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猛毒のカビ「クリプトコッカス」の新種、北米西海岸で拡大

2010年07月12日 | 微生物・ウイルス
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 猛毒の真菌、アメリカで既に6人死亡
 日本では、口蹄疫がまだ終結していないが、海の向こうでは人に感染する猛毒のカビが話題となっている。

 強毒性で致死性の真菌株をアメリカ国内で新たに発見したとする最新の研究が発表された。その名はクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)。この真菌株によってすでにオレゴン州で6人が死亡しており、感染地域がカリフォルニア州北部に拡大する可能性が高く、場合によってはさらに広がる恐れもあるという。

 この真菌株は、パプアニューギニア、オーストラリア、南アメリカの一部など熱帯や亜熱帯地域が原産の空中浮遊菌であるクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)の新しい菌株だ。北アメリカでは、古いタイプの菌株が1999年にカナダのブリティッシュ・コロンビア州で初めて発見されている。この真菌が北アメリカに上陸した経緯も、温帯地域で繁殖できる理由もわかっていない。

 研究の共著者でデューク大学ジョセフ・ハイトマン研究室の大学院生エドモンド・バーンズ氏は、「このようなことがこの地域で発生し、健康な人々を襲い、地理的に拡大しつつあるのは憂慮すべきことだ」と話す。

 真菌と細菌・ウイルスの違い
 真菌症は細菌やウイルスによる感染症ほど一般的ではなく、通常は免疫系が弱った人が発症する。そのため、それまで健康だった人々が死亡したオレゴン州の最近の症例は非常に気がかりだ。クリプトコッカス・ガッティは微生物で、これを吸い込むことによって感染するが、これを防ぐ手立ては少ない。

 研究によれば、新種の菌株に感染した場合、抗生物質で治療することはできてもワクチンなどの予防措置は存在しない。また、ブリティッシュ・コロンビア州の疾病管理センターは、「クリプトコッカスの感染に対して特別の予防策はないが、症状が長引いたり重くなったりした場合は早めに医師(動物の場合は獣医)の診断を受けて治療してほしい」と呼びかけている。

 この真菌に感染すると、数カ月の潜伏期間を経て、主にひどい咳や息切れなどの症状が起きる。ただ幸いなことに、ウイルス感染と異なり、真菌による感染症は人から人に伝染しない。

 アメリカでクリプトコッカス・ガッティの感染例が初めて確認されたのは2005年だが、これがオレゴン州で生まれた新種の菌株であることは、今回の研究で行われた遺伝子分析で初めて明らかになった。

 交配により続々と新種
 これまで新種菌株によるものと確認された感染例は21件あり、その約25%に当たる6人が死亡している。一方、ブリティッシュ・コロンビア州の菌株では218人の感染者が確認され8.7%の19人が死亡しており、現在のところ新種の菌株の方が死亡率が高い。家畜や野生動物も感染しているという。

 この新種菌株がなぜこれほど重い症状を引き起こすのかは不明だが、「細菌にない真菌の特徴は、互いに交配しあうことだ」とバーンズ氏は指摘する。ヒトと同様に、ほぼすべての真菌の子孫は交配によって遺伝子配列が変わり、異なった特性を示すようになる。従って、急速に感染が拡大するこの“スーパー真菌”はクリプトコッカス・ガッティの交配によって生まれた可能性がある。

 発生の経緯がどのようなものであれ、熱帯からやって来たこの真菌は「少なくとも当分の間は居座り続けるだろう」と同氏は警告する。この研究はオンラインジャーナル「PLoS Pathogens」誌で2010年4月22日に公開された。 (National Geographic News 4月23日)

 クリプトコッカス症とは?  
 クリプトコッカス症とはクリプトコッカス属に属する酵母様真菌の感染を原因とする人獣共通感染症。ヒト、イヌ、ネコなどに感染する。主にCryptococcus neoformansによる呼吸器症状が認められる。クリプトコッカス属は土壌や植物などの環境中に広く分布する。鳥類は感染しないが保菌状態にある。ハトの糞が感染源になることで有名になった。

 クリプトコッカス菌は世界中に存在しているが、エイズの流行が始まるまでは、この感染症は比較的まれであった。エイズのほか、ホジキン病やサルコイドーシスの患者、長期にわたってコルチコステロイド薬による治療を受けている人など、免疫力・体力の低下している人に感染しやすい。日和見感染の一つと知られている。似た病名にクリプトスポリジウム症があるが、異なる病気。致命率は約12%。アメリカ合衆国では、患者の85%が、HIV感染者から発生している。

 症状
 病原体を吸い込み、肺で感染することが多いが、不顕性感染の場合もある。鼻汁の排泄、鼻孔に肉芽腫。病原体が肺から移動し、髄膜炎、脳炎を起こす。クリプトコッカス性髄膜炎の症状は、頭痛、発熱、無気力、昏睡、人格変化、記憶障害。

 分泌物などの検査材料に墨汁染色を施し、莢膜を有する酵母様真菌の確認する。組織と体液(血液、髄液)からの抗体検出。治療には、アムホテリシンB、フルコナゾールなどの抗真菌剤を使用する。(Wikipedia)

 

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