倉野立人のブログです。

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東電原発処理水海洋放出「海水浴シーズン避けた方が」の波紋・違和感

2023-07-09 | 日記

2011年3月11に発生した「東日本大震災」に伴い、地震や津波や甚大な被害を受けた 東京電力福島第一原子力発電所において、溶け落ちた核燃料デブリを冷却するための注水や原子炉建屋などへの雨水や地下水の流入によって汚染水が発生し、ここから放射性物質の大半を取り除いたあとに残るトリチウムなどを含む処理水が増え続けているのは周知のことです。

その処理水は 1日あたり100tをゆうに越える量が発生しており、このままゆけば年内~年明けにかけて保管用タンクが満杯になることが報告されています。

この状況に鑑み東電ならびに政府は 福島第一原発の建屋内にある放射性物質を含む水について、トリチウム以外の放射性物質を安全基準を満たすまで浄化した水(ALPS処理水)として安全基準を満たし、さらに海水で大幅に薄めたうえで「海洋放出」することを決定しています。

 

 

 

 

これを受けるなどし、さきにIAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長が来日し 現地(福島第一原発)を視察したうえで「海洋放出は科学的根拠に基づくものであり、国際慣行に沿うと評価される。現地では処理水放出の準備ができており 政府がどのような決定をしても速やかに対応できる準備ができていると感じた。」としたうえで、同機関は福島に常設の事務所を設け 今後も処理水放出の状況を確認していくこと、そして風評被害などを懸念する地元に対しては「信頼を獲得するために透明性を持って説明を繰り返す」と強調したことが伝えられています。

併せて、放出計画に関する評価を盛り込んだIAEA包括報告書を日本政府に説明し、それを受けた政府・東電は 夏ごろの放出開始の〝お墨付き〟を得る段取りとなっていることになっているようです。

 

 

 

これらの〝経緯〟をもってすれば、東電福島第一原発処理水の海洋放出は 安全が確保されていると思われるところです。

所管の経済産業省も、HP等で その安全性のPRに努めています。

 

 

 

放出後も、水質などのデータの客観性を確保するため「第三者(機関)による確認」を開始・継続することを表明しています。

 

 

 

また、専門家は「人体への影響があるとされる トリチウムを含む水も、(人体に入っても)10日後には約半分が排出(排泄)されるなどして 体内にたまり続けることはない」と述べるなどしています。

 

 

 

しかし、関係者 とりわけ原発が面する海に関わる漁業関係者や関連産業の方々の懸念は未だ払拭されているとは言えず、今回の政府決定に対しても反対や懸念の声を上げるに至っています。

さきには 東北地方の生協などに従事する方々が25万筆を超える(処理水海洋放出)反対の署名を集めたことが報じられるなど、処理水海洋放出への不安は払拭されたとは言い難い状況であることが伝えられています。

 

 

 

 

そんな中、いま永田町で連立政権に立つ与党の代表が「福島第1原発の処理水を海洋放出する時期について、直近に迫った海水浴シーズンは避けた方が良い。」と発言、これが思わぬ波紋を広げているとのことです。

おそらく この政治家は、海洋放出の時期について せめて人びとが海に繰り出す時期を避けても(延ばしても)大勢に影響なく、その位の配慮をしてもイイんじゃないか、との〝軽い親切心〟で言ったのかもしれません。

が、その〝政治家の一言〟が、(海洋放出に)ナーバスになっている漁業関係者などの琴線に触れることになってしまいました。

「ほら、やっぱり人体に影響があるんじゃないか。」

「海水浴シーズンの放出はダメで 他のシーズンならOKというのは理屈に合わない。全てのシーズンがダメということだ。」などと、再び(海洋放出への)不信感が再燃・爆発することとなっています。

このことには、さきに発した政府・東電の〝約束〟が伏線となっています。

そもそも、政府や東電は2015年に 福島県漁業協同組合連合会に「関係者の理解なしには、いかなる処分もしない」と文書で回答しているのです。

言うまでもなく、現時点で関係者の理解は得られておらず 海洋放出そのもが認められていません。そこに「海水浴シーズンはダメ」という与党議員(政党代表)の発言は、政府・東電が半ば強引に海洋放出の計画を進めてきたことを裏付けることにもなってしまい、まさに〝覆水盆に返らず〟となってしまいました。

 

これを聞いた私は、政治家のセンセイ方の〝当事者意識の欠如〟を感じざるを得ませんでした。

海洋放出は既に決まったこと。でも 気の毒だから(放出時期は)ちょっとだけ遅らせてあげるのが親切ってもんじゃないの。

「海水浴シーズンを避けたら」この発言は 関係者に配慮しているようで、配慮していない。

いわば〝上から目線〟の目溢(めこぼ)し発言と取られても仕方ないところでありましょう。

 

政治(行政)では、ときに厳しい判断を示さなければならないこともあるでしょう。

でも その時は、相手の立場に立って当事者意識を共有し そのうえで問題点を共に考え、相手が納得できるまで真摯に向き合うことが求められていると思います。

そのような真摯な行動無しに「絵」だけを描いてみせても、関係者は納得することは無いでしょう。

「オレは関係ないけど、せいぜい頑張ってね。」そんな内心をもった言葉のかけ方は、不信と不満の温床にしからならないことを肝に銘じなければなりません。