森の中にひっそりと自生する小潅木に「紫式部」がある。近似種にヤブムラサキ、実をびっしりと付ける園芸種のコムラサキがあるが、夏、森の中でほのかに紫がかった白い小さな花を咲かせ、初秋に鮮やかな紫色の粒の実を付けるこの種が好ましい。
前の日に歩いたときには見つからなかったほど地味な植物である。朝、薬草茶を沸かすために黒文字の葉を採りに行った小藪で見つけた。染めてみよう。
鉄媒染液に浸けると明るい灰色、銅媒染液で黄色がかった薄緑に発色した。
ところが、乾いてみると、色に大きな違いはない。どちらも薄い緑がかった灰青色。微妙な違いを「錆青磁」「裏葉柳」に求めてみた。いずれも、清楚な色合いである。
―わたしは銅や鉄なんかには影響されないのよ・・・。
この子は、見かけによらず案外頑固なのかもしれない。
「紫式部」という名を、実の色だけに求めず、その清楚で上品な染布の色をふまえてみると、一層、風趣は深まるのである。
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