倉野立人のブログです。

日々の思いを、訥々と。

重大事案の度に問われる〝行政管理の盲点〟

2022-05-05 | 日記

春の行楽シーズンに まさに冷や水を浴びせることとなった、知床遊覧船事故。

事故発生以降、刻々と寄せられる情報の数々を 私たちは驚きと ときに憤りをもって知ることとなっています。

乗客と何の関係もない私たちまでも 何というか〝行き場のない思い〟にさせられているのですから、ご家族はじめ ご関係の方々の心境はいかばかりのものでありましょうか…察するに余りあるところです。

 

(当該の船舶)

 

 

今回の いわば起こってはならなかった事故の原因には、私が知る範囲の中でも 午後の荒天が予見されていたのに出航させるなど、判断が甘かったこと・事務所の無線設備(アンテナ)が壊れていたのに放置するなど 施設管理(安全運行管理)を怠っていたこと・拝金主義により 少々の危険は「条件付き出航」との(この社だけの)勝手な基準で常態的に出航させていたこと・経験者を解雇し、未熟な者を船長として常用していたこと・過去 船底に付いた「傷」の修理が不完全だったこと・船長のもつスマホが現場海域では圏外だったこと 等々、乗客の命を預かる業務であるハズなのに まさに杜撰(ずさん)そのものの運行実態を続けていたことが列挙されており、乗客の方々は こんな船に乗り合わせたのが まさに不運としか言いようのないところです。

 

さらに、私たちが憤りを覚えるのが 事(こと)の重大さに比しての経営者の不誠実な対応・態度でありましょう。

その(態度・対応の)内容については 今さら触れるまでもありませんが、あんな対応では 遺族は納得するどころか、不信と不満・怒りと さらには嘆きすら増幅させることにしかなっていないと、画面越しに見る こちらの方の肩が震えるほどであります。

今後は、未だ行方不明となっている乗客の捜索や 水深100mにも及ぶ海底で発見された船体の引き揚げなど、乗客ならびにご関係者の意に副(そ)える対応が為(な)されるかが 引き続き注目されるところでありますが、これまでの運営側の態度からして 懐疑的にならざるを得ないのは残念に尽きないところです…。

 

但し ここでもう一方の問題として考えなければならないのは、こんな重大な事故が起きる前 もっと言えば、こんな事故が起きさえしなければ、こんなずさんな経営内容であっても 関係法令の範囲内であるとして許認可されており、いわば堂々と運行できていたことではないかと思うところです。

おそらく今後は、当然ながら かかる観光遊覧船事業の(運行管理の)許認可等の基準の見直し等の厳しい措置が講じられることになるでしょうが、それでは 遅きに失(しっ)したと言わざるを得ません。

かかる運行会社は、現下の法制下では〝適法〟に運行しており、その下(もと)で 多くの乗客の生命が脅かされることになったのであります。

 

 

そのうえで 私たちが回顧させられるのは、残念ながら このような事例が「繰り返されている」ことであります。

昨年7月には、静岡県熱海市の住宅地の上部に大量に積まれた盛り土が崩落し 大規模土石流の主要因となってしまいました。

この際にも それまでの業者の行為を(行政指導は行なうも)半ば看過していた自治体の行政責任が問われ、その後 全国の「盛り土」の監視強化が指導されるに至りました。

しかし、土石流のせいで失った住民の生命や 被(こうむ)った甚大な被害は元に戻すことはできません。

 

(被災前の熱海市伊豆山の名所「逢初橋」)

 

 

また、2016年には 軽井沢を経由する国道18号線(碓氷峠)を走行する夜行バス(スキーバス)が暴走し道路下に転落、学生をはじめ多くの若者が犠牲となる惨事となりました。この事故を通じて 運転手の無理な勤務実態や経験不足が露見し、その後 貸切バス事業者への監査基本方針と行政処分基準に関係する通達が改正(厳格化)されました。

しかし、事故により奪われた 将来有為な若者たちの生命は取り返すことはできません。

 

(事故現場を臨む慰霊碑)

 

 

 

・・・・・。

ことほど左様(さよう)に、とりわけ行政においては、そこに危険が内在していたとしても 重大な事案が発生しない限りは、(結果として)その状態を看過し 事(こと)が起きてから腰を上げる帰来(きらい)、または 危険やリスクがあったとしても、日常業務の中で(結果として)見落としており 事(こと)が起きてからそのことに気づくなどといった帰来が 残念ながらあると言わざるを得ません。

そんな 行政管理上の盲点が、重大事案の〝もうひとつの引き金〟になっているとすれば、これはまさに慚愧(ざんき)に堪えないというところであります。

 

そのような残念な実態がある中、前掲のようなさまざまな事案に触れ 私(だけではなく)は、行政の責任において「危険予測」に務め 事前の策を講じるべきではないかと改めて強く認識するところです。

重大事案が起きてから動くのではなく、重大事案が起きないように 予め適切な措置を講じておくことの重要性。

そのためには、さまざまな視点(立場)からの〝チェック機能〟が欠かせないと思います。

例えば 道路において、歩行者にとっては危険であっても クルマからは分からない箇所があれば、それは歩行者の側から〝チェック〟を入れていただき 事前の安全対策につなげる など、立場の異なる人の視点(指摘)によって 全体の安全が維持されるよう、いわば多方面から社会環境を見つめ直すことが肝要でありましょう。

そこには無論、私たちのような立場の者も一助を成すべきです。

人様の多面的な意見を伺ったり、自分自身も多面的な視点で事象を見つめ 行政に対し指摘すべきを指摘する。そんな〝縦横を交差させる 綾織(あやお)り行動〟の積み重ねが、より安心できる社会の構築につながると、改めて思いをいたしたところでありました。

 

それにしても、(話しを冒頭に戻せば)こんなずさんな運行会社を これまで〝放置〟してたのかと、かえすがえすも残念にならない…改めて思うところです。

責任の所在は 一体どこに。今後の係争が拗(こじ)れることが予見され、それだけで気が重くなるところです。

 

 

 

 

 

 

 

◆長野市コロナ報告

5月4(水)、長野市内で新たに78人(市15340~15417例)のコロナ陽性感染者の発生が報告されています。

 

5/4(水) 長野市におけるコロナ感染症の発生について [PDFファイル]

                ↓

https://www.city.nagano.nagano.jp/uploaded/attachment/746895.pdf