森の空想ブログ

鹿狩りの神「鹿倉様」の舞 鹿祭りの里<第二部> 中之又神楽の一夜(4) [2015宮崎神楽紀行<16>] 

中天近くにあった白鳥座の大十字は西の山際に沈んでゆき、東の空からスバルの一団が現れ、続いて天の狩人・オリオンに率いられた大犬座、子犬座などが雄々しく立ち上ってくる。米良の山岳は、黒々と蹲っている。北と南の山脈に挟まれた深い谷底のような空間に、中之又鎮守神社があり、その一角だけが祭りの灯りと焚き火の炎に照らされて、煌々と輝いているのである。冬天の運行と地の祝祭とが同時に進行してゆく「冬まつり」。それが「神楽」である

祭りが佳境を迎えるころ、中之又神楽では、天神様の降臨に続いて、鹿倉様が降臨する。



「鹿倉様」とは、山の神様であり、鹿狩りの神様である。
中之又の七つの谷を遡って行くと、深い森に抱かれた集落がある。集落の裏手は広大な米良の山脈に続いている。集落と森との境に、「鹿倉様」を祀る神社がある。それぞれの土地の名を冠して「屋敷原鹿倉神社」「筧木鹿倉神社」「松尾鹿倉神社」などと呼ばれる。鹿倉神社では、狩りの季節の始まりとなる11月初旬、鹿倉祭りが開催される。地区ごとの鹿倉神社とその周辺の巨木や巨石の前に御幣を捧げ、神楽式三番を奉納してこの年の狩りの豊猟を祈願するのである。この時、鹿倉様が降臨して鹿倉舞を舞う。




「鹿倉舞」は中之又鎮守神社の大祭の折にも「中之又神楽33番」の一曲として奉納される。それが中之又神楽の「鹿倉舞」である。「鹿倉地舞」に続いて一斉に鹿倉様が降臨する。
鹿倉様は、それぞれに異なる表情を持つ。いかにも山の神にふさわしい精悍な神。土地の老翁を造形したような素朴な神。狩人そのものを造形したような朴訥な面。
五色の小幣の付いた毛笠を被り、華やかな文様の布で頭部と頬を包み、右手に「面棒」を採って舞う。鹿倉様は、年によって二神だけだったり、六神が出たりして、降臨する神の数は一定していない。祈願者や舞人の都合で年毎に変わるのだろう。



これは「稲荷様」。山地の稲荷神は、山の神としての神格を兼ねている。中之又の稲荷神社は、二つの谷を見下ろす高い崖の上に鎮座する。その崖は、鹿が駆け下りてゆく「シガキ」である。中之又の鹿倉神社は、いずれも鹿の通り道である「シガキ」に沿った位置に鎮座している。たとえば、筧木(ひゅうぎ)鹿倉神社の西は広大な野で、鹿や猪の通り道が手に取るようにわかる。その野を駆け下りてきた獲物は、神社の下の沢を渡り、東の森へと紛れ込んで行く(日によって逆の道筋をたどる場合もある)。猟師は、鹿倉神社脇の巨木の下に腰掛けて銃を構えて待つのである。狩りにおける最良の地点が「山の神」の鎮座する所であった。

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