◎2018年11月23日(金)
岩切駐車地(8:51)……猪子峠(9:13)……511m猪子山(10:08)……561m知ノ岳(11:30)……熊の分岐(11:47)……仙人ヶ岳(12:14~12:33)……熊の分岐(12:53)……生不動(13:21~13:31)……不動沢の滝(13:47)……駐車地(14:19)
手ごろに歩けそうな500~600m標高の山を探していた。ぶなじろうさんの記事を見て、多気山、鞍掛山の追っかけでもするつもりになったが、うろ覚えながらも鞍掛山は8年前に古賀志山とかけて歩いていた。また行くのもなぁと思っていたところに、ぶなじろうさん記事へのノラさんコメントで次石山というのが目に入った。調べると、標高は手ごろだが岩峰ときている。これではボツ。岩峰を登れる状態ではない。結局、ネタなしで、吾妻山から鳴神山まで、行けるところまで行くかとなったが、でんさん記事を見て気が変わった。仙人ヶ岳もありか。
でんさんルートは足利市でも紹介しているくらいの一般コースのようだ。どうも歩いたことがないような気がする。猪子峠だけは知っているから、おそらく、石尊山から深高山にかけて歩いた際に降り立った峠だろう。ただ、今回、下りで使ったコースは、13年前に上り使用で歩いたことがあった。初めて仙人ヶ岳に登るには一番楽なコースに思えたからだ。その時は、仙人ヶ岳から赤雪山に行き、松田ダムに下っている。
ということで、その足利市選定コースを仙人ヶ岳まで歩いてみることにした。情況によっては撤退ありも視野に入れている。猪子峠経由のルートはアップダウンが半端ではないらしく、累積標高も900m超えのようだ。
(駐車地前のアッシーバス停。「小俣北町」となっている)
駐車場には5台。うまく入れれば10台は置けそうな路肩の広場だ。車道を松田ダム方面に向かうと、これもまた路肩に置いた車で準備中の二人連れが目に入った。いずれは追い越されるだろうなと思ったが、オレよりも遅いのか、もしくは深高山に行かれたのか、最後まで会うことはなかった。深高山といえば、最近行かれた方が、植林だらけで紅葉に出会うことはなかったとこぼしていた記事を見た。仙人ヶ岳がだめそうなら、深高山もありかなと思っていただけに、これで候補からは外していた。
(トンネルが見えたので、ここで右に入る。かなり行き過ぎの感じがしたが、これで正解だったみたい)
(何かの施設跡?)
(猪子峠)
猪子トンネルが見えてきた。これは来過ぎじゃないのかと、右手の旧道のようなところから作業道のような道に入った。標識もないし疑心暗鬼だ。植林の中、コンクリを積み重ねたガレキがある。何か施設でもあったのか。作業道は続く。「茂木線四五号」の黄色のポール。この道は鉄塔巡視路のようだ。
「仙人ヶ岳」の標識が目につきほっとした。間違ってはいなかった。先に鞍部のようなところが見え、そのまま行くと、そこが猪子峠だった。標識は右が深高山、左は仙人ヶ岳となっていて、仙人ヶ岳までは「約2時間15分」と記されている。自分の足では最低3時間はみた方が無難だろう。ちなみに、足利市発行のハイキングマップには、峠から仙人ヶ岳まではトータル3時間10分と記載されている。これは後でわかったことで、この刷り出しのマップを持参はしたが、最後まで見ることはなかった。ついでに、下りは2時間とある。結果として、上り下りともにクリアした形にはなったが、マップのタイムはかなり甘いような気がする。現に、上りでは、写真撮りやら展望満喫でタイムを多く費やしているから、峠から3時間で山頂に着いてはいるものの、黙々歩きをしていたら、この体調ですら2時間45分くらいだろうもので、健常者なら2時間15分も無理はないだろう。
いきなり、タイムにこだわってしまったが、別に時間を気にして歩いていたわけではなく、今になって、つい結果と比較してしまっただけのこと。その時は、山頂まで行ければいいということしか頭にはない。
(峠の石祠)
(では登りましょう)
峠には石祠があった。古道かなと思ったが、この先、古の物を見ることはなかったから、古道ルートは深高山の方かもしれない。一応、手を合わせて、無事に仙人ヶ岳に行けますようにと、自分らしくもない願をかけたりする。
ゆるやかな登りが斜度を増し、植林から抜け出し、以降はずっと自然林の中の歩きになる。紅葉はほどほど。決してきれいとはいえないが、青空を背景に、色づきの中を歩いているという実感は心地よい。大坊山はともかく、先日の経塚山は曇天の歩きだったから、久しぶりに秋の山を歩いているうれしさが湧いてくる。この雰囲気が続けば、山頂に至れずともに途中で戻ることになってもかまわない。気分だけは充実レベルになっている。
(気になったポスター。深く考えずともおかしい)
ポスターを見かけた。「山火事予防」。気持ちよく歩いていても、本音がひねくれているのか、このポスターに違和感を覚えた。これって、「焚火をした後はしっかり消しましょう」ということじゃないのか。山で焚火をしてはダメでしょうに。タバコですら、携帯灰皿に灰まで落としている。題材として焚火はどんなものだろうか。翌々日に晃石山を歩いたが、そこに置かれたポスターには、タバコも焚火も×印が記されていた。
(青空バックではキラキラと見えてはいる)
(足利市の先に関東平野)
見ごろとは言いがたい色づきが続く。黄色とこげ茶が主で赤は目に入らない。葉もまた小さい。こんなお粗末な紅葉でもつい写真を撮ってしまう。右後ろ(南東)方面の山並みの奥に市街地が覗く。足利市だろう。微風ながらも寒さは感じないでいられる。今日は山歩き日和だ。
早速、下りの方が降りて来た。まだ9時半を過ぎたところだ。随分と早い。反対側から6時頃から歩き出したのだろう。そして、あっという間に単独氏に追い抜かれる。そして、若い二人組にも。あせらない、あせらない。数か月前なら気をもんだろう。
(やはりなぁ。登るに連れて石が大きくなって、岩がちになってくる)
(ちらりと松田ダム)
右下に松田ダムが見えてくるようになると、岩混じりになり、尾根も細くなってきた。そういえば、コース上に「犬帰り」というところがあるようだ。クサリ場の岩峰状になっているようだ。そこは当初から巻くつもりでいるからいいが、もう岩混じりになるとは心の準備ができていなかった。そして、ところどころに大きな岩が現れる。直登できるところもあれば、巻くしかないところもある。下りの足の支えが不安になり、とうとうストックを2本出してしまった。今日はストックなしでどこまで行けるか試そうとしていたが、早々にくじけた。結局、ストックを収納したのは帰路で里の一角が見えてからで、その間、ストックに頼りっぱなしになってしまった。これではまだまだだ。まして、足首とヒザにはサポーターを巻いている。ヒザサポーターは仕方があるまい。
(こんな岩場通過が当たり前になってくる)
(今日、初の下り。やはり構えてしまうが、次第に慣れてくる)
(こんな雰囲気の中の歩き。写真ではご満足)
(尾根からはこんなきれいな山並みが見えている。つい見とれて時間をとられる)
(そして、猪子山)
アップダウンが続き、障害物の多い、足に多少の負担がかかる登山道が続く。息切れはしないし、筋力の衰えは感じない。松葉杖で金山を散歩したくらいだから、左足以外の筋肉は維持されている。
