空飛ぶ自由人・2

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オペラ『デッドマン・ウォーキング』

2023年12月13日 23時00分00秒 | オペラ関係

今日は、午前中から、東銀座のここ↓へ。

METライブビューイング
ジェイク・ヘギー作曲の「デッドマン・ウォーキング」。

「デッドマン・ウォーキング」とは
死刑囚が死刑台に向かう際、
看守が呼ぶ言葉。
「死人が歩くぞ」。
この説明でも分かるとおり、
死刑囚の話。

ルイジアナ州の貧困地区の子どもたちの施設で働く尼僧のシスター・ヘレンは、
手紙で交流のあった死刑囚のジョゼフ・デ・ロシュを訪問する。
ジョゼフは、10代の恋人同士を夜の林で殺し、強姦した男。
ところが共犯者の兄貴分は敏腕の弁護士がついて終身刑、
ジョゼフは金がなくて国選弁護士がついたために死刑判決。
不公平だと無罪を主張するが認められず、死刑の執行が近づく。
恩赦委員会では、被害者家族にヘレンは強く非難される。

ジョゼフの母親や弟たちにも寄り添う。


ヘレンはジョゼフの精神カウンセラーとなり、
その死を見届けることに。
ヘレンの願いは、
罪を認めて赦しを請うこと。
それによって、初めて魂の平安が得られるからだ。


死刑当日。知事への嘆願も却下され、
死が決まったジョゼフを勇気づけるヘレン。
最後の面会でジョゼフはヘレンに殺人の事実を初めて認め、告白する。


そして、処刑の時のジョゼフの最後の言葉は、
被害者の遺族への謝罪の言葉だった・・・

修道女ヘレン・プレジャン↓のノン・フィクションが原作。


1995年には俳優のティム・ロビンス監督で映画化された。


ヘレン役はティムの妻、スーザン・サランドン。
アカデミー賞の主演女優賞を受けた。
死刑囚役のショーン・ペンは主演男優賞にノミネートされたが、
受賞は逃した。
(「リービング・ラスベガス」のニコラス・ケイジが受賞)
ベルリン国際映画祭で男優賞を受賞。

同映画を、私はアメリカで鑑賞。
もちろん日本でも観た。
本オペラ鑑賞前にも再見。

死刑制度の是非と、
被害者家族と加害者家族との葛藤を描くこの作品をオペラにするとは。
どんなオペラになっているんだろう、
という関心で観た。

原作があってのオペラ化だから、映画のオペラ化ではないが、
大体映画に寄り添った展開。
ただ、死刑囚の名前は変更されている。
映像を駆使し、舞台装置が見事で
天才的な演出。


映画では、金網越しの対話になるところを舞台的に処理。
時には、カメラマンが舞台に登場して、
大写しの映像を見せる。
ストーリーの引き写しでなく、
音楽的に見事にオペラ化しているのに、
すっかり感心した。
特に、恩赦委員会の場面で、
犯人家族、被害者家族のそれぞれの言い分に翻弄されるヘレンの姿。
それぞれの主張が歌声という感情の伴うもので表現され、
めくるめく感動を与える。


そして、最後のジョゼフの告白。
セリフでなく、歌での表現。
魂の放つ声。
胸を撃つ。

全体的に映画より宗教色が強く感じた。

とにかく、METの歌手の演技力には感服する。
ヘレン役のジョイス・ディドナート
ジョゼフ役のライアン・マキニー
それにジョゼフの母役のスーザン・グラハム
主役に加え、
被害者家族の4人、
ヘレンの上司など、みんな歌唱も演技もうまいことうまいこと。

2000年にサンフランシスコで初演。
この時はスーザン・グラハムがヘレンを演じた。
METでは23年目にして初の初演となる。
指揮はヤニック・ネゼ=セガン

12月14日まで松竹系劇場で上映中。
東劇のみ21日まで上映。

本作でMETライブビューイング2023ー2024シーズン開幕
ラインナップ9作は、下記のとおり。
 
ジェイク・ヘギー「デッドマン・ウォーキング」(MET初演)
 
アンソニー・デイヴィス「マルコムX」(MET初演)

ダニエル・カターン「アマゾンのフロレンシア」(MET初演)

ヴェルディ「ナブッコ」

ビゼー「カルメン」(新演出)

ヴェルディ「運命の力」(新演出)

グノー「ロメオとジュリエット」

プッチーニ「つばめ」

プッチーニ「蝶々夫人」
                                            MET初演が3本、
新演出が2本。

一方、ヴェルディが2本、プーチーニが2本。

 



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