中之又神楽の「弓将軍」には、「荒神地舞」と解説され、番付表にも表記されている。その後に続いて出る荒神が「柴荒神」となっているから、山の神としての荒神祭祀であることは明らかであり、弓の舞が神楽の狩猟儀礼と密接な関係にあることもわかる。「狩猟儀礼」「祈祷神楽」としての弓神楽に、「田地守護」や「スサノオ伝承」など後付けされたものだろう。
中之又神楽の弓将軍。舞人は、代々この舞を受け継いできた中武祐次(写真・中)さんとかつて中之又小学校に赴任していた崎田先生(写真・下)。祐次さんは古式の巻き狩りを伝える鹿狩りの猟師でもある。崎田先生の加入で、中之又神楽の陣容は厚みを増し、彼の教え子たちも立派に成人して、今では一人前の祝子として神楽を支えている。
「柴荒神」。神主と問答をする。問答の大意は他の神楽とほぼ同じ構図。鹿倉様や地区の氏神、宿神などと連続して出るからわかりにくいが、前述のように「弓将軍」と「柴荒神」の連結で把握するとわかりやすい。
ここで、はっと気づいて加筆。「地舞」のことを知らなかったわけではなくて、「地舞-採り物舞」とそのあとに続く「仮面舞」を関連付けて把握するということをしていなかっただけだ。地舞=採り物舞と仮面舞の関係は、採り物舞だけが独立している神楽もあって分類そのものが難しい。整理してみよう。
◇椎葉神楽
☆嶽之枝尾神楽:「注連誉め→注連引き鬼神」「紋(森)神楽→柴入れ→柴問答(荒神)」「星指→内鬼神」など。
☆不土野神楽・尾手納神楽:「守(森)の神楽→矢の舞→弓通し→しょうごん殿」など。
☆大河内神楽:「日月→鬼神」「花の手→稲荷神楽→芝引き」「弓の手神楽→樽面→芝荒神」など。
*椎葉神楽では、序盤の神事神楽と「地割」が長時間続き、仮面神の出現そのものも少ない地域が多いので、神楽全体を把握することが大変難しいが、この分類法を当てはめると、少し把握しやすくなる。
◇米良神楽
☆中之又神楽:「三番舞(鬼神地舞)→鬼神」「大社地舞→大社舞」「宿神地舞→宿神」「鹿倉地舞→鹿倉舞」「弓将軍→芝荒神」など。
☆尾八重神楽:「幣差→花鬼神」「宿神地舞→宿神」「四方鬼神地舞→四方鬼神」「大将軍(弓の舞)→柴荒神」「綱地舞→綱荒神」など。
☆銀鏡神楽:「鵜戸神楽→鵜戸鬼神」「幣差→西之宮大明神」「住吉→宿神三宝荒神」「初三舞→若男大明神」「荘厳(しょうぐん=弓の舞)→柴荒神」など。
☆村所神楽:も「幣差→大王様・爺様・婆様・七つ面(南朝の皇子懐良親王の一族の物語)」「住吉→八幡様・御手洗様・獅子舞・大山祇命(菊池一族の物語)」「弓将軍→荒神」など。
◇諸塚神楽
・南川神楽:「森・愛宕→鬼神」「村方→八幡大神」「住吉→舞荒神・三宝荒神」など。
◇高千穂神楽
・高千穂神楽では、序盤の「杉登」の中で主祭神または氏神が降臨。その後、採り物舞が続き、「七鬼神」「八鉢」「五穀」「山森」などが配置され、採り物舞が独立した演目として舞われているように見える。上記の把握は難しい。
・宮崎平野から日南海岸へかけて分布する神楽や霧島山系の神楽、春神楽などはまた別の配置があってこれも統一した分類は難しい。今後の勉強課題としておこう。
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M・Ishiji
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