前方に見えていたとりあえずのピークに到着。511m標高点だ。「猪子山」という山名板が置かれている。地図を見ると、まだ猪子峠から仙人ヶ岳の区間の1/3にも満たないでいる。ため息が出た。
(赤雪山方面)
(正面は仙人ヶ岳の一角か)
しばらく平坦が続いたが、間もなく下って登る。右手先の赤雪山方面の眺めが良い。あちらの山肌も煤けた感じがする。早いのか、遅いのか、こんなものなのか。贅沢は言うまい。紅葉の時季には何とか間に合わせたかったし、それが実現できただけでも幸いだ。目を見張るほどの紅葉ではなくとも、こうして満足しながら歩いている。贅沢に迎合するなら、それなりに身体を犠牲にするというもの。ソレデモイイノデスカ? イヤデス。
仙人ヶ岳らしき山が見えてくる。地図をあてがうと、どうも方向が違う。だが、距離的に、そして標高的にあのピークが仙人ヶ岳のようだ。地図の向きを少しずらし、身体もちょっとひねった。何とか、地図上の位置に合った。あれが仙人ヶ岳と納得する。その下、つまり正面に、岩肌をむき出しにしたところがある。まさか、あそこを登るわけではないだろうな。
(こんなところを登って来ているということだが…)
(石尊山から深高山にかけての稜線。手前の尾根が気になる)
もう感覚が麻痺した岩場を越えて行くと、正面に岩。なんだ、この程度のものか。当たり前のように巻き道はなく、危うさもなく登れた。小ピークから石尊山から深高山の稜線がクリアに見える。山肌の幾筋もの尾根は顕著だ。あの一本一本とまではいかずとも、いくつかは登ってみようかなとバカなことを考えたことがあるが、それをいざ際限なくすべてやってしまったら今度は谷筋へとこだわり、その山域から離れられなくなる。今さらにして実行にかからなくてよかったと思っている。だが、つい見とれてしまう。と記しつつ、こちら側の目の前の尾根が気になる。504mを経由する尾根。あっちよりもこっちだな。当然、瀑泉さんなら歩かれているはずの尾根だ。
(まだまだ越えるべくこの先のピークは続く)
(惟の岳)
ついつい、深高山の稜線を振り返りながら登って行く。目の前には、またうんざりのこんもりピーク。登りきったところに山名板らしきものはあったが、字は消えている。後でカッターか何かで彫り込んだらしき文字は「惟の岳」と読める。地図上の高さは5百数メートルだろう。狭いピークだ。今のところ休憩も一服も身体が要求しない。写真撮りして、水を一口飲んでそのまま先に行く。先行する青年二人の声が聞こえる。何やら騒いでいる。追い越されたとはいえ、さほどに距離は離されていないようだ。
(そして犬帰り。左にちらりとクサリが垂れている)
(巻き道を下って)
(登り返し)
高い岩が目の前に現れた。正面突破できそうにも見えるが、左にクサリが見えた。そうか、ここが「犬帰り」か。右に巻き道がある。予定外のことはやめよう。巻き道に入って下る。
どんどん下る。ロープも張られている。こんなに下って登り返しになるのなら、たかが10mあるかどうかの岩場だ。クサリを使ってでも登った方が利口だったのではないのか。30mは確実に下ったが、どこまで下って行くのかと思ったほどで、方向転換した先の上りには木組みの階段はあって、25mほどの登り返し。ここで唯一、息切れしてしまった。尾根に復帰し、まぁ、巻いて正解だったと思うことにはしたが、岩の途中からの眺望は見事らしい。改めて挑戦というほどのものでもないような気がするが。確かに犬連れの場合なら巻き道だろう。猫なら行けるかも。
(仙人ヶ岳もいくらか近づいたみたいだ)
(松田ダムも遠のいた)
(振り返る。左のぼんやりはレンズの汚れだった。汗付きのタオルで拭っていた)
(ザレた下り。もう下りへの恐怖心はかなり薄れている)
(岩場脇の巻き)
(宗の岳)
岩混じりは依然とし、油断ならない歩きは続く。振り返る。その景色は、赤倉山をマニアックルートで登った際に振り返って見た光景に似ている。岩場の上りで、また一人、下って来た。
「宗の岳」の標識があった。ここで半分は過ぎたか。標高は530mクラスだ。こう小ピークが続くと、鋸山十一峰のようにすべてに山名があってもおかしくないような気はするが、ここは主だったところにしか山名はないようだ。その「主だった」と意味合いはどこに起因するのか。特徴のないピークが続いている。
(グーンと近づきましたねぇ)
(赤雪山方面もまた)
(大分濃くなったが、この距離が無難)
(赤も増えてきている)
(また振り返る。厳しい感じを登って来たという雰囲気が自信へとつながる。笑)
(筑波山)
下っていくと、仙人ヶ岳も近づき、その前衛峰的なピークが正面に見えてきた。そこもまた直下は岩肌をさらしている。ここの尾根歩きの魅力は、凹凸のある景観の眺望だろう。ここは上りよりも下りに使うハイカーが多いのではないだろうか。その方が少しは楽なような気がする。
筑波山が見え、焼け焦げた樹の根だけが残っているのが一本。これは例の火事の際の飛び火だろうか。だとすれば、一本だけの類焼で良かったというものだ。ヘタすれば、この辺一帯も焼けていただろう。
(富士山)
先のピークから下りて来るオッサンに声をかけられた。「富士山がよく見えますねぇ」。反射的に「そうですね」と答えたが、実は富士山には気づいてはいなかった。高みに出て、ようやく富士山を発見した。しばらく浅間山じゃないのかと迷っていた。方角的に、やはり富士山だ。
「まつだ湖畔キャンプ場」分岐を通過。分岐道はあまり使われていないのか、少しヤブかかっている。今歩いているコースも含め、地図上には点線もないルートだ。
(知ノ岳)
「知ノ岳」(標高561m)は狭いながらもぽっかり開けたピークだった。ここまで来たら、もう仙人ヶ岳に行けるだろう。気づかぬうちに、岩混じりの尾根もおとなしくなっていたし、心持ち、尾根幅も広がったような気がする。5分の休憩をとり、おにぎりを一個食べる。
ふと考える。「猪子山」はともかくとして、これまでの名前ありの三ピーク「惟の岳」、「宗ノ岳」、そしてこの「知ノ岳」。山名の由来はどこにあるのだろう。宗教的な拠りどころでもあるのかと、後で、「惟」「宗」「知」を並べて調べると、共通するものはない。自分としては、平家や藤原一族の名前に出てくる字だなと思いはしたが、それとの関連はないだろう。謎が残った。もしかしたら、この三山だけではなく、以前は、それぞれに一漢字をあてがった山名があったのかもしれない。
(岩場はなくなり、普通の山の風景になった)
(仙人ヶ岳の一角)
(振り返っては飽きない)
(熊の分岐)
右に植林が出てくると、どこにでも見る普通の山の景色になった。仙人ヶ岳から続くピークも近くなり、赤雪山に続く稜線も目の前だ。やはり、ここに至っても、紅葉の色具合は素晴らしいとはいえないが、何だか、ムンムンとした空気の匂いを感じる。これでも紅葉は今、盛りなのだろう。
「熊の分岐」を通過。山頂からここに戻って、分岐を別方向に下るつもりでいる。ちらっと覗くと、岩ゴロの道ではないようだ。13年前の記憶はないに等しい。ところで、何でまた「熊」なのか。ここでクマがどちらに行くか迷うということなのか?
