昨日、午後から東銀座に出かけ、↓ここへ。
毎度おなじみ、METライブビューイング。
今期最後の演目は、
モーツァルトの「魔笛」。
何を隠そう、
17年前、METライブビューイング、
最初の作品は、
「魔笛」だったのです。
2006年12月30日、場所は歌舞伎座。
歌舞伎座とオペラという、
取り合わせが話題を呼びました。
もちろん、私は観ています。
ただ、その時の「魔笛」は、
「ライオン・キング」の演出家ジュリー・テイモアの演出で、
英語版。しかも、短縮版。
(今回再見したら、あまりよくなかった)
今度のは、17年ぶりの新プロダクション。
「魔笛」は、「トゥーランドット」の次に好きなオペラなので、
これは、観なければ、と出かけた次第。
「魔笛」は、
モーツァルトが1791年、
生涯最後に完成させたオペラ。
従来のイタリア語ではなく、ドイツ語で書かれ、
歌の間にセリフが入るジングシュピール(歌芝居)。
しかも、王室ではなく、
町の劇場で上演された、庶民向けの冒険物語。
興行主・俳優・歌手のエマヌエル・シカネーダー一座のために書いたものです。
その232年も前の作品が
今だに上演されるのですから、
作曲家というのは、幸福な職業です。
ただ、全世界でやり尽くされた感のあるものなので、
奇抜な、というか、ヘンな演出がされがちです。
今回もイギリスの俳優で演出家のサイモン・マクバーニーによるプロダクションは、
ちょっと妙な演出をしているらしい。
それは覚悟して、モーツァルトの音楽を聴くという姿勢で出かけました。
演出家といえども、音楽だけは変えられませんからね。
まず、オーケストラピットの床を高くして、
オケが観客席から見える形に。
モーツァルトの時代はそうだった、
ということらしい。
黒板にチョークで書く文字をプロジェクターで投映したり、
影絵を使ったり、
効果音を出す人を舞台に上げて、その操作するところを見せ、
紙をひらひらさせて、鳥を表現したりする。
舞台には巨大な一枚板が置かれ、それが上下し、
時には滑り台のように人が落ちる。
衣裳は現代服。
3人の侍女は迷彩服を着ています。
ザラストロや弁者やモノスタトスは、スーツにネクタイ。
夜の女王に至っては、老婆のメイクで車椅子で登場。
3人の童子は、あばら骨が浮き出て、髪もぽよぽよの亡者のような出で立ち。
何ででしょうね。
夜の女王がパミーナに渡す「ナイフ」は、台所包丁↓。
何ででしょうね。
そして、試練の場で、タミーノとパミーナは、宙乗りを展開。
でも、観客には受けていました。
初演の時も、観客が喜ぶいいろいろな仕掛けをしたらしいから、
まあ、いいでしょう。
歌手陣は、さすがメトで、素晴らしい歌唱を聞かせます。
やはり、「夜の女王」の第2アリアは聴かせました。
ただ、タミーノは、どう見ても役柄ではない体型で、
歌はいいけど、視覚的に受け入れにくい。
だって、出川○朗が美男子の役をやったら、
やっぱりおかしいでしょう?
なお、合唱は、いつものハイレベル。
これは合唱指導の功績。
魔法の笛は、タミーノは吹かず、
オケのフルート奏者が演奏。
魔法の鈴の音色は、鍵盤式のグロッケンシュピールで、
これもオケが担当。
オケが奏でるのは、まあ普通ですが、
少なくとも役の人は楽器を吹く(叩く)ふりをする。
しかし、今度の場合、そうでないことを、あっさり見せる。
何だかなあ。
と、不満は数々あれども、
やはり、モーツァルトの音楽は素晴らしい。
次々と繰り出される、美しいメロディーに心が震える。
人類は、こんなに素晴らしい音楽を生み出すことが出来たんだ、
と感動の涙。
今期(2022~2023)のMETライブビューイングは、本作で終わり。
来期のスケジュールが発表されていました。
ジェイク・ヘギー「デッドマン・ウォーキング」 MET初演
アンソニー・デイヴィス「マルコムX」 MET初演
ダニエル・カターン「アマゾンのフロレンシア」 MET初演
ヴェルディ「ナブッコ」
ビゼー「カルメン」 新演出
ヴェルディ「運命の力」 新演出
グノー「ロメオとジュリエット」
プッチーニ「つばめ」
プッチーニ「蝶々夫人」
3つのMET初演に、2つの新演出。
えっ、「デッドマン・ウォーキング」がオペラに?
1995年の映画ですが、
殺人犯の死刑囚と修道女の交流を通じて、
魂の救済を描く、この作品。
ティム・ロビンスの監督で、
スーザン・サランドンがアカデミー賞主演女優賞を、
ショーン・ペンがベルリン国際映画祭で主演男優賞を受賞したもの。
どんなオペラになっているのでしょうか。