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白と黑

2024-06-13 21:00:00 | 近代
ご近所のアナベル。

白い紫陽花流行っているみたい。
最近良く見かけます。

日本人は白を特別の色と考えている人が多いそうです。

『日本書紀』孝徳天皇、白雉元年(654年)の条では、穴戸(長門)の国司である「草壁連醜経」という人物が白い雉を献じ、

「公卿より始めて、百官等に及るまでに清白けき意を以て、神祇に敬奉りて、並に休祥を受けて天下を栄えしめよ」と言って年号を「白雉」と改めたことが記されています。

また、光仁天皇も、即位にあわせて肥後国から白い亀が献上されたことで、ただちに年号を「宝亀」と改めたとされます。

それらが実際にあった出来事なのかはともかく、少なくとも日本書紀が作られた時代には、「白色には時代を変える力がある」というイメージがリアリティを持っていたことが伺えます。

また同時に、白色は、「誠」あるいは「内に含むことのない」心のしるしとしても用いられるようになりました。

用例としては、戦場での軍使の旗や、降伏を示す時の旗などです。

戦闘の場面で、降伏のしるしに白旗を掲げた事が、やはり『日本書紀』に書かれていて、最も古いもので、推古天皇の8年(600年)の条に、戦場で新羅王が白旗をあげたとされています。

日本では、さらに時代が下ると、白色は「内にあるものを外に表す」というニュアンスも含むようになってきます。こうしたニュアンスは、今でも「自白」「白書」などの言葉に見受けられます。

白色は、純粋さや混じりけのなさ、そしてそのような状態の心を表す色だったのです。

さて一方で、上記のような意味とは別に、白色には「死」「不気味さ」「虚無」などのイメージもあります。

これは、昔の人が骨の色から連想したのかも知れません。

例えば陰陽五行説では、白色は「秋」の色とされており、これは冷たさやほの白い印象を受けます。

「幽霊」の衣服も白衣というイメージが強いです。

こうした「幽霊は白衣を着る」というイメージが定着したのは江戸時代以降と言われてますが、はっきりとは分かっていません。 

1776年鳥山石燕「画図百鬼夜行」「幽霊」

ただ、近松門左衛門作の時代物の三傑作とされる作品のひとつ『雲女五枚羽子板』では、侍女の幽霊が出るところで、以下のように描写しています。

「塀の内より白鷺の飛ぶ如く、雪渦まいて提燈に、映ると斉しく女の姿、白衣白髪白妙の雪女とも謂いつべし」

『雲女五枚羽子板』の初演は宝栄5(1708)年とされています。
おそらく、この頃にはすでに「幽霊は白衣を着る」というイメージが一般的になっていたと考えられます。

「白色」には、吉兆としてのイメージと、不吉さを伴うイメージの二つの面があることが分かりました。まったく正反対です。

生まれた時には白い産着を着せられ、亡くなった時にも白装束を着せられます。

吉と不吉、生と死……。日本人の人生とは、実は「白に始まり白に終わる」もののようです。

長崎盛輝
色・彩飾の日本史: 日本人はいかに色に生きてきたかより

西洋音楽の中の「白」を探しましたが、やはりなかなかありません。
「雪」とか「白鳥」「白夜」なんて言うのはあるのですが…。

『白と黒で』(フランス語: En blanc et noir)という曲を見つけました。

クロード・ドビュッシーが1915年に作曲したピアノ二重奏のための曲です。

第一次世界大戦の衝撃と体調の悪化による1年ほどの作曲活動の停滞から立ち直り、ドビュッシーは友人のロベール・ゴデに「私は作曲せずにはいられないのです」と書き送ります。

作曲開始時の曲名はフランシスコ・デ・ゴヤの版画集『ロス・カプリチョス』

『ロス・カプリーチョス』:理性の眠りは怪物を生む <Los Caprichos>: The sleep of reason produces monsters

にちなんで『白と黒でのカプリス』というものでした。
第2曲の献呈から、前年に勃発した第一次世界大戦の影響がはっきり感じられる。

『白と黒で』という題名に関しては、鍵盤の白黒を指す、絵画(版画)の白黒を指す、の二つの説があります。

絵画の色説は、編集者のデュランへの手紙で、「カリプスの第二曲の色合いがあまりに黒のほうに押し流されて、ゴヤの『カプリチョス』と同じくらい悲劇的になってしまったので少し明るくした」と言っていること。

また別の友人への手紙で
「これらの作品は、色彩や感動を脱色しようとした結果、ベラスケスの灰色にまでなった」と語り、どちらも絵画を引き合いにしていることをその根拠としています。また各楽章には時局がらみの政治的意図をこめた引用が付されています。

ディエゴ ベラスケス(1599-1660年)人物画の背景を単色にして人物を浮き上がらせる手法を確立した。ここで言われた「ベラスケスの灰色」とは背景のことかな?
第1曲はセルゲイ・クーセヴィツキー,(1874- 1951年アメリカ合衆国で活躍したユダヤ系ロシア人指揮者、作曲家

に、第2曲は第一次世界大戦で戦死した陸軍中尉ジャック・シャルロ(出版者ジャック・デュランの甥)、第3曲はイーゴリ・ストラヴィンスキー(1882- 1971年)

に献呈されています。

1.Avec emportement (無我夢中で)
標題はジュール・バルビエとミシェル・カッレによる戯曲「ロメオとジュリエット」(シャルル・グノーの同名のオペラの台本)

の一節です。

2.Lent. Sombre (ゆるやかに。沈痛に)
標題にはフランソワ・ヴィヨン
(1431? - 1463年以降)15世紀フランスの詩人。中世最大の詩人とも、最初の近代詩人ともいわれています。


彼の「フランスの敵に対するバラード」の一節が掲げられています。

テーマにプロテスタントのコラールである「神はわがやぐら」
「神は我がやぐら」(1533年版)マルテイン ルター作曲。
が引用され、終盤では「ラ・マルセイエーズ」(フランス国歌)

を思わせる断片が入っています。

3.Scherzando (諧謔的に)
シャルル・ドルレアン
(1394 - 1465年)百年戦争期のフランスの王族。オルレアン公、詩人として知られています。

彼の詩の一節「冬よ、お前は嫌なやつだ」が掲げられています。