(すでに晩秋だが、秋真っ盛りの匂いがあふれている)
(直前ピーク)
(これはまた濃すぎる赤)
(赤雪山分岐)
ここまで来たらもうゆっくりだ。久しぶりの新鮮な空気を吸いながら歩く。下って来る人も数人いる。もう周辺は落葉だらけで、足にはベストなクッションになっている。
山頂まで0.3kmの標識。ここからはもう平坦だ。少しの傾斜。赤いのが出てくる。黒ずんでいる。近づいて見る。アップの写真はやめておこう。二人連れが落葉に座り込んで食事中。
(平らになって)
(仙人ヶ岳山頂)
山頂に到着。ほっとしたのも束の間、風が冷たい。別段、汗をかいていたからということではなく、山頂だけに冷たい風が流れている。意外にも、わんさとハイカーがいるかと思ったが、二人組だけ。追い越された二人組ではない。彼らはどこに行ったのか。ここで休まずに赤雪山に向かったのだろうか。山頂から離れ、木株に腰かけて菓子パンを食べ、ここでようやくの一服。
(男体山)
(今回のお気に入り風景は深高山の稜線だ)
せっかくの静かな山頂、長居したいところだが、如何せん寒い。山頂から離れて下山にかかる。入れ違いに登って来た単独のオッサン、寒い、寒いと連発する。そんな薄着の格好では、なおさらに寒いでしょう。毛脛を出して半袖で歩いている。
(のんびり気分の下り)
下りは要注意なのだが、登り下りを繰り返してきたから、下りとはいっても気分的には楽になっている。用心歩きをしてしまったら却って危ない思いをしそうだ。できるだけ普通に近く歩くことにする。だが、常に意識下にある限りは無理かもしれない。
下りの風景の印象はよろしくない。熊の分岐から沢沿いに下ることになる。そこまでの気分はまだ延長で続いている。山頂から離れたら風も止み、むしろ、上を脱いだりした。男体山もちらりと見えた。斜面に白いのが見えた。登って来た尾根も改めて見ながら、あそこを登って来たんだなぁなんて感慨一入になったり。身体に故障を起こすことがなかったら、特別にそんな気持ちになることもなかっただろう。
(熊の分岐から沢沿いルートに向けて下る)
(薄暗くて陰気な感じの下り道。陽も上がらないうちに登りきるには、ここの道が最適かもしれない。余計なことに目を向けずに済む)
(紅葉もこんなもの)
分岐から下り一辺倒になった。ロープが据えられたジグザグの下りだ。地元の小学校児童会が立てた「熊の分岐へ きつい難所」なんて記された標識も置かれている。このあたりまではまだ気分も良かったが、そのうちに、ずっと日陰になった。おそらく、両サイドを尾根にふさがれ、陽もあたらない谷筋なのだろう。
紅葉の気配はほとんどなく、たまに陽当たりの樹の葉が緑と赤が混在している程度。もう見るべきものはなく、歩くに徹するしかないが、そのうちに水が出てくる。しみ出した水が次第に細い流れになる。歩道はそれを渉ったり沿ったりする。渡された木橋が何となくこわい。腐っているわけではないが、高さもないのに、滑ったり、折れたらまずいなと。どうしても慎重になってしまう。
(こんな木橋が何か所もある。水は淀んではいても流れは微妙)
(ふさがれた坑口)
木橋のないところを渉る時やってしまった。滑って尻もち。瞬間に無理な姿勢で左足をかばってしまった。痛みはなかったが、しばらくは鈍い感覚が続いた。そのまま歩いた。違和感だけは残るが、歩行に問題はない。一種の軽いひねりのようだ。
鎖がでてくる。使うまでもない。そしてこの辺には鉱山があったのか「東京鉱山保安監督部」の標識。やはり、金網でふさがれた穴があった。中を覗く。水溜まりがある。奥はカーブしていて見えない。何が採れたのだろう。この辺はマンガン鉱跡が多いから、ここもそうなのかもしれない。
(生不動)
(13年前の生不動)
「岩切25分」の標識を見て、生不動。ここで、さっきの転倒もあったので休む。ついでに一服。この生不動、でんさんのブログには「生不動は修復中のようだった」と記されている。そう言われればそうかもしれない。床も起こされている。だが、自分には廃れかけの神社に見えた。気になったので、13年前に撮った写真を見てみた。やはり同じだった。修復どころか、放りっぱなしのようだ。上の岩棚にはご神体が祀られているのか。下から見上げる限りは特別なものは見えない。
休憩の間に、右の太ももが痛み出した。攣る一歩手前だ。どうしてもここに影響が出てくる。無理な姿勢で座っていたせいもあるのか、立ち上がって歩き出したら痛みは消えた。
(この辺は一年を通じて陽が射すということはないのかもしれない)
(不動沢の滝。誤解なく。写真が上下逆さではない。)
先に行くと、ここが「不動沢の滝」と思しき滝が現れる。水流が細すぎて、どう撮っても滝には見えない。歩道はこの滝の左側斜面にロープ伝いにつけられている。不思議に思ったのは、滝の上にもロープが渡されていて、これを伝うこともできるのだろうか。そんなことをしてまで渉るほどの価値ある滝には思えないのだが。
(下り沿い唯一の赤)
(道が広くなって)
(里に出る)
(他人様の敷地のモミジ。柵があるので中には入れない)
(生不動の鳥居)
(石碑、石仏、庚申塔)
道は作業道のようになり、やがて広くなってタイヤ痕も見え出す。終点は近い。墓地が見えた。手前の石に座って一服する。その間に、単独氏が去って行った。
