goo blog サービス終了のお知らせ 

くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

「こんなに強い自衛隊」

2010-10-29 23:59:59 | 書籍の紹介
いまの日本国民が最も勉強不足であるのは、「金融」と「国防」ではないでしょうか。
日本人は、それらは「カネ」と「戦争」を連想させ、
それぞれを「汚いもの」「危険なもの」として、長い間そこから目をそらしてきました。

「金融」については、最近は学校でも早いうちから、
お金のことや簡単な仕組などを教えるようになってきたようですが、
「国防」については、いまでも子供から大人になるまで、
ともすれば一生涯、学ぶ機会もなく過ごしてしまいます。

沖縄本島から500kmも離れた与那国島は、
台湾からはわずか110kmしか離れていないことや、
1996年に中国のミサイルが与那国島の沖合い60kmに着弾し、
島民が漁にも出られずに震え上がっていたことなど、
どれほどの日本人が知っているのでしょう。

尖閣諸島をはじめとする離島を他国に占領されるということは、
その小さな土地と周辺の漁場、埋蔵資源を失うということだけではありません。
日本へのシーレーン(海上交通路)が脅かされるということです。
むしろ、このほうが日本にとって深刻な問題なのです。

シーレーンを他国に押さえられれば、その国の都合によって、
日本への食糧や資源の輸送は閉ざされ、国民を兵糧攻めにすることが可能になります。
方法は違えど、それはまさに日本が大東亜戦争に突入せざるを得なかった状況と同じです。

中国や韓国を見ていると、本当によく歴史を研究していると思います。
都合のいいように歴史を捏造し、史実化しようとするだけでなく、
過去の歴史や諸外国をマネた立ち振る舞いもとても上手です。



「こんなに強い自衛隊」 井上和彦 著  双葉新書 刊

私たちは国民とその財産、そして国土を守る自衛隊のことをどれだけ知っているでしょう。
沖縄に駐留する米軍海兵隊。
私たちは、その海兵隊と海軍との違いや、
沖縄に海兵隊が駐留することの意味をどれだけ知っているでしょう。

日本国憲法第9条は、歴史上類を見ない画期的な条文だと思いますが、
果たして、領土的野心をもった他国からの脅威に対する抑止力になると言えるでしょうか。
日本は憲法9条さえ守っていれば、平和が約束されるのでしょうか。

日本は一国のリーダーですら、
「学べば学ぶほど・・・」などと発言したほど、「国防意識」の弱い国です。
そんな発言をする首相が、一時は自衛隊の最高指揮官であったということを、
いったいどれだけの国民が自覚していたでしょうか。

間違いなく、日本人はもっと「国防」について学ぶ必要があるようです。

憲法9条や沖縄駐留米軍移転の論議は、感情論や建前論で論じるのではなく、
国防について正しく理解し、知識を深めてから判断すべきことです。



「ルポ在日外国人」

2010-10-23 23:59:50 | 書籍の紹介
この本の著者は、朝鮮大学校卒業のノンフィクション作家です。
したがって当然、この本は在日外国人の立場からのルポルタージュです。



「ルポ在日外国人」 高賛侑(コウチャニュウ) 著  集英社新書 刊

在日韓国・朝鮮人だけでなく、
1990年代以降、在日中国人や中南米系移民など、
在日外国人はいまや222万人に達しているといいます。

本書では、彼ら在日外国人の現状をルポルタージュし、
欧米の状況とも比較しながら、多文化共生の施策を訴えています。

本書を読むまでもなく、
在日外国人がいわれのない差別や排外を受けているのは事実でしょう。
著者の言うとおり、それが歪んだ法や制度によってもたらされているのであれば、
もちろん改善されるべき問題です。

しかし、それがイコール、
在日外国人参政権の付与や朝鮮学校の高校無償化などの実施ではありません。

本書では、在日外国人参政権について、
「韓国では日本に先駆けて、日本人を始めとする外国人に参政権を与えている」
と主張しています。

しかし、その実態は「永住資格を取得して3年以上」という条件があり、
しかも永住資格取得の要件は、所得基準を設けるなど日本より厳しいものです。
事実、参政権を持つ日本人51人はほとんどが韓国人男性の妻であり、
外国人有権者は、全有権者の0.05%に過ぎず、
選挙結果にはほとんど影響を与えない有名無実の制度に過ぎないのが実態です。

