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『あしたが消える-どうして原発?-』~鑑賞

2011-09-01 00:04:27 | 映画~映画館鑑賞
渋谷のユーロスペースにて『あしたが消える-どうして原発?-』を鑑賞しました。

チェルノブイリ原子力発電所事故から3年後の22年前に製作された、
福島第一原発について問題提起した55分間のドキュメンタリー映画です。

福島第一原子力発電所の定期検査などで指導的な立場で働いていた父親を骨がんで
52歳という若さで失った仙台市の主婦が投稿した新聞記事をきっかけに、
原子力発電所の安全性、原発労働者の劣悪な労働環境、被爆の危険性を調査する医師、
実際に、福島第一原子力発電所4号機の設計に携わった田中三彦氏の証言などで作られています。

22年前は38基あった原子力発電所は、現在は54基です。
チェルノブイリ事故があってからも、20基近く増えています。
映画の中で、チェルノブイリ事故直後の映像が流れます。
防護服(現在の白い物とは違う)を来た人や、普通の作業服で作業している人が映っていました。
この人達は、その後どうなったのでしょう?
この映像を撮った監督は、その後、放射線の影響により亡くなったそうです。
とにかく、この事故の映像は衝撃でした。
事故により放射能汚染が広がり、当時も現在と同じ様に食の不安、反原発運動が広がっていました。
私は子供で、今は大人の私が子供に対して心配する様に、心配される状況だったのです。
全然、覚えていないけど…
まさか日本でも同じ事が起きるとは…

父親が原発を作る側だった主婦が、父の言葉の「原発は安全」と信じていたのに、
その父が骨がんを発症し4ヶ月で亡くなってしまいました。
「父は何故死んだのか」その謎を追う主婦の目を通して、
過酷な状況で働く地元福島の原発労働者の生の声や、ずさんな計画設計で作られた原発施設の告発が描かれていきます。

その内容は、今年の地震後に明らかになった福島原発の労働者へのずさんな管理体制そのまま!22年前から変わっていませんでした。
放射線量測定する機械を付けない、被爆放射線量の改ざん、現場での事故の補償無し、危険な作業は、下請けで働く地元労働者に押しつける東電や原発を建てている大手企業…
賃金の搾取。
原発という、とてつもない危険な施設で危険な場所で作業させながら、人が人と扱われている状況とは思えませんでした。
これは、根深い…

映画の中で主婦の方がおっしゃっていますが、
「企業は社員に向かって自信をもって、原発作業が安全と言えるのか」
「安全な場所で電気を思う存分使っている人は、その裏で危険な作業をしそれを見守る家族がいる事を知って欲しい」
当たり前にあると思っていた電気、永遠に続くと思っていた便利な生活、
何故それが成り立っているのか今まで考えた事もありませんでした。
この言葉は、胸に突き刺さりました。

建物自体もこの福島原発は欠陥や老朽化が指摘され、いわくつきの危険な怪物で、
津波が来なかったとしても、いつ暴れ出してもおかしくなかったと知りました。

最後に、まるで現在の状況を予言するかのようなナレーション、
「福島原発で大事故が起こったら、日本はチェルノブイリの様な危険地帯になる」
背筋が寒くなるくらい現在をぴたりと予言しており、
この時、原発の方向性を考える大きなきっかけだったのに結局は無視され、予言通りな状況に陥ったのが現在なのです。

しかも思ったのは、日本の事故後の対策が旧ソ連よりも劣っているのではないかという事です。
チェルノブイリ並のレベル7なのに、こんなに呑気でいいのか~と思わずにはいられませんでした。

ちょうど私が鑑賞に行った後に、この映画に出演されていた主婦の方が仙台市からいらしていて、上映後にお話をされました。
やはり、当時の気持ちと変わらず「作業員の安全性」「電気を使っている人への気持ち」、
「お金の無い田舎へ原発を作ろうとする人々」へのお話をされてました。
「今から30年前の暮らしに戻れというのは無理だから、国や企業は原発を動かすのであれば、
きちんと情報公開し安全と胸を張って言える状況にして欲しい」…
確かに、不信しか産まないニュースばかりで、原発を管理する全ての人々に対し信用ならない気持ちが広がりつつあります。
「誰かがなんとかしてくれる」ではなく、一人一人で自分達の置かれている状況や情報を見極めて自分達の未来を考えていく事が、
自分自身の身を守る事になるのではないかと感じた映画でした。


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