舗装道になった。そして石灯篭と鳥居。鳥居は木で作ったものだが、相当に年季が経っている。これは生不動の鳥居なのだろうが、やはり、整備はされていないようだ。脇には庚申塔や石仏、石碑が置かれている。その先の車道と接するところに看板があり、それには、生不動の来歴は千百年前に遡るようなことが記されている。
(車道に出て)
(駐車地到着)
(前を走るアッシー号)
車道を歩いて駐車地に向かう。地元のジイチャンがのんびりと散歩をしている。その傍らをアッシーバスが市内方面に向かって行った。
駐車地には自分のを入れて車が4台。靴を脱ぎ、足のサポーターを外していたら、もう一人、ハイカーが戻って来た。毛脛のオッサンだった。
オッサンはさっさとそのスタイルのまま車で去って行ったが、こちらにはいろいろと手続きがある。左足は腫れたまま。これは医者が言うには、全身の筋肉との関連云々ということで、しばらくはどうしようもないらしい。だから、仕事に出かけても、足の甲部分が高く、幅も広くなっている(みー猫さん足か?)から、いわゆるビジネスシューズは履けず、スニーカーでもスーツには違和感のない靴を履いて出かけている。前置きが長いが、足の甲が痛くならないようにと、サポーターを外した後に、バンテリンのエアロゲルを吹き付けようと靴下を脱いだら驚いた。腫れは消え、甲に、右足同様に血管が鮮明に浮いている。あれっ、腫れは消えたのかなと喜んだが、夜に足を見たら、やはり元に戻っていた。
まっ、こんなものでしょう。それはともかくとして、久しぶりに気持ちの良い歩きができた。今日は仙人ヶ岳を選んで正解だった。
(本日の軌跡)
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
(1個150円のクッキー。サイズを測ったら、68×51×4.5ミリだった)
そのまま桐生に向かう。妻からの依頼事だ。知人からいただいたクッキーがおいしかった。上毛かるたのクッキー。製造・販売は桐生・相生の菓子屋。ついてはそれを買ってきて欲しいとの依頼だ。
ナビで店をセットして向かった。みどり市の一角に入り込んだ桐生の端にあった。いつもこの店の前を通って足尾に行っている。クッキーはすぐに見つかった。値段を見て驚いた。一個150円もする。上毛かるたの箱入りで8,000円。セットは予約制。そんな物は買えない。腹に入れて残るのは空箱だけ。セットが割高なのは箱代が入っているからだ。隣にばら売りが置かれていた。ア行からタ行まで20個買った。しめて3,000円也。
帰って、それを妻に伝えたら、さすがにそんなに高いクッキーとは思ってもいなかったらしい。驚いていた。クッキーはいまだにオレの口には入っていない。どんなにおいしい味がするのだろう。
※本記事で当初「犬帰り」を「犬返し」としていた。瀑泉さんのご指摘で「犬帰り」と訂正した。瀑泉さん、ありがとうございます。一部、そのままのがありましたらご容赦のほど。
岩切駐車地(8:51)……猪子峠(9:13)……511m猪子山(10:08)……561m知ノ岳(11:30)……熊の分岐(11:47)……仙人ヶ岳(12:14~12:33)……熊の分岐(12:53)……生不動(13:21~13:31)……不動沢の滝(13:47)……駐車地(14:19)
手ごろに歩けそうな500~600m標高の山を探していた。ぶなじろうさんの記事を見て、多気山、鞍掛山の追っかけでもするつもりになったが、うろ覚えながらも鞍掛山は8年前に古賀志山とかけて歩いていた。また行くのもなぁと思っていたところに、ぶなじろうさん記事へのノラさんコメントで次石山というのが目に入った。調べると、標高は手ごろだが岩峰ときている。これではボツ。岩峰を登れる状態ではない。結局、ネタなしで、吾妻山から鳴神山まで、行けるところまで行くかとなったが、でんさん記事を見て気が変わった。仙人ヶ岳もありか。
でんさんルートは足利市でも紹介しているくらいの一般コースのようだ。どうも歩いたことがないような気がする。猪子峠だけは知っているから、おそらく、石尊山から深高山にかけて歩いた際に降り立った峠だろう。ただ、今回、下りで使ったコースは、13年前に上り使用で歩いたことがあった。初めて仙人ヶ岳に登るには一番楽なコースに思えたからだ。その時は、仙人ヶ岳から赤雪山に行き、松田ダムに下っている。
ということで、その足利市選定コースを仙人ヶ岳まで歩いてみることにした。情況によっては撤退ありも視野に入れている。猪子峠経由のルートはアップダウンが半端ではないらしく、累積標高も900m超えのようだ。
(駐車地前のアッシーバス停。「小俣北町」となっている)
駐車場には5台。うまく入れれば10台は置けそうな路肩の広場だ。車道を松田ダム方面に向かうと、これもまた路肩に置いた車で準備中の二人連れが目に入った。いずれは追い越されるだろうなと思ったが、オレよりも遅いのか、もしくは深高山に行かれたのか、最後まで会うことはなかった。深高山といえば、最近行かれた方が、植林だらけで紅葉に出会うことはなかったとこぼしていた記事を見た。仙人ヶ岳がだめそうなら、深高山もありかなと思っていただけに、これで候補からは外していた。
(トンネルが見えたので、ここで右に入る。かなり行き過ぎの感じがしたが、これで正解だったみたい)
(何かの施設跡?)
