報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

ベネズエラ、チャベス大統領の戦い

2006年05月07日 23時08分02秒 | ■中南米カリブ
前回と前々回、ベネズエラについて触れたので、少しベネズエラについて述べておきたい。
日本ではベネズエラのニュースは皆無に等しく、たいへんイメージしにくい国だと思う。
僕は二回ばかり訪れている。
といっても、ギアナ高地のロライマ山に登りたくて行ったのだが。
目的は達成できなかったものの、ギアナ高地の神秘的な大自然に触れただけでもたいへん満足している。
いつかロライマ山に登りたいと思っている。


べネズエラは、OPECに加盟している産油国で、確認埋蔵量は世界第6位。輸出総額の約80%、国内総生産の約25%を石油が占めている。アメリカにとっては、カリブ海を挟んだ自分の庭先に巨大な油田があるわけだ。そしてそこから全石油輸入の4分の1を輸入している。

現大統領ウーゴ・チャベスは、石油収入の国民への分配を掲げ、精力的に貧困対策に取り組んでいる。そして、徹底した反米姿勢をとり、中南米諸国との連帯に励んでいる。アメリカ政府がこれを放置しておくはずがない。


(コンドリーサ)ライスは、運送業者ストライキによりベネスエラは燃えており、そのストライキは国際支援を必要としている、と述べた。1970年代のチリにおいてと同様、CIAの黒い手が運送業者団体に潜入している。
(中略)
これは漠然としているが、ライスが本当に意味したことは、ボリバル革命が強固となり、その主義思想が南米大陸、カリブ諸国と中米に広がるなか、ベネスエラと、その石油埋蔵と政治の舞台の統制を米国が失ったということである。
http://agrotous.seesaa.net/article/14158101.html#trackback

 ベネズエラでは国有石油会社ばかりでなく、なぜ労組まで反大統領の立場をとるのだろうか?それは、ベネズエラが、米国の全石油輸入の4分の1を供給しており、とうていチャベスのような反米主義者の支配をみとめることが出来ないからである。

チャベスが大統領に選出されて以来、米国議会から年間87万ドルにのぼる「民主主義のための国家基金」と名付けた資金がベネズエラの石油労組とそのカルアロス・オルテガ会長に送られてきた。 このオルテガ会長こそは、昨年(2002年)4月の失敗に終わったクーデタで"3日大統領"に任命されたビジネスマンの親しい友人であり、今回のストの扇動者である。
http://www.eco-link.org/jubilee/genko030204_1.htm


アメリカは、ベネズエラ国内で労働運動を組織して、国内世論がチャベス大統領に対抗しているという構図に見せかけたいようだ。アメリカ政府は、ベネズエラ国内でさまざまな工作を行っていると考えて間違いはないだろう。

今年の12月に行われる大統領選挙では、選挙妨害や工作が行われる可能性は高い。アメリカ国内には、”チャベスを暗殺せよ”という声もある。

チャベス大統領は1998年に民主的な選挙で選ばれた指導者だ。
2002年に、アメリカにバックアップされたクーデターで失脚したものの、市民はたった2日でチャベスを大統領の椅子に戻した。大部分の市民は、富裕層が所有するメディアの扇動には乗らなかった。

現在、ベネスエラは無料の国民医療サービスを提供している。世界で問題を起こしている「民営化」にも背を向ける政策を執っている。貧困対策にも十分な費用を積み立て、新しい学校や住宅の建設も進んでいる。

特筆すべきは、「南米のアル・ジャジーラ」と言える「テレスル」という独自の衛星テレビ局を実現したことだ。テレスルはベネズエラ、キューバ、ウルグアイ、アルゼンチンが参画した。現在、24時間衛星ニュースを供給している。これまで、欧米のメディアに独占されていたニュースを自らが発信できるようになったことの意味は大きい。

自国に都合のよい情報だけを独占的に発信したいアメリカ政府は、テレスルに強い警戒心を表している。

バウチャー米国務省報道官は(2005年5月)23日、「ベネズエラのチャベス大統領とキューバのカストロ国家評議会議長が、米国に対抗するための道具として利用できるという点を憂慮する」と述べた。
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2005052873618

アメリカ政府は、アル・ジャジーラのカブール支局とバクダッド支局を爆撃し、記者一名を殺害した。そしてカタールのアル・ジャジーラ本社まで爆撃しようとした。アメリカにとって、情報発信の独占というのはそれほどの重要事項なのだ。別の見方をすれば、CNNやFOXその他は、アメリカに都合の良い情報しか発信していないということだ。