こういった制度の実態をあわせて説明せず、
上っ面だけの制度の有無だけで物事を論ずるのは、
勉強不足の者を惑わす、フェアとは言えない手法です。

また、本書では多民族国家であるカナダやアメリカ合衆国などと比較し、
日本は著しく遅れているとも主張していますが、
そもそも異民族同士が移住し、寄せ集まって成立した国家と、
すでに1000年近く前に、ひとつの民族によって成立した国家とでは、
長い間、培われてきた社会背景も異なり、
両者を同一線上で単純比較することには無理があります。

もちろん、不当な差別や偏見をなくすべき努力や、法制度の改善は必要です。

ただ、「物事は一面でなく、多面的に見なければならない」
そう感じさせられた一冊でした。



「サラ金殲滅」

2010-10-19 23:16:46 | 書籍の紹介
先月、消費者金融大手の武富士が、東京地裁に会社更生法の適用を申請、
事実上、経営破綻したのは記憶に新しいところです。

6月からの「総量規制」も経営環境の悪化をもたらしたものの、
最大の要因は、グレー金利ゾーンの廃止にともなう、
顧客の過払い利息の返還債務が、大きな負担となったことによるものです。

武富士の過払い金債務は、最終的に2兆円近くなるというのですから驚異的です。
アコムやプロミスなどは、早いうちに大手銀行グループの傘下に入り、
安定した資金調達でなんとか凌いでいるようですが、これとていつまで続くかわかりません。
返還債務は、親会社の銀行にとっても大きな負担であることに変わりないのですから。

昔は「サラ金」と呼ばれた金貸し業が、何ゆえに「消費者金融」と呼ばれるようになり、
どのようにして業態を拡大させてきたのか?
そして、なにゆえに大手銀行グループは、こぞって消費者金融を傘下に収めたのか?
金融業界の財産である、個人の信用情報をめぐるトラブルとは?

長年、金融業界の取材を専門にしてきたジャーナリストの著者が、
これらについて、わかりやすく解説しています。
いまの消費者金融業界を知るには、もっとも適した一冊だと思います。



「サラ金殲滅」 須田慎一郎 著  宝島社 刊

食品や玩具など、どんな業界でも、ひとたび事故が起きて顧客が被害を被れば、
徹底して再発防止をはかるのが企業としての常識です。

しかし、消費者金融業界は貸し込めるだけ貸し込み、
多重債務を苦に自殺者が出ても、企業としての防止策を怠ってきました。
「債務者には自己破産という、救済策があるじゃないか」
それが、彼らの論理でした。

いまや、このような身勝手な業界の論理は通用しない。
自浄能力のない業界は、淘汰される時代だということでしょう。

「武富士ダンサーズ」「チワワのく~ちゃん」「ラララむじんくん」「ほのぼのレイク」
「はじめてのアコム」「どうする?アイフル」など、数々のCMやキャッチフレーズが
読んでいて頭の中に甦ってきます。



「拷問と処刑の日本史」

2010-09-10 23:59:59 | 書籍の紹介

日本にも死刑を廃止していた時期があったといいます。
それも374年という、長きにわたって。

時代は平安時代、
810年に「薬子の変」で藤原仲成が処刑されたのを最後に、
嵯峨天皇が818年に律を改正し、
死刑に値する罪を犯した者は、遠流または禁獄と定めたそうです。
そしてこれ以降、26代もの天皇がどんなに重罪であっても、
死刑を執行しませんでした。

これが日本で唯一、国政上の死刑が廃止されていた時代です。
これは当時、貴族たちの間に深く浸透した仏教思想と、
貴族政治とが融合した結果でしょう。

その死刑廃止の時代に終止符を打ったのは、
平安の貴族政治を終わらせ、武家政治の礎を築いた平清盛でした。

死刑の復活以降、統治権力が公家から武家に移行し、
武士による政治体制が磐石になるにつれて、
為政者による拷問や処刑の方法も残酷になり、凄惨を極めます。



「拷問と処刑の日本史」 歴史ミステリー研究会 編/双葉新書 刊

本書は、拷問や処刑が行われた時代背景や、
当時の宗教観、思想などを探求した学術書ではありません。

どちらかと言うと、
神話の時代から明治時代に至るまでのさまざまな文献から、
拷問や処刑の方法、その変遷についてだけを抜き出し、
とりまとめたような内容です。

そのため、日本にも古代ローマの暴君ネロのような天皇が存在していたことや、
大河ドラマなどでは決して描かれることのない、
日本人が大好きな戦国武将たちの酸鼻をきわめる暴虐ぶりが
容赦なく描かれています。