(猪子峠)
猪子トンネルが見えてきた。これは来過ぎじゃないのかと、右手の旧道のようなところから作業道のような道に入った。標識もないし疑心暗鬼だ。植林の中、コンクリを積み重ねたガレキがある。何か施設でもあったのか。作業道は続く。「茂木線四五号」の黄色のポール。この道は鉄塔巡視路のようだ。
「仙人ヶ岳」の標識が目につきほっとした。間違ってはいなかった。先に鞍部のようなところが見え、そのまま行くと、そこが猪子峠だった。標識は右が深高山、左は仙人ヶ岳となっていて、仙人ヶ岳までは「約2時間15分」と記されている。自分の足では最低3時間はみた方が無難だろう。ちなみに、足利市発行のハイキングマップには、峠から仙人ヶ岳まではトータル3時間10分と記載されている。これは後でわかったことで、この刷り出しのマップを持参はしたが、最後まで見ることはなかった。ついでに、下りは2時間とある。結果として、上り下りともにクリアした形にはなったが、マップのタイムはかなり甘いような気がする。現に、上りでは、写真撮りやら展望満喫でタイムを多く費やしているから、峠から3時間で山頂に着いてはいるものの、黙々歩きをしていたら、この体調ですら2時間45分くらいだろうもので、健常者なら2時間15分も無理はないだろう。
いきなり、タイムにこだわってしまったが、別に時間を気にして歩いていたわけではなく、今になって、つい結果と比較してしまっただけのこと。その時は、山頂まで行ければいいということしか頭にはない。
(峠の石祠)
(では登りましょう)
峠には石祠があった。古道かなと思ったが、この先、古の物を見ることはなかったから、古道ルートは深高山の方かもしれない。一応、手を合わせて、無事に仙人ヶ岳に行けますようにと、自分らしくもない願をかけたりする。
ゆるやかな登りが斜度を増し、植林から抜け出し、以降はずっと自然林の中の歩きになる。紅葉はほどほど。決してきれいとはいえないが、青空を背景に、色づきの中を歩いているという実感は心地よい。大坊山はともかく、先日の経塚山は曇天の歩きだったから、久しぶりに秋の山を歩いているうれしさが湧いてくる。この雰囲気が続けば、山頂に至れずともに途中で戻ることになってもかまわない。気分だけは充実レベルになっている。
(気になったポスター。深く考えずともおかしい)
ポスターを見かけた。「山火事予防」。気持ちよく歩いていても、本音がひねくれているのか、このポスターに違和感を覚えた。これって、「焚火をした後はしっかり消しましょう」ということじゃないのか。山で焚火をしてはダメでしょうに。タバコですら、携帯灰皿に灰まで落としている。題材として焚火はどんなものだろうか。翌々日に晃石山を歩いたが、そこに置かれたポスターには、タバコも焚火も×印が記されていた。
(青空バックではキラキラと見えてはいる)
(足利市の先に関東平野)
見ごろとは言いがたい色づきが続く。黄色とこげ茶が主で赤は目に入らない。葉もまた小さい。こんなお粗末な紅葉でもつい写真を撮ってしまう。右後ろ(南東)方面の山並みの奥に市街地が覗く。足利市だろう。微風ながらも寒さは感じないでいられる。今日は山歩き日和だ。
早速、下りの方が降りて来た。まだ9時半を過ぎたところだ。随分と早い。反対側から6時頃から歩き出したのだろう。そして、あっという間に単独氏に追い抜かれる。そして、若い二人組にも。あせらない、あせらない。数か月前なら気をもんだろう。
(やはりなぁ。登るに連れて石が大きくなって、岩がちになってくる)
(ちらりと松田ダム)
右下に松田ダムが見えてくるようになると、岩混じりになり、尾根も細くなってきた。そういえば、コース上に「犬帰り」というところがあるようだ。クサリ場の岩峰状になっているようだ。そこは当初から巻くつもりでいるからいいが、もう岩混じりになるとは心の準備ができていなかった。そして、ところどころに大きな岩が現れる。直登できるところもあれば、巻くしかないところもある。下りの足の支えが不安になり、とうとうストックを2本出してしまった。今日はストックなしでどこまで行けるか試そうとしていたが、早々にくじけた。結局、ストックを収納したのは帰路で里の一角が見えてからで、その間、ストックに頼りっぱなしになってしまった。これではまだまだだ。まして、足首とヒザにはサポーターを巻いている。ヒザサポーターは仕方があるまい。
(こんな岩場通過が当たり前になってくる)
(今日、初の下り。やはり構えてしまうが、次第に慣れてくる)
(こんな雰囲気の中の歩き。写真ではご満足)
(尾根からはこんなきれいな山並みが見えている。つい見とれて時間をとられる)
(そして、猪子山)
アップダウンが続き、障害物の多い、足に多少の負担がかかる登山道が続く。息切れはしないし、筋力の衰えは感じない。松葉杖で金山を散歩したくらいだから、左足以外の筋肉は維持されている。
前方に見えていたとりあえずのピークに到着。511m標高点だ。「猪子山」という山名板が置かれている。地図を見ると、まだ猪子峠から仙人ヶ岳の区間の1/3にも満たないでいる。ため息が出た。
(赤雪山方面)
(正面は仙人ヶ岳の一角か)
しばらく平坦が続いたが、間もなく下って登る。右手先の赤雪山方面の眺めが良い。あちらの山肌も煤けた感じがする。早いのか、遅いのか、こんなものなのか。贅沢は言うまい。紅葉の時季には何とか間に合わせたかったし、それが実現できただけでも幸いだ。目を見張るほどの紅葉ではなくとも、こうして満足しながら歩いている。贅沢に迎合するなら、それなりに身体を犠牲にするというもの。ソレデモイイノデスカ? イヤデス。
仙人ヶ岳らしき山が見えてくる。地図をあてがうと、どうも方向が違う。だが、距離的に、そして標高的にあのピークが仙人ヶ岳のようだ。地図の向きを少しずらし、身体もちょっとひねった。何とか、地図上の位置に合った。あれが仙人ヶ岳と納得する。その下、つまり正面に、岩肌をむき出しにしたところがある。まさか、あそこを登るわけではないだろうな。
