日中戦争の記述についての歴史教科書問題は、
スペイン人のインカ帝国征服の記述に極めて似た背景があります。
16世紀にスペイン人は南アメリカ大陸を侵略し、
何十万人ものインディオを虐殺して、マヤやインカの文明を滅亡させました。
このことは、400年以上を経たいまもなお、
極東の一小国の歴史教科書にすら、時には当時の銅版画つきで記載され、
連綿と教えられ続けています。
しかしこの時代、植民地化政策を推し進め、
世界中で原住民を虐殺したのは何もスペイン人だけではありません。
イギリス、フランス、オランダ、ポルトガルなどこれらの国々も、
オーストラリアやインドネシア、そして太平洋の島々で、
民族が滅亡寸前に追い詰められるほどの虐殺を行ってきました。
けれども、そのことを教える教材は多くありません。
それでは、なぜスペイン人だけが、
その残虐非道な行為を教科書に記され続けているのでしょうか。
これには有名な話があります。
当時、南米大陸には布教を目的とした数多くの宣教師が殖民しました。
そしてその中に、ラス・カサスというスペイン人宣教師がいました。
彼は新大陸で、同胞たちの残虐な行為や不当な略奪を目の当たりにし、
その様子を詳細な報告書にしてスペイン国王に送り、やめさせるように訴えました。
その報告書が公表されると、
植民地争奪で対立関係にあったイギリスやフランスなどの国々は、
スペイン人をおとしめるため、自分たちのことは棚にあげ、
競うようにしてスペイン人の残虐非道ぶりを世界中に宣伝しました。
歴史の教材などに使われている銅版画などの多くは、
これらの国々によって制作され、ばらまかれたものだと言われています。
やがてスペインではラス・カサスに賛同し、
その意思を受け継ぐ者たちによって運動が活発になり、
スペイン王室は正式に植民地政策を見直すこととなりました。
つまり、国として正式にみずからの行為を認めたということです。
これに対してイギリスやフランスなどの他の国々は、
21世紀に至るまで国家としての残虐行為を公式に認めてはいませんし、
謝罪も賠償もしませんでした。
もちろん、先の大戦までのアジア諸国での植民地政策に対してもです。
これが「同じ穴のムジナ」であるにもかかわらず、
世界史上で扱われ方の異なる大きな理由のひとつです。
「良い」とか「悪い」とかではなく、これが国際政治であり、世界史なのです。
日本の教科書問題は1980年代初めに、
日本のマスコミが報道したことに端を発します。
決して中国や韓国から言い出したことではありません。
これは、文部省の教科書検定で
「『日本が侵略』という記述を『進出』に書き換えさせられた」
というものでした(「書き換えさせた事実はない」という説もあります)
その後、日本の左派マスコミや左派団体は、
こぞって「靖国参拝」や「強制連行」「従軍慰安婦」などを
「未解決問題」としてとりあげ、「国の戦争責任」を言い始めました。
すべて日本国内から湧き上がった議論です。
そうして左派の活動は、ついに1995年の「村山談話」を引き出すに至り、
これが一国の首相の発言であったことから、
敗戦から長い時間をかけ、先人の政治家たちが築きあげてきた、
日中平和友好条約や日韓基本条約などによる、
戦後の日中・日韓関係をぶち壊したとも言えるのです。
日本人同士が「国の戦争責任」を言い争っていれば、
当の中国や韓国がこれを利用しない手はありません。
自国民の愛国心育成には願ってもないチャンスです。
歴史的に見ても、国民が一致団結し、国威が発揚するのは、
国外に国民共通の敵が現れたときにほかなりません。
私には日本が、かつてのスペインと
同じ道をたどっているような気がしてなりません。
結局、スペインはイギリスやフランスなどのプロパガンダに敗れ、
その後、急速にその国力を失っていきます。
スペイン人の自虐史観は、いまの日本人と非常によく似ています。
日韓併合100年を前にし、菅総理大臣が、
「村山談話」を超える「新談話」を検討中だとの報道がありました。
菅首相は、世界史をきちんと学んだ政治家なのでしょうか。
世界中からの「もの笑いのタネ」をひとつ増やさないよう祈るばかりです。
https://secure160.chicappa.jp/chicappa.jp-sosei-nippon/shomei.html
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