二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2013 J2第15節 長崎vs京都

2013-05-19 | 蹴球

Vファーレン長崎●0-1○京都サンガF.C.
            17'owngoal

■大砲サッカー
 ちょうど20年前の5月に誕生したJリーグ。その当時サンフレッチェ広島と日本代表で“アジアの大砲”と異名を取った高木琢也が監督を務めるVファーレン長崎。Jリーグ20年で最も新しく加入した新顔チームながら、高木監督はここまで3位と躍進させている。そしてこの日見た長崎の印象は、やはり「大砲サッカー」と表現するのが一番妥当かと思った次第。それに南蛮貿易で栄えた長崎だもの。(歴史の実際は、大砲といえば大分の大友宗麟だったり…)
 京都は、言われるほどショートパスばかり繋いでいる訳でないけれども、やはり槍を抱えて軽兵突撃していくような陸上戦が得意な戦い方なのは間違いない。対する長崎、徹底して空中戦を挑み、京都を押し込んでいく。ボールが京都の中盤を飛び越えて、ガンガン空中から攻めてくる戦いぶりを「大砲サッカー」と言わず、何と言うだろう。特に前半戦の長崎は徹頭徹尾ロングボールでボールを前に運んだ。バヤリッツァや染谷悠太、田森大己が丁寧かつしっかり対応し、最後の最後は守護神オスンフンのビッグセーブで被弾を防ぐ防戦一方にも見えたが、中盤飛び越えてくるのだから致し方ない。むしろ田森を上手く最終ラインに吸収させながら、対空防備したと見たい。
 問題は京都の方のボールの運び方。このゲームでは得意の中盤でのカット→反転攻撃が封じられており、前に運べたのは駒井善成や横谷繁の長いドリブルくらい。得点シーンとなったFKを得たプレーがそうだった。奪ったボールを横谷がピッチ中央を斜めに横切るようにドリブルし、相手の進路妨害で得たもの。形としてはラッキーなゴールだが、福村貴幸のボールに三平和司、安藤淳がしっかり飛び込んだ点も大きかった。


■臨機応変
 それにしてもチャンスが少ないゲームだった。長崎・高木監督が巧みだったのは後半になってロングボール一辺倒だけでなく、古部健太を投入後はサイドからのクロスを多用する空中戦に切り替えてきたこと。京都守備陣はそれでも慌てずしっかり跳ね返してゆく。特にバヤリッツァのスライディングは迫力満点で、どこにでも彼が出てきて食い止める。その背後では染谷がフリーの選手を出さないようにしっかり見張っている。田森、秋本倫孝あたりのチェックも素早く、主導権を握られたなら握られたなりに選手個々の判断で柔軟に対応する粘り強い戦い方。守備の粘りに呼応するように、攻撃面でも糸口を掴む。後半に入ってから「まず三平に預ける」というボールの運び方が徹底された。三平は右に左によく動き、そこでボールを受けることでボールを前に運ぶための足がかりとした。例えば66分、横谷から三平に預け、それを安藤が追い越してクロスを上げたシーン。これは相手に跳ね返されたが、こぼれ球を拾った秋本がミドルを狙う。長崎が京都をしっかり研究して、短いパス交換を寸断されても、こういう「預けて」~「追い越して」という攻撃ならば、網にはかからない。攻撃のチャンス数、シュート数などでは物足りないかもしれないが、相手の出方を個々がよく消化した上で、正しいアンサーを出せた臨機応変さに、チームの着実な進歩を見た。あとは、このゲームの長崎の選手達や秋本のように、隙あらばゴールを貪欲に狙う姿勢をプラスしていきたい。


〈京右衛門的採点〉
 オ 7.5 …長身を生かしたセーブに足技セーブなど、ビッグセーブてんこ盛り。
安藤 6.5 …身体を投げ出してよく防ぎ、少ないながらも攻撃参加は効果的だった。
染谷 7.0 …水際でのピンチのケアが冴えまくり、献身的に長崎の攻撃をストップ。
バヤリッツァ 7.5 …全部跳ね返すような勢いで大砲攻撃を食い止める。その姿、鬼神。
福村 6.0 …隙を見て奪い、攻撃に入る動きは○。ただ、ハイボールの弱さは気になった。
田森 7.0 …最終ラインに入って対空陣形を整え、スルッと前でボールを拾う。地味だが効果的。
工藤 5.5 …反撃を食らうようなミスパスが多かったが、自分で奪い返すなど守備は効いていた。
山瀬 5.5 …よく走り、奪って素早く展開。しかし出したパスはあまり合わなかった。
駒井 5.0 …ドリブルでの単騎突入、ラストパスもあったが、大味。キレてるのにズレてる。
横谷 5.5 …高木采配に消され気味だったが、後半三平と縦関係になってからボールによく絡んだ。
三平 6.0 …前半のビッグチャンスは決めたかった。後半は前線の基点に守備にと存在感あり。
---------
秋本 6.5 …屈強さを遺憾なく発揮。防波堤となったことで、攻撃陣も前に出れるようになった。
 原 5.5 …山瀬とのコンビネーションなど、アクセントになりかけたが、再度負傷。
酒井 6.5 …緊急発進だったが、左SBとして求められたミッションは全てクリア。
---------
大木監督 6.0 …粘り強く、アクシデントにも慌ることなかった。特に秋本投入は好判断。