各地には、戦国武将を神として祭った神社があちらこちらにありますが、
「そこに手を合わせて拝むってどうよ?」と思ってしまうほどです。

もちろん、「人権」などといった概念など微塵もない時代のことです。
家臣はもとより、親族・兄弟にさえ寝首をかかれる時代背景も
念頭にいれて読まなければなりません。

しかしそれでも、
「この本の著者は、死刑制度廃止の推進派なのだろうか」
ふと、そんなことを考えてしまいました。

興味のある人だけ、読んでください。


ドラマ化希望「ファースト・ジャパニーズ ジョン万次郎」

2010-09-03 23:59:59 | 書籍の紹介

多くの日本人が、その名を一度は聞いたことがある「ジョン万次郎」。

彼について書かれた書籍や資料は数多くありますが、
この本は彼の生涯が歴史小説風にまとめられ、
まるでドラマを見ているように読み進められる、非常に面白い一冊でした。
著者は、ジョン万次郎こと中濱万次郎の曾孫、中濱武彦氏です。


「ファースト・ジャパニーズ ジョン万次郎」
        中濱武彦 著/講談社 刊             

ジョン万次郎の名は昭和の時代になってから、
井伏鱒二の小説で初めて用いられ、広く呼ばれるようになったもので、
それ以前は、ジョン万次郎とは呼ばれてはいませんでした。

ジョン・マン(John Mung)、これが当時からの彼の呼び名です。

また、彼は日本人が「長州人だ」「薩摩人だ」などと、
藩人としての帰属意識しか持ち得なかった時代に、
「Japanese」と名乗った、おそらく始めての日本人でした。
それは明治維新の21年も前のことです。

私たちは、彼の数奇な人生について、
「彼は土佐の漁師で、漁の途中で遭難し、アメリカの捕鯨船に救助され、
 アメリカで勉強をして日本に帰国後、維新の志士に大きな思想的影響を与えた」
という程度の認識しかもっていません。
学校の授業で教わる彼の歴史的役割については、その程度の内容です。

しかし、その人生は波乱万丈で、ドラマチックなものでした。

七日間の漂流と絶海の孤島での143日にわたるサバイバル生活。
米国の捕鯨船による救出とダイナミックな当時の鯨猟。
アメリカでは驚くことばかりの先進文明と民主主義思想と出会い、
高度な教育を受けて航海士となり、捕鯨船に乗って世界中の海を渡り歩きます。
そして世界中の欧米の植民地を目の当たりにして抱いた、
頑なに鎖国政策を続ける日本への危機感と帰国の決意。
ゴールドラッシュにわくカリフォルニアで、多くの荒くれどもと帰国資金を稼ぎ、
捕縛、斬首の危険を顧みず命を賭しての日本上陸。
幕末の志士や諸大名、幕臣との出会いと交流などなど・・・

「彼の生涯を描いたドラマ(映画)を見てみたい」
無性にそう感じさせるほど、想像力をかきたてられるものでした。

この本を読んだあと、
彼を主人公にしたドラマや映画はないものかと探しましたが、
これが不思議と見つかりません。
どれも脇役ばかりです。

同じ江戸時代の遭難者である大黒屋光太夫は、
緒形拳の主演で映画になっているというのに!

ぜひ彼の生涯を描いたドラマ(映画)を見てみたいものです。
成年になったジョン・マン役は、堤真一あたりでしょうか。

ラストシーンは、彼が日本に帰国して十数年後、
彼を太平洋の孤島で救助し、養父となったホイットフィールド船長と
二十一年ぶりに再会する場面で決まりです。

再会場面は、ちょっと感動します。