森の空想ブログ

南国の赤/琉球漆器から宮崎漆器へ【かさこそ森の読書時間<2>】

時々立ち寄るリサイクルショップの棚の隅で、真っ赤なお盆に出会った。

漆器である。

けれども、見慣れた日本の職人による漆の色ではなく、もっと強烈な、色彩感を持っていて、木地もやや厚めでズシリとくる出ざわりがある。

――琉球だな・・・

とすぐに思ったが、少し違う感覚もある。

調べてみると、それは太平洋戦争後、焦土となった沖縄から宮崎へと疎開した琉球漆器の職人たちによって作られ始め「宮崎漆器」として自立した製品となっていたものだった。

琉球漆器は、主に朱色の漆や黒い漆を用いた花塗(はなぬり)といわれる顔料と漆を練り合わせ、餅のようにしたものを、板上で薄くのばして模様に切りぬき、器に張りつけ、その上でさらに細い線を彫ったり着色したりして仕上げる「堆錦(ついきん)」という技法、漆地に金を埋め込んで研ぎ出す「沈金」、金箔を使った「箔絵」、貝殻を埋め込んで磨き出す「螺鈿(らでん)」などの技法がある。木地は、デイゴやエゴノキ、センダン等の木で、下地は豚の血等を使った「豚血下地(とんけつしたじ)」、上塗りは天然の漆を用いた塗り立てで、朱の鮮やかな美しさは類を見ないと言われた美しさである。かつては琉球王朝への献上品、中国との交易などで栄えた。

宮崎の地で華開いた琉球の漆器は、その技法を受け継ぎ、定着した。現在は障がい者の授産施設として営業し、制作を続け、宮崎県の伝統工芸品に指定されている。沖縄での琉球漆器は首里城の再建などにも関わっているが、いずれも需要減と後継者不足に悩んでいるという。

南国の太陽の下で育った漆器の「赤」はまさに南国の赤と呼ぶにふさわしい。

描かれている浜木綿や日向南瓜の絵柄も好ましい。

この盆に、黒一色の大ぶりの器に珈琲をたっぷりと注ぎ、いただく。

赤と黒と五月の緑。

手元に置かれた文庫本は、まだ開かれないままである。

 

 


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