(こんなところを登って来ているということだが…)
(石尊山から深高山にかけての稜線。手前の尾根が気になる)
もう感覚が麻痺した岩場を越えて行くと、正面に岩。なんだ、この程度のものか。当たり前のように巻き道はなく、危うさもなく登れた。小ピークから石尊山から深高山の稜線がクリアに見える。山肌の幾筋もの尾根は顕著だ。あの一本一本とまではいかずとも、いくつかは登ってみようかなとバカなことを考えたことがあるが、それをいざ際限なくすべてやってしまったら今度は谷筋へとこだわり、その山域から離れられなくなる。今さらにして実行にかからなくてよかったと思っている。だが、つい見とれてしまう。と記しつつ、こちら側の目の前の尾根が気になる。504mを経由する尾根。あっちよりもこっちだな。当然、瀑泉さんなら歩かれているはずの尾根だ。
(まだまだ越えるべくこの先のピークは続く)
(惟の岳)
ついつい、深高山の稜線を振り返りながら登って行く。目の前には、またうんざりのこんもりピーク。登りきったところに山名板らしきものはあったが、字は消えている。後でカッターか何かで彫り込んだらしき文字は「惟の岳」と読める。地図上の高さは5百数メートルだろう。狭いピークだ。今のところ休憩も一服も身体が要求しない。写真撮りして、水を一口飲んでそのまま先に行く。先行する青年二人の声が聞こえる。何やら騒いでいる。追い越されたとはいえ、さほどに距離は離されていないようだ。
(そして犬帰り。左にちらりとクサリが垂れている)
(巻き道を下って)
(登り返し)
高い岩が目の前に現れた。正面突破できそうにも見えるが、左にクサリが見えた。そうか、ここが「犬帰り」か。右に巻き道がある。予定外のことはやめよう。巻き道に入って下る。
どんどん下る。ロープも張られている。こんなに下って登り返しになるのなら、たかが10mあるかどうかの岩場だ。クサリを使ってでも登った方が利口だったのではないのか。30mは確実に下ったが、どこまで下って行くのかと思ったほどで、方向転換した先の上りには木組みの階段はあって、25mほどの登り返し。ここで唯一、息切れしてしまった。尾根に復帰し、まぁ、巻いて正解だったと思うことにはしたが、岩の途中からの眺望は見事らしい。改めて挑戦というほどのものでもないような気がするが。確かに犬連れの場合なら巻き道だろう。猫なら行けるかも。
(仙人ヶ岳もいくらか近づいたみたいだ)
(松田ダムも遠のいた)
(振り返る。左のぼんやりはレンズの汚れだった。汗付きのタオルで拭っていた)
(ザレた下り。もう下りへの恐怖心はかなり薄れている)
(岩場脇の巻き)
(宗の岳)
岩混じりは依然とし、油断ならない歩きは続く。振り返る。その景色は、赤倉山をマニアックルートで登った際に振り返って見た光景に似ている。岩場の上りで、また一人、下って来た。
「宗の岳」の標識があった。ここで半分は過ぎたか。標高は530mクラスだ。こう小ピークが続くと、鋸山十一峰のようにすべてに山名があってもおかしくないような気はするが、ここは主だったところにしか山名はないようだ。その「主だった」と意味合いはどこに起因するのか。特徴のないピークが続いている。
(グーンと近づきましたねぇ)
(赤雪山方面もまた)
(大分濃くなったが、この距離が無難)
(赤も増えてきている)
(また振り返る。厳しい感じを登って来たという雰囲気が自信へとつながる。笑)
(筑波山)
下っていくと、仙人ヶ岳も近づき、その前衛峰的なピークが正面に見えてきた。そこもまた直下は岩肌をさらしている。ここの尾根歩きの魅力は、凹凸のある景観の眺望だろう。ここは上りよりも下りに使うハイカーが多いのではないだろうか。その方が少しは楽なような気がする。
筑波山が見え、焼け焦げた樹の根だけが残っているのが一本。これは例の火事の際の飛び火だろうか。だとすれば、一本だけの類焼で良かったというものだ。ヘタすれば、この辺一帯も焼けていただろう。
(富士山)
先のピークから下りて来るオッサンに声をかけられた。「富士山がよく見えますねぇ」。反射的に「そうですね」と答えたが、実は富士山には気づいてはいなかった。高みに出て、ようやく富士山を発見した。しばらく浅間山じゃないのかと迷っていた。方角的に、やはり富士山だ。
「まつだ湖畔キャンプ場」分岐を通過。分岐道はあまり使われていないのか、少しヤブかかっている。今歩いているコースも含め、地図上には点線もないルートだ。
(知ノ岳)
「知ノ岳」(標高561m)は狭いながらもぽっかり開けたピークだった。ここまで来たら、もう仙人ヶ岳に行けるだろう。気づかぬうちに、岩混じりの尾根もおとなしくなっていたし、心持ち、尾根幅も広がったような気がする。5分の休憩をとり、おにぎりを一個食べる。
ふと考える。「猪子山」はともかくとして、これまでの名前ありの三ピーク「惟の岳」、「宗ノ岳」、そしてこの「知ノ岳」。山名の由来はどこにあるのだろう。宗教的な拠りどころでもあるのかと、後で、「惟」「宗」「知」を並べて調べると、共通するものはない。自分としては、平家や藤原一族の名前に出てくる字だなと思いはしたが、それとの関連はないだろう。謎が残った。もしかしたら、この三山だけではなく、以前は、それぞれに一漢字をあてがった山名があったのかもしれない。
(岩場はなくなり、普通の山の風景になった)
(仙人ヶ岳の一角)
(振り返っては飽きない)
(熊の分岐)
右に植林が出てくると、どこにでも見る普通の山の景色になった。仙人ヶ岳から続くピークも近くなり、赤雪山に続く稜線も目の前だ。やはり、ここに至っても、紅葉の色具合は素晴らしいとはいえないが、何だか、ムンムンとした空気の匂いを感じる。これでも紅葉は今、盛りなのだろう。
「熊の分岐」を通過。山頂からここに戻って、分岐を別方向に下るつもりでいる。ちらっと覗くと、岩ゴロの道ではないようだ。13年前の記憶はないに等しい。ところで、何でまた「熊」なのか。ここでクマがどちらに行くか迷うということなのか?