ラムズフェルド国防長官は、チャベス大統領をヒットラーになぞらえているようだが、CNNやFOXが流す情報の中ではチャベスはそのような存在になっているはずだ。そうした情報にしかアクセスできない国は、実際、南米に新たなヒットラーがいると信じるだろう。

今年の12月には、ベネズエラで大統領選挙が行われる。ベネズエラでの既得権益を取り戻したい富裕層と、南米での覇権を強化したいアメリカ政府は、反チャベス・キャンペーンをさらに強力に進めるだろう。あるいは、チャベス大統領に対する軍事的なアクションもあるかもしれない。

チャベス大統領とベネズエラ国民の奮闘に期待したい。


Emerging Revolution in the South
(ベネズエラに関する記事を精力的に翻訳されているブログ)
http://agrotous.seesaa.net/
telesulウェブページ
http://www.telesurtv.net/
「チャベス政権」を襲ったクーデターの裏側
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Bushwar/venezuela_coup.htm


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6 コメント

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ベネズエラ (Spongekumi)
2006-05-08 21:29:46


実はかなり思い入れのある国です。



大切な人がいる国なので・・・。



でもベネズエラのことを全然知りませんでした。



中司さんのブログで初めて詳細を知ることができ、今までの自分の無知を恥じるとともに、ベネズエラをアメリカとの深い関係に驚きました。



アメリカはどうも好かないんですが、あの自由なイメージのなかに何かものすごく黒いものがうごめいている気がしてなりません。。。(というか絶対黒いですよね・・)



今日はまた中司さんにいい刺激をいただきました。

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 (雅無乱)
2006-05-09 12:50:09
応援したいです!
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Spongekumiさんへ (中司)
2006-05-09 13:44:48
ベネズエラは南米諸国の中でも、かなりイメージしにくい国ですね。二回訪れたものの、かなり以前のことで、カラカスとギアナ高地しかしりません。もう少しゆっくり見ておけば良かったと少々後悔しています。ベネズエラは物価が高くて長居はできませんでした。



ベネズエラは、アメリカの庭先に位置し、天然資源が豊富がゆえに、アメリカの政策に翻弄されてきました。あまり話題にならないものの、アメリカの安全保障にとって非常に重要な国です。何と言っても、アメリカの石油輸入の四分の一もの石油を供給しているのですから。



911以降、アメリカは強引な覇権拡大をめざして、世界中を屈服させていますが、この時期に、ベネズエラがアメリカの覇権に挑戦するというのは、一見、無謀にさえ思えます。



しかし、いまだからこそ、アメリカの覇権拡大に誰かが歯止めをかけなければならないと言えます。その役割を、チャベス大統領とベネズエラ国民が買って出たと言えるかもしれません。



中米、カリブ、南米の多くの国がチャベス大統領に合流しはじめています。こうした動きがほとんどメディアに載らず、われわれが知らないのも、ある意味当然のことだと思います。誰かが情報をシャットアウトしているからです。



日本からのアクセスはかなり不便ですが、ぜひ一度訪れて見てくださいね。オリノコ川のドラドという魚がけっこうおすすめです。
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雅無乱さんへ (中司)
2006-05-09 13:46:01
中南米・カリブは、これから巨大なうねりが生じるかもしれません。

アメリカの何たるかを、一番体で理解している国と言えますから。

なかなか情報が手に入りにくいですが、

チャベス大統領とベネズエラはちょっと目が離せない存在です。
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ベネズエラ (Mee)
2006-05-11 21:00:21
チャベス大統領が歯に衣着せぬ発言をしているなぁ、「あんな人間は死んだ方が良い」とか言っているアメリカの政治家が居るけど、大丈夫かなぁ、とは思っていましたが、メディアの煽動で大統領の座を追われたことがあったとは知りませんでした。



アメリカは、南北アメリカ大陸の国々全てが親米的で無いと気が済まないのでしょうね。



「テレスル」は面白いですね。情報を自分たちで集めて、自分たちで発信するというのは独立した文化を培う上でも重要なことだと思います。
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Meeさんへ (中司)
2006-05-11 22:45:03
チャベス大統領に対するクーデターが勃発した時、アイルランドのテレビクルーが現地にいたのですが、このクルーがものすごくすばらしいドキュメントを作っています。世界中で賞を獲得しました。



NHKBSでも放映されました。実はそのドキュメンタリーで知ったのですけどね。あのドキュメントがなければ、僕もベネズエラに興味を持っていたかどうか。DVDになっていないか探してみたいです。
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