た。「あれっ、展望台には行かなかったのですか?」。「やめました」。根性ないなぁとは言えない。自分も30分歩きの感覚だったのだから。車を出す。この寄り道で30分は使ってしまった。
 奄美大島は山深い島だ。海岸沿いに道路が走り、何本かの山を突っ切る道路がそれを結ぶ。必然的にトンネル、カーブ、上り下りの起伏が多くなる。トンネルはかなり長いものもあり、翌日に通った網野子トンネルは4,243mもあり、日足トンネルの1.5倍の長さになる。カーナビがやたらと「速度超過を検知しました。安全運転を心掛けましょう。」、「急ハンドルを検知しました。安全運転に心掛けましょう。」と執拗に忠告してくる。最初のうちはうっとうしかったが、そのうちに慣れ、これは言われるだろうな、あれっ言わないなとなる。
 島の東側に出ると海が見えてきた。灰色の海。かろうじて浜辺寄りの色は淡い青で、陽が出ていればさぞきれいだろうなと想像はつく。そして道路沿いのあちこちに咲いているハイビスカスとソテツは南国の風景を浮き立たせてくれてはいるものの、強風にあおられ、気の毒なほどに揺らいでいる。そして、瞬間的に強い雨も降る。台風慣れした奄美の人には日常的な風景だろうが、通りすがりの旅人には非日常的で、台風がこれからやってくるのかという不気味な雰囲気が伝わってくる。
 スピードの出し過ぎか、目的地到着予定時刻がどんどん縮んでいった。早く着きそうなので路肩に車を止めては荒れた海を眺めた。荒れてはいても、やはりきれいな海が続いている。ただ、川水の入り込む河口付近では運ばれた土砂で海水が次第に濁ってきている。
 右手に「フナンギョの滝」の看板が見えた。この滝には明日行く予定でいる。滝見でも問題はここよりも南、マングローブパーク寄りから入る「タンギョの滝」で、安全地帯の遠くから小さく見ることは可能だが、間近に見るには住用川を泳ぐかへつらないと行けないようだ。そのために、事前に沢タビを送った。今回の旅にはハイパーVを履いてきている。これしかないからだが、自分はあまり重宝してはいない。坑夫滝でもそうだったし、さっきの展望台でもそうだった。沢以外のところでは結構滑り、翌日行った湯湾岳の水を含んで朽ちかけつつある木の階段歩きは滑りまくりで恐かった。

(マングローブカヌー1)


(マングローブカヌー2)


(マングローブカヌー3)


(マングローブカヌー4)


(マングローブカヌー出発点に戻る。ここで足をくじく)


(園内で見かけた花)


(同じく)


(パークの入口)


 マングローブパークに到着。こんな天気でカヌーに乗る酔狂な者は自分くらいと思っていたが、10人くらいいた。小学生らしき子供も数人いたが、夏休みにはまだ早い。学校を休ませて奄美旅行に来たのか。自分の感覚では理解しがたい。もちろん、自分は一人乗り用のカヌーだった。これは10人の中で自分だけ。別に孤独感はない。
 一時間ほどのカヌー乗りは、ガイドが二人付き、植生やら生き物の説明をしてくれて、予想以上に楽しいものだった。ちょうど満潮の時間帯で、マングローブ林の回廊の中に入り込めもした。風は強いものの小雨がパラつく程度で、これが幸いしたのかもしれない。ただ、西表島のマングローブカヌツァーを体験したことがあるだけに、物足りなさは残った。
 ここで、ちょっとしたトラブル。カヌーから下りる際、左足首をくじいた。痛みが走った。骨折したところだ。この先、尾を引かなければいいが。