(すでに晩秋だが、秋真っ盛りの匂いがあふれている)
(直前ピーク)
(これはまた濃すぎる赤)
(赤雪山分岐)
ここまで来たらもうゆっくりだ。久しぶりの新鮮な空気を吸いながら歩く。下って来る人も数人いる。もう周辺は落葉だらけで、足にはベストなクッションになっている。
山頂まで0.3kmの標識。ここからはもう平坦だ。少しの傾斜。赤いのが出てくる。黒ずんでいる。近づいて見る。アップの写真はやめておこう。二人連れが落葉に座り込んで食事中。
(平らになって)
(仙人ヶ岳山頂)
山頂に到着。ほっとしたのも束の間、風が冷たい。別段、汗をかいていたからということではなく、山頂だけに冷たい風が流れている。意外にも、わんさとハイカーがいるかと思ったが、二人組だけ。追い越された二人組ではない。彼らはどこに行ったのか。ここで休まずに赤雪山に向かったのだろうか。山頂から離れ、木株に腰かけて菓子パンを食べ、ここでようやくの一服。
(男体山)
(今回のお気に入り風景は深高山の稜線だ)
せっかくの静かな山頂、長居したいところだが、如何せん寒い。山頂から離れて下山にかかる。入れ違いに登って来た単独のオッサン、寒い、寒いと連発する。そんな薄着の格好では、なおさらに寒いでしょう。毛脛を出して半袖で歩いている。
(のんびり気分の下り)
下りは要注意なのだが、登り下りを繰り返してきたから、下りとはいっても気分的には楽になっている。用心歩きをしてしまったら却って危ない思いをしそうだ。できるだけ普通に近く歩くことにする。だが、常に意識下にある限りは無理かもしれない。
下りの風景の印象はよろしくない。熊の分岐から沢沿いに下ることになる。そこまでの気分はまだ延長で続いている。山頂から離れたら風も止み、むしろ、上を脱いだりした。男体山もちらりと見えた。斜面に白いのが見えた。登って来た尾根も改めて見ながら、あそこを登って来たんだなぁなんて感慨一入になったり。身体に故障を起こすことがなかったら、特別にそんな気持ちになることもなかっただろう。
(熊の分岐から沢沿いルートに向けて下る)
(薄暗くて陰気な感じの下り道。陽も上がらないうちに登りきるには、ここの道が最適かもしれない。余計なことに目を向けずに済む)
(紅葉もこんなもの)
分岐から下り一辺倒になった。ロープが据えられたジグザグの下りだ。地元の小学校児童会が立てた「熊の分岐へ きつい難所」なんて記された標識も置かれている。このあたりまではまだ気分も良かったが、そのうちに、ずっと日陰になった。おそらく、両サイドを尾根にふさがれ、陽もあたらない谷筋なのだろう。
紅葉の気配はほとんどなく、たまに陽当たりの樹の葉が緑と赤が混在している程度。もう見るべきものはなく、歩くに徹するしかないが、そのうちに水が出てくる。しみ出した水が次第に細い流れになる。歩道はそれを渉ったり沿ったりする。渡された木橋が何となくこわい。腐っているわけではないが、高さもないのに、滑ったり、折れたらまずいなと。どうしても慎重になってしまう。
(こんな木橋が何か所もある。水は淀んではいても流れは微妙)
(ふさがれた坑口)
木橋のないところを渉る時やってしまった。滑って尻もち。瞬間に無理な姿勢で左足をかばってしまった。痛みはなかったが、しばらくは鈍い感覚が続いた。そのまま歩いた。違和感だけは残るが、歩行に問題はない。一種の軽いひねりのようだ。
鎖がでてくる。使うまでもない。そしてこの辺には鉱山があったのか「東京鉱山保安監督部」の標識。やはり、金網でふさがれた穴があった。中を覗く。水溜まりがある。奥はカーブしていて見えない。何が採れたのだろう。この辺はマンガン鉱跡が多いから、ここもそうなのかもしれない。
(生不動)
(13年前の生不動)
「岩切25分」の標識を見て、生不動。ここで、さっきの転倒もあったので休む。ついでに一服。この生不動、でんさんのブログには「生不動は修復中のようだった」と記されている。そう言われればそうかもしれない。床も起こされている。だが、自分には廃れかけの神社に見えた。気になったので、13年前に撮った写真を見てみた。やはり同じだった。修復どころか、放りっぱなしのようだ。上の岩棚にはご神体が祀られているのか。下から見上げる限りは特別なものは見えない。
休憩の間に、右の太ももが痛み出した。攣る一歩手前だ。どうしてもここに影響が出てくる。無理な姿勢で座っていたせいもあるのか、立ち上がって歩き出したら痛みは消えた。
(この辺は一年を通じて陽が射すということはないのかもしれない)
(不動沢の滝。誤解なく。写真が上下逆さではない。)
先に行くと、ここが「不動沢の滝」と思しき滝が現れる。水流が細すぎて、どう撮っても滝には見えない。歩道はこの滝の左側斜面にロープ伝いにつけられている。不思議に思ったのは、滝の上にもロープが渡されていて、これを伝うこともできるのだろうか。そんなことをしてまで渉るほどの価値ある滝には思えないのだが。
(下り沿い唯一の赤)
(道が広くなって)
(里に出る)
(他人様の敷地のモミジ。柵があるので中には入れない)
(生不動の鳥居)
(石碑、石仏、庚申塔)
道は作業道のようになり、やがて広くなってタイヤ痕も見え出す。終点は近い。墓地が見えた。手前の石に座って一服する。その間に、単独氏が去って行った。
舗装道になった。そして石灯篭と鳥居。鳥居は木で作ったものだが、相当に年季が経っている。これは生不動の鳥居なのだろうが、やはり、整備はされていないようだ。脇には庚申塔や石仏、石碑が置かれている。その先の車道と接するところに看板があり、それには、生不動の来歴は千百年前に遡るようなことが記されている。
(車道に出て)
(駐車地到着)
(前を走るアッシー号)
車道を歩いて駐車地に向かう。地元のジイチャンがのんびりと散歩をしている。その傍らをアッシーバスが市内方面に向かって行った。
駐車地には自分のを入れて車が4台。靴を脱ぎ、足のサポーターを外していたら、もう一人、ハイカーが戻って来た。毛脛のオッサンだった。
オッサンはさっさとそのスタイルのまま車で去って行ったが、こちらにはいろいろと手続きがある。左足は腫れたまま。これは医者が言うには、全身の筋肉との関連云々ということで、しばらくはどうしようもないらしい。だから、仕事に出かけても、足の甲部分が高く、幅も広くなっている(みー猫さん足か?)から、いわゆるビジネスシューズは履けず、スニーカーでもスーツには違和感のない靴を履いて出かけている。前置きが長いが、足の甲が痛くならないようにと、サポーターを外した後に、バンテリンのエアロゲルを吹き付けようと靴下を脱いだら驚いた。腫れは消え、甲に、右足同様に血管が鮮明に浮いている。あれっ、腫れは消えたのかなと喜んだが、夜に足を見たら、やはり元に戻っていた。
まっ、こんなものでしょう。それはともかくとして、久しぶりに気持ちの良い歩きができた。今日は仙人ヶ岳を選んで正解だった。
(本日の軌跡)
