この種の本は、往々にして著者の一方的な主観や偏見による場合も多いので、
左右の本をバランス良く、客観的な意識を忘れないように読むよう心がけねばなりません。
しかし、最近の中国に関する報道や過去の歴史を振り返ってみれば、
この本が単に嫌中評論家の中国バッシングであるとは片づけられません。
「日本支配を狙って自滅する中国」 黄文雄 著 / 徳間書店 刊
戦後日本の政権の中で、
最も親中であるはずの民主党政権下で起きた尖閣諸島海域での漁船衝突事件。
なぜ、中国は対日強硬姿勢をエスカレートさせているのか。
なぜ、中国はここにきて領土拡大の野心をあらわにし始めているのか。
日本の対中外交のどこに問題があったのか。
そんな中国と日本との間に横たわる基本的な疑問について、
漁船衝突事件後では、もっともわかりやすく解説している一冊だと思います。
その中でもショッキングなのは、
中国が2011年6月17日に決行を計画する「千船保船」作戦でした。
これは2010年の夏、ワシントンに集まった在外華僑が「保釣(釣魚台を守る)」を主張し、
両岸三地(中国・台湾・香港)の民船1000隻で尖閣を包囲することを呼びかけたものです。
尖閣諸島海域では、
すでに中国の漁業監視船が頻繁に出没するようになったことからもわかるように、
実行されれば民船の背後に人民解放軍海軍が護衛につくことは明らかです。
民船に対して武力行使をするわけにはいきませんから、日本は手も足も出せません。
そうして中国民兵は尖閣諸島に上陸し、日本の実効支配を放棄させるという計画です。
もし日本が実力行使でこれを阻止しようとするならば、
そのとき中国は、日本が侵略行為を行ったと主張して武力をもって応じるでしょう。
中国にとっては願ったり叶ったり。
どちらに転んでも中国が望むようになるシナリオなのです。
なにしろ今の中国は海軍力を増強し、世界第二位の経済大国になって自信満々です。
これが中国が「人民戦争」と呼ぶ民兵を使った戦争です。
たとえ6月17日の決行が杞憂に終わったとしても、
中国の軍備増強が整い、日米関係が弱体化したときを狙って、
中国は尖閣諸島を実行支配するため、いずれこの作戦を実行すると思います。
遅いか、早いか、ただそれだけの違いです。
先日、テレビの報道バラエティ番組で売れっ子タレントがこんなことを言っていました。
「尖閣諸島なんてちっぽけな島にこだわる必要はない。
そのために膨大な防衛費を使うくらいなら、さっさと中国にやってしまって、
そのお金を福祉にまわすべきだ」
逆説的な意味を強調するため、
そのように台本に書かれていたのかもしれません。
しかし、実際にそのように思っている日本人は、
口に出さないだけで結構いるのではないでしょうか。
なぜ、尖閣を死守しなければならないのか。
それは単なる領土や海底資源の奪い合いではないということを、
日本のメディアはもっと広く国民に周知すべきでしょう。
中国の核ミサイルは、間違いなく日本に向けられています。
多くの核保有国が、核を抑止力としているにもかかわらず、
中国は北朝鮮と同じように、あからさまに恫喝の手段として使っています。
中国はアメリカに対して、
「中台関係に首を突っ込むようなら、アメリカ本土への核攻撃も辞さない」と威嚇したり、
台湾は中国の領土であるということを前提に、
「核の先制不使用は、国内に対しては除外する」と台湾を恫喝してみたり。
中国の軍部では、核も準備を整えて先制使用すれば、
核戦争に勝利することができると教えられていると言います。
また、毛沢東の時代から
「核戦争が起きても、中国人は半数が生き残る」と発言しています。
だから中国の勝利なのだと。
国民をただの数でしか見ていない国。
これが人権のない国の人間観なのです。
大規模な対外戦争が起きれば、
中国はためらわずに核ミサイルを使用するでしょう。
そうなる前に、現体制が内部崩壊し、
開かれた民主国家に転換することを祈りたいものです。
易姓革命の考え方に基づいている中国では、
その長い歴史の中で、血を流さずに政治体制が交代した例はありません。