Yes,We Love Science!

自然科学大好き!「自然」は地球、宇宙、人、社会、宗教...あらゆるものを含みます.さあ、あらゆる不思議を探検しよう!

なぜ?赤ワインに漬けると超伝導化!「鉄テルル系超伝導体」

2010年08月06日 | 化学
科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学情報を、くわしく調べやさしく解説!毎日5分!読むだけで、みるみる科学がわかる!
 超伝導物質とは?
 1911年にオランダの物理学者カメリン・オンネスが水銀を約4K(-269℃)まで冷やしたときに、電気抵抗がゼロになることを発見した「超伝導物質」。超伝導物質には、「金属系」、「銅酸化物系」、「鉄酸化物系」のほか最近は「有機化合物」がある。

 銅酸化物系は、1986年、ドイツのベドノルツとミュラーが、ランタン、バリウムを含む銅酸化物系のセラミックスが30Kで超伝導状態になると報告したのが始まり。電気抵抗がゼロになる温度「臨界温度」(転移温度、Tc)が高かったことから、高温超伝導研究ブームの火付け役となった。

 2006年、東京工業大学の細野秀雄教授らのグループが、鉄を含む化合物(LaFePO;オキシニクタイド)が6Kで超伝導物質になると発表した。この鉄酸化物超伝導体の登場は、手詰まり感があった高温超伝導に新たな息を吹き込んだ。というのも、磁性元素の鉄を含む物質は超伝導にはならない、という常識を覆すものだったからである。オキシニクタイドは、世界中で今、注目されている物質である。

 有機化合物でも超伝導
 一方、金属ではない有機化合物系では、1991年、米国ベル研究所のグループが、炭素原子が60個連なるサッカーボール状の構造をもった「C60」(フラーレン)に金属をドーピングした物質が、18Kで電気抵抗がゼロになることを発見した。

 同じ年、NEC基礎研究所のグループは、C60にルビジウム、セシウムを注入した「RbCs2C60」で臨界温度が、常温で33Kまで高められることを確認した。その後、高圧下で、「Cs3C60」が40Kまで高くなることもわかってきた。ほかにグラファイトなどの超伝導物質も報告されている。

 最近では、岡山大大学院の久保園芳博教授(物性物理化学)と群馬大大学院の山路稔准教授(応用化学・生物化学)らの研究チームが「ピセン」(C22H14)という有機化合物に、金属をドーピングしたところ、超伝導現象を発見している。

 なぜ?赤ワインで超伝導化
 今回、鉄を含む化合物の一種を赤ワインなどの飲用酒に漬けた後に冷やすと、電気抵抗がゼロになる超伝導状態になることを、物質・材料研究機構(茨城県つくば市)の研究チームが突き止めた。

 熱を帯びずに大量の電流を流せる超伝導のメカニズム解明に貢献する成果。8月1日から米ワシントンで開かれる国際会議で発表する。

 実験に使われたのは鉄、硫黄、テルルの化合物。このまま冷やしても、超伝導にはならないが、研究チームは何らかの化学処理をすれば超伝導になると予測。エタノール溶液のほか、ワイン、ビール、日本酒、ウイスキーに浸し、電気抵抗を測定した。

 その結果、すべての場合で絶対温度8度(零下265度)に冷やせば超伝導状態が生じることを確認。超伝導になった化合物の割合は、赤ワインに浸した場合が最高で、エタノール溶液の7倍。白ワインはエタノール溶液の5倍だった。

 研究チームは、酒の味などをつくる不純物が化合物の結晶に入り込んだ結果、超伝導になった可能性があると見ている。(2010年7月28日09時18分  読売新聞)

 磁性体と反磁性体
 2008 年に、東京工業大学の神原 陽一博士(現在、慶應義塾大学理工学部専任講師)らによって、鉄系超伝導体LaFeAs(O,F)が発見された。この発見を契機に、FeAs、FeP、FeSe をベースにした類似化合物に次々と超伝導が見出され、鉄系超伝導は、第二の高温超伝導体の鉱脈として期待されている。

 一方、FeTe は、FeSe などの鉄系超伝導体と類似構造を持つにもかかわらず、反強磁性磁気秩序が邪魔をして超伝導を示さない。そこで、当研究グループではこれまでに、S をドープしたFeTe1-xSxを固相反応法で合成し、反強磁性磁気秩序は消失するものの超伝導は出現しない、いわば、磁性体と超伝導体の間に位置する物質を得ることに成功している。

 超伝導と非超伝導の中間体
 加えてこの物質において、長期間空気中に放置すると超伝導が出現するなどの大変興味深い現象を観測しており(PHYSICAL REVIEW B 81, 214510 (2010))、何が超伝導を発現させるのかを探る上で大変重要な物質と考えられた。

 今回、本研究グループでは、超伝導と非超伝導の間に位置する物質としてFeTe1-xSxに再度着目し、固相反応法により試料を作製した。得られた試料は超伝導を示さないが、酒に浸し70℃程度に加温すると、翌日には超伝導体(Tc~8K)になることが分かった。赤ワイン、白ワイン、ビール、日本酒、焼酎、ウイスキーについて比較実験を行った結果、全ての酒で超伝導が出現し、赤ワインが最も優れていることが分かった。

 本発見は、この鉄テルル系超伝導体FeTe1-xSxに超伝導を発現させるために、何が必要であるかを検討する上で大変重要な知見を与えてくれるものと考えている。現在、お酒の中のどの成分が作用して超伝導が発現しているか研究中であるが、今後、原因物質を明らかにすることにより、更なる新超伝導体開発への足がかりとなるものと期待される。(科学技術振興機構:JST)

 

参考HP 物質・材料研究機構「お酒が誘発する鉄系超伝導」・Nature「新しい有機化合物の超伝導物質を発見!」 ・東京大学「世界初の芳香族有機超伝導体

超伝導 (多体電子論)
黒木 和彦,青木 秀夫
東京大学出版会

このアイテムの詳細を見る
有機導電体の化学―半導体、金属、超伝導体 (シリーズ 有機化学の探検)
斎藤 軍治
丸善

このアイテムの詳細を見る

ブログランキング・にほんブログ村へ ランキング ←One Click please



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。