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」
(1個150円のクッキー。サイズを測ったら、68×51×4.5ミリだった)
そのまま桐生に向かう。妻からの依頼事だ。知人からいただいたクッキーがおいしかった。上毛かるたのクッキー。製造・販売は桐生・相生の菓子屋。ついてはそれを買ってきて欲しいとの依頼だ。
ナビで店をセットして向かった。みどり市の一角に入り込んだ桐生の端にあった。いつもこの店の前を通って足尾に行っている。クッキーはすぐに見つかった。値段を見て驚いた。一個150円もする。上毛かるたの箱入りで8,000円。セットは予約制。そんな物は買えない。腹に入れて残るのは空箱だけ。セットが割高なのは箱代が入っているからだ。隣にばら売りが置かれていた。ア行からタ行まで20個買った。しめて3,000円也。
帰って、それを妻に伝えたら、さすがにそんなに高いクッキーとは思ってもいなかったらしい。驚いていた。クッキーはいまだにオレの口には入っていない。どんなにおいしい味がするのだろう。
※本記事で当初「犬帰り」を「犬返し」としていた。瀑泉さんのご指摘で「犬帰り」と訂正した。瀑泉さん、ありがとうございます。一部、そのままのがありましたらご容赦のほど。
自分で気にしているうちはまだまだですかね。
往路の紅葉は、だいぶ前の話になってしまいますが、
復路の沢沿いの紅葉も昨年はキレイでしたので先日歩いた時も期待していたのですよ。
昨年、同時期のログを見ていただければそれなりの色付きがあることがわかると思います。
>「あの一本一本とまではいかずとも・・・今度は谷筋へとこだわり」ってたそがれオヤジさんが仰るのはいかがなモノかと。今回の一般ルートは登っておられなくても,朝日沢や釈迦の窪,唐沢尾根と,この山のバリルートばかり登っている方が言う台詞じゃないでしょうに(笑)。
それはさておき,皆さんよく間違えるのですが「犬返し」ではなくて,「犬帰り」の岩場です。
それと,猪子山もそうですが,惟も宗も知も,勝手に付けた名前だと思いますヨ。
さすがに地元民ではないので,撤去まではしていませんが,最初に登った時は名前なんて無かったし,しばらく間が空いて,通い詰めるようになって3年くらいしたら宗だか知が付いて,猪子山なんてまだ数年前ですからネ。彼の足利百名山のマップにも,三角山や原仁田の頭,荒倉山は載っていても,何一つ載っていないし,おそらく適当に付けた名前だと思っています。
このたびは、良い歩きネタをご提供いただき、ありがとうございました。おかげさまで気持ちのよい歩きを楽しめました。
紅葉はでんさんの歩かれた時に比べて、遅くは感じたものの、晴れてむしろ暖かい状態でしたから、むっとした紅葉の匂いに包まれながらの歩きでした。
一年前の記事、拝見いたしました。下りロード、随分と違うものですね。今回の歩きだけでは、この時期はあそこを歩いても得するものはないなぁといった気分でしたが、これからなのでしょうか。だとしても、それらしい色合いはみかけませんでしたけど。
完全復活というわけにはいかないでしょう。身体が動いても、気分的な臆病さが抜けない限りはまだまだでしょう。犬帰りを登っていたら少しは復活に近づいているでしょうけどね。
こ指摘ありがとうございます。つい、どこにでもある「馬返し」が頭にあって「犬返し」にしてしまいました。訂正しておきました。
やはり時計回りが一般的ですか。下って来た方が多かったということではなく、復路を下りながら、私自身も反時計回りの方がきついかもなとは思っていました。
「あの一本一本云々」というのは、石尊山から深高山にかけての尾根の斜面を見ての話ですよ。そんなところを歩いている人はめったにいないでしょうが、一本やって、それが雰囲気の良いものだったら、全部を目標にしかねないななんて思ったわけですよ。
しかし、往路で左に見えた尾根は歩いてみたいなとは思っています。基本的に、自分は仙人ヶ岳は群馬の山ととらえがちで、足利の方からのルートはあまり歩いていないんですよ。
山名の件、納得です。猪子山もそうですか。これこそ、もっともらしく聞こえますけど。
惟、宗、知なんて、さもいわくありげな字を使ったりするものですから、つい、宗教めいたものを感じてしまったのですが、まったく関係なかったわけですよね。ちょっとあきれた話です。
仙人ヶ岳は、うちからも距離的には近く、いろんなコースが楽しめ、私も好きな山ですよ。もし積雪でもあったら、それなりに楽しそうな気もします。
私が犬帰りを巻いたのは仕方のないことであって、好んで巻いたわけではありません。どんどん下って行って、巻き道を間違えたんじゃないのかと思ったくらいです。また、決して楽に下って登れるというわけでもありません。
巻きは時間の無駄です。お勧めはいたしませんね。
あのヒダに関しては予告も何もありません。相当にネタに困ったときにでも考えますのでご安心ください。
深高山の山襞は、自然の造形として素直に綺麗に見えますねぇ~。山頂直前の自然林の写真の所、そんな雰囲気が私は好きです。そう言った所をのんびりと長く歩きたいです。
アッシー号があるのですね。ならば私にも訪れる機会がありそうです。
アッシー号は、この辺、一日5便の運行ですが、東武足利駅経由ですから、ぶなじろうさんには便利かもしれません。皆さん、車で行っても、このアッシー号を活用して駐車地に戻るという手を使っているようですが、私はそういう歩きはしていないので、使ったことはまだありません。
深高山の山襞は、やはり、つい見とれてしまいます。いつか、一本くらいはと思うのですが、地形図を見る限りは、稜線直下の等高線が狭くなっていて、最初はのんびり歩きができても、フィニッシュがかなり青色吐息になりそうです。
ところで、今日は仕事ですが、明日は茨城の山に行ってみようかなと思っています。まだまだハイキングレベルですが、課題としては長距離の低山歩きといったところです。
脚の方もだいぶ回復なさって何よりです
太田、桐生あたりは冬場でもあまり雪が
深くならないようですので低山の散策が
しばらくは楽しめそうですね
先週南相木ダムと上野ダム往復と
今日、天竺平ピストンやって来ました
くるぶしまでの積雪があり、今年は
この界隈はこれで終了ですね
年末年始はたそがれさんの山行記録を読見返して桐生の梅田あたりに出向こうと思います
仙人ヶ岳のこの周回をこなせるようになれば完治も近いですね。
犬帰りの巻き道はおっしゃるとおりで、以前我が相棒も巻き道を選んでブツブツ言ってましたよ。
ゆっくりと岩場を上った方が断然楽です。
最も今回は無理をしないと言うことで避けられたのでしょうが。
瀑泉さんも言われていたとおりあの尾根にはいつの間にか山名板がつけられておりましたね。
根拠などは不明です。
たそがれさんの気になる尾根と、もう一つ西の尾根もそうですが、ほぼ踏み跡もない変哲もない小薮の尾根です。
自分も前に気になって歩いたことはありますが、たどったことで満足と言ったところでした。