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竹縄昌「日本最初のプラモデル 未知の開発に挑んだ男たち」(アスキー新書)

2009-01-02 23:40:58 | 読書
 竹縄昌「日本最初のプラモデル 未知の開発に挑んだ男たち」(アスキー新書)を読みました。小学生の頃にプラモデル製作に夢中になった私は、本書を手に取らずにはいられませんでした。

(目次)
第1章 その時代とマルサン商店
第2章 金型を彫った男
第3章 売り歩いた男
第4章 組み立て説明図を描いた男
第5章 プラモデル流行をブーストした男
第6章 時を超えて


 本書は、初めて国産プラモデルを作った、今は無き玩具メーカーの栄光の歴史を当時を知る関係者に対するインタビューをもとに描いたドキュメンタリーです。この玩具メーカーの名はマルサン商店、プラモデル好きだった私にとっても全く初耳の企業名です。それもそのはず、マルサン商店は昭和43年に倒産してしまっているので、昭和42年生まれの私が知るはずもありません。
 このマルサン商店はすごい会社であったようです。すべてに一流を求めて優れた金型職人を集め、昭和30年代前半に高価なドイツ製の金型彫刻機を導入、これを当時はまだ珍しかった冷房完備の部屋に据え付けたというから半端ではありません。また同社は放送が始まったばかりのテレビに注目して、一流の趣味人や技術者をゲストに招いた模型趣味をテーマにした民放テレビ番組のスポンサーとなり、これが大ヒットしてなじみの薄かったプラモデルというものを一躍メジャーな存在にしたといいますから、メディア戦略という点でもその先進性は注目に値すると思います。

 プラモデルという今まで無かった商品の開拓者としての様々なエピソードは、それだけでも十分興味深く読むことができます。加えて、子供たちどころか大人たちさえもプラモデルを知らない状況に対し、インタビューに応じる関係者たち、そして筆者が「もっと工作の楽しさを知ってほしい」というメッセージを発しているのが印象に残ります。

(以下引用)
 精密スケールモデルから子供たちがギミック作りに挑戦するプラモデルがあったのが我々が子供時代のプラモデルだった。子供たちが手先、指先を動かすことで脳の発達が促されることも知られている事実だが、それは副次的なこととして、もう一度、子供たちにプラモデル作り、工作の楽しさを伝えられたらと思う。でも、その前に大人が楽しむことも大切なのだ。大人が夢中になることに、子供は興味をそそられるものだから。
(引用終わり)


 ものづくりに関心を持つ人には一読をお勧めしたいと思います。