空飛ぶ自由人・2

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METライブビューイング「魔笛」

2023年07月15日 23時00分00秒 | オペラ関係

昨日、午後から東銀座に出かけ、↓ここへ。

毎度おなじみ、METライブビューイング

今期最後の演目は、
モーツァルト「魔笛」

何を隠そう、
17年前、METライブビューイング、
最初の作品は、
「魔笛」だったのです。

2006年12月30日、場所は歌舞伎座
歌舞伎座とオペラという、
取り合わせが話題を呼びました。
もちろん、私は観ています。
ただ、その時の「魔笛」は、
「ライオン・キング」の演出家ジュリー・テイモアの演出で、
英語版。しかも、短縮版
(今回再見したら、あまりよくなかった)

今度のは、17年ぶりの新プロダクション。

「魔笛」は、「トゥーランドット」の次に好きなオペラなので、
これは、観なければ、と出かけた次第。

「魔笛」は、
モーツァルトが1791年、
生涯最後に完成させたオペラ
従来のイタリア語ではなく、ドイツ語で書かれ、
歌の間にセリフが入るジングシュピール(歌芝居)。
しかも、王室ではなく、
町の劇場で上演された、庶民向けの冒険物語。
興行主・俳優・歌手のエマヌエル・シカネーダー一座のために書いたものです。

その232年も前の作品
今だに上演されるのですから、
作曲家というのは、幸福な職業です。

ただ、全世界でやり尽くされた感のあるものなので、
奇抜な、というか、ヘンな演出がされがちです。

今回もイギリスの俳優で演出家のサイモン・マクバーニーによるプロダクションは、
ちょっと妙な演出をしているらしい。
それは覚悟して、モーツァルトの音楽を聴くという姿勢で出かけました。
演出家といえども、音楽だけは変えられませんからね。

まず、オーケストラピットの床を高くして、
オケが観客席から見える形に。
モーツァルトの時代はそうだった、
ということらしい。
黒板にチョークで書く文字をプロジェクターで投映したり、
影絵を使ったり、
効果音を出す人を舞台に上げて、その操作するところを見せ、
紙をひらひらさせて、鳥を表現したりする。


舞台には巨大な一枚板が置かれ、それが上下し、
時には滑り台のように人が落ちる。


衣裳は現代服
3人の侍女は迷彩服を着ています。
ザラストロや弁者やモノスタトスは、スーツにネクタイ。
夜の女王に至っては、老婆のメイクで車椅子で登場。
3人の童子は、あばら骨が浮き出て、髪もぽよぽよの亡者のような出で立ち。


何ででしょうね。
夜の女王がパミーナに渡す「ナイフ」は、台所包丁↓。


何ででしょうね。
そして、試練の場で、タミーノとパミーナは、宙乗りを展開。

でも、観客には受けていました。
初演の時も、観客が喜ぶいいろいろな仕掛けをしたらしいから、
まあ、いいでしょう。

歌手陣は、さすがメトで、素晴らしい歌唱を聞かせます。
やはり、「夜の女王」の第2アリアは聴かせました。
ただ、タミーノは、どう見ても役柄ではない体型で、
歌はいいけど、視覚的に受け入れにくい。


だって、出川○朗が美男子の役をやったら、
やっぱりおかしいでしょう?
なお、合唱は、いつものハイレベル。
これは合唱指導の功績。

魔法の笛は、タミーノは吹かず、
オケのフルート奏者が演奏。
魔法の鈴の音色は、鍵盤式のグロッケンシュピールで、
これもオケが担当。
オケが奏でるのは、まあ普通ですが、
少なくとも役の人は楽器を吹く(叩く)ふりをする。
しかし、今度の場合、そうでないことを、あっさり見せる。
何だかなあ。

と、不満は数々あれども、
やはり、モーツァルトの音楽は素晴らしい
次々と繰り出される、美しいメロディーに心が震える。
人類は、こんなに素晴らしい音楽を生み出すことが出来たんだ、
と感動の涙。

今期(2022~2023)のMETライブビューイングは、本作で終わり。

来期のスケジュールが発表されていました。

ジェイク・ヘギー「デッドマン・ウォーキング」 MET初演
アンソニー・デイヴィス「マルコムX」 MET初演
ダニエル・カターン「アマゾンのフロレンシア」 MET初演
ヴェルディ「ナブッコ」
ビゼー「カルメン」 新演出
ヴェルディ「運命の力」 新演出
グノー「ロメオとジュリエット」
プッチーニ「つばめ」
プッチーニ「蝶々夫人」

3つのMET初演に、2つの新演出。
えっ、「デッドマン・ウォーキング」がオペラに? 

1995年の映画ですが、
殺人犯の死刑囚と修道女の交流を通じて、
魂の救済を描く、この作品。
ティム・ロビンスの監督で、
スーザン・サランドンがアカデミー賞主演女優賞を、
ショーン・ペンがベルリン国際映画祭で主演男優賞を受賞したもの。
どんなオペラになっているのでしょうか。