我が家の近所にある書店での話です。
他の書店と同じように、この店でも万引きには頭を悩ませています。
日ごろから店長は「捕まえて必ず社会的に抹殺しちゃる!」と憤っており、
今回ようやくその犯人の一人を突き止めたそうです。
今回の犯人は中学2年生の男子。単独犯でした。
犯行現場を確認して店員が声をかけると、
少年は素直に応じるどころか、一目散に逃亡を謀ったそうです。
なりふり構わず逃げようとするところがまだ子供です。
お粗末にも彼は、逃亡の際に携帯電話や財布などを落としていったそうです。
その中には生徒手帳こそありませんでしたが、
スポーツクラブの会員証など、本人を特定する手がかりが入っていました。
店の防犯カメラに記録された犯行現場の映像とセットにすれば、
被害届を出すための証拠には充分です。
店長は「目にもの見せてやる」とばかりに、
鼻息を荒くして警察に被害届を出したことでしょう。
しかし数日後、信じられない報告が警察からあったそうです。
警察は現場に残された物証をもとに、市内の中学校をすべてあたったものの、
学校側は該当する生徒が在籍しているかどうかの回答を拒んだと言います。
それでも何とか学校と住所を特定して保護者(親)に連絡すると、
あろうことかその親は、弁護士を使って少年の犯罪を収拾しようとしたそうです。
「未成年者だから、なんだかんだ・・・」と言う理由で、
その少年や親は決して表に出てくることなく、
弁護士が間に入って、店側には何の謝罪もなかったそうです。
未成年の犯行であり、事後強盗などにも至っていないので、
警察も逮捕状をとって身柄を拘束するようなこともしません。
しばらくは根気強く抗議していた店長も、やがて疲れ果て、
商品の弁償を求めるだけに終わってしまったようです。
弁護士を雇うような家ですから、貧困家庭というわけではありません。
少年がこれまでに万引きした商品は、すべて少年の部屋にあったといいます。
「自分たちが護ってやらなければ、誰がこの子を護ってやるのか」
「自分たちが見放したら、この子は永遠に更生する機会を失くしてしまう」
学校も親も、おそらくそんな気持ちでいっぱいだったことは容易に想像できます。
でもこれからの彼の成長を考えたとき、
本当にそれが本人のためになっているのでしょうか。
「けじめ」
今はもうほとんど聞かれなくなった言葉ですが、
それがあってこそ、その少年はこれまでの非行に区切りをつけ、
新しく前に進むことができるのではないのでしょうか。
万引きは「いたずら」などではありません。
いまさら言うまでもなく、他人の財物を窃取する犯罪です。
金額の大小にかかわらず、
財物には必ず所有者がおり、所有権が存在しています。
自分が同じことをされたら・・・犯人にそう聞いてみたいものです。
「あなたは少額だったら、盗まれても許せるのか?」
「盗まれても、後でお金を払ってくれれば許せるのか?」
この本には、そんな他人の気持ちなどこれっぽっちもわからない、
とんでもない万引き犯が数多く登場します。
「万引きGメンは見た!」 伊東ゆう 著 / 河出書房新社 刊
居直ったり、刃物を振りまわしたり、泣きわめいたり、嘘をつきとおしたり。
万引きが、大きな犯罪の入り口であるということがよくわかります。
スーパーなどで買い物をしていると、
むずがる子供に精算前の商品を持たせ、
レジで「これも一緒です」と言ってお金を払う親を時どき見かけます。
物心がつく前からのこんな習慣が、
万引きを何とも思わない子供にしているような気がしてなりません。
少なくとも我が家では、
子供が自分でお金を払うことができるようになるまでは、
どんなに泣こうがわめこうが、精算前の商品を子供の手に持たせたことは、
一度たりともありませんでした。