 もう5時半近くになっている。島の日没は7時過ぎだ。まだ間があるが、それは普通の天気下でのことで、台風接近を知る前の予定には、これから北上して東シナ海に沈む夕日を眺める一人サンセットオプションを組んでいた。これは滞在中は不可能だ。今日よりも明日の方が台風も接近する。
 ここからホテルまでは遠い。今日の行動はこれで終わりにしよう。ホテルに向かう。
 通勤の帰宅ラッシュが始まっていた。ホテルのある名瀬が近づくにつれて車が多くなって先がつまってきた。この島もまた電車路線がないだけに車とバスが通勤の足になる。ぼんやりと見ていると、軽自動車の割合が多いのに驚く。鹿児島ナンバーと奄美ナンバーが同居している。右手にファミリーマートが見えた。大手のコンビニがあることだけはわかった。ビールでも調達しようかと思ったが、車列が動き出して右折のタイミングを逸した。
 「マリン」が付くホテルだったから、オーシャンビューかと思っていたが、確かに海辺に面してはいるものの、目の前は漁港でその隣は青果市場だった。押し寄せた波が防潮堤を越えて打ちつけている。そして激しく揺れているヤシの樹。ロビーには三沢あけみの大きな写真が飾ってあった。島には記念館もあるらしい。奄美の歌がヒットはしたものの、当人は長野県出身だ。部屋は完全なビジネスホテルの仕様。前の勤務先ではあちこち出張したが、久しぶりに懐かしい寝床だ。ツインだとしても、ベッドがもう一つあって広い程度だろう。彼女とでも来ていたら、Vanilla airと第三ターミナルは何とか我慢してもらっても、このホテルの部屋が決定打になりそうだ。そして聞かれもしなかったのに禁煙ルームになっていて、最初のうちはロビーの喫煙ルームに足を運んでいたが、しまいには面倒になり、ベランダのガラス戸を開けて吸った。強い生ぬるい風が入り込んでくる。
 ツァーの食事は朝食のみ付き。外に出て夕食のつもりでいたが、ここもまた空港と同じで飲食店は近くにない。仕方なくホテルでとった。デスクの上にあったレストランの案内メニューには豪勢なバイキング夕食の写真が載っていた。中に入ってしまってから失敗したと思ったがすでに遅いし、他に食べるところもない。品数は写真の半分もなかった。欲張って皿にてんこ盛りにするほどもない。生ビールとレモンハイを各一杯飲んではつまんで終わりにした。さすがに島ブタの角煮だけはおいしかった。
 ここのホテルの売りにはもう一つ、人工温泉があった。写真では広い。行ってみた。二人しか入れないような浴槽だった。だれもいなかったからよかったものの、さっさと出て部屋に戻った。
 部屋に戻り、持参のパジャマに着替えて読書。さすがに空調の具合に文句はない。明日の予定を改めて立てたいところだが、台風の速度が自転車並みでは、今後どういう動きになるのかテレビのチャンネルを変えては予報を見ても、さっぱりわからないが、午前中は持ちそうだ。明日は明日の風が吹く…だが、とにかく朝のうちにあちこち回ることにしよう。カヌーでくじいた左足首には痛みも腫れもない。
 遠くで三味線の音がする。ホテルのロビーでCDを流してでもいるのだろう。横になって聞いていると、外の風の音が入り込むせいか、津軽三味線でも聞いているような錯覚になった。

(ホテルの部屋のベランダから。なぜか月が見える。下は青果市場)


 一日目も終わったことだし、この辺で第一部の終わりということにしておこう。敢えて記しておくが、二日目以降に期待を持ってもらうほどに特別なハプニングやら出会いがあったということはない。あくまでも普通の観光旅行で終わることになる。

追記 なぜ奄美大島に旅行に出かけることにしたのかを記していなかった。特別な理由はない。屋久島には二度行き、沖縄には何度も行っている。その間に位置する奄美大島には一度も行ったことがなかったから行ったというだけのこと。せっかく行くからにはきれいな海が見たい。これまでのイメージで奄美大島は山の島という印象が強かったが、調べると海がきれいなことを今さらながらに知った。だから奄美大島に行ってみたということだ。大して深い意図はない。

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