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土佐昌樹「アジア海賊版文化 『辺境』から見るアメリカ化の現実」光文社新書

2009-02-02 23:54:17 | 読書
 土佐昌樹「アジア海賊版文化 『辺境』から見るアメリカ化の現実」光文社新書を読みました。大変面白い内容でした。
 本書の内容を私なりにまとめると、

(1)アメリカ発の商品化された文化(ポピュラー文化)は世界を席捲してきた。そしてそれはアメリカによる押し付けではなく、受け手側が好んで受け入れてきた。

(2)ミャンマーのような閉鎖的な辺境においてさえアメリカ発のポピュラー文化、そしてアメリカから多大な影響を受けた日本、韓国などのポピュラー文化が浸透している。

(3)デジタル化、インターネットによってポピュラー文化のコピーの生産性が増しただけでなく、コピーがオリジナルから変異することなくグローバルネットワークに沿って普及していった。途上国においてはこれに海賊版が大きな役割を果たしている。

(4)こうして基本的に国籍を持たないポピュラー文化のミニチュアが世界中に増殖していった。

(5)かつて政治経済の構造に影響を及ぼしたイギリスのコーヒーショップのような「文芸的公共圏」は文化の商品化によって崩壊し、お茶の間でテレビを眺めるような孤立化された受容行為が蔓延した。しかしポピュラー文化は社会に新たなパワーをもたらした。

(6)さらにインターネットなどの新たなメディアの発達により、細分化された趣味や嗜好を国境を越えて共有する、民族や国家の枠を超えた(土地に根付いていないディアスポラ的な)新たな「文化的公共圏」が生み出されようとしている。こうした中、自由や人権など普遍的価値がグローバルに共有されようとしているのではないか。


 といったところです。私の理解が本書の内容に付いていけず、的外れになっているところもあるかもしれません。

 豊富なフィールドワークに基づいて経済のグローバリゼーションを描いた良書としては、トーマス・フリードマンの「フラット化する世界」、そしてピエトラ・リボリの「あなたのTシャツはどこから来たのか?」が印象的でしたが、文化人類学者の筆者からなる本書は文化のグローバリゼーションの現状を(アジアに限定されていますが)フィールドワークに基づいて描いた労作であると思います。様々なエピソードや考察を欲張りすぎなまでに盛り込んでいるために議論の流れがわかりづらく、しかも文章が少々難解で読みづらいのですが、知的好奇心を刺激する一冊です。