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最近ちょっとお疲れ気味

「銑」の字が常用漢字から外される

2009-01-08 22:25:20 | Weblog
 今月の「鋳造ジャーナル」をぱらぱら読んでいたら、編集後記に「『銑鉄鋳物』の銑の字が常用漢字から外されてしまう。『せん鉄鋳物』と表記されるようになってしまうのは鋳物屋として寂しい限りだ。」という旨が書かれていることが目に留まりました。調べてみると、「銑」以外にも製造業と関係の深い字が常用漢字から姿を消してしまうようです。

常用漢字の追加候補220字を公表 文化審小委が公表(2008.5.13、産経ニュース)
(以下引用)
 社会生活でよく使われる漢字の目安となる常用漢字表の改定作業を進めている文化審議会の漢字小委員会は、「虎」や「狙」など常用漢字に新たに加える可能性がある候補の第1次素案として220字を公表した。7月までに精査して候補の漢字数を絞り込み、来年2月の文化審議会に試案を提案する。平成22年には答申をまとめ、新常用漢字表を決める考えだ。
(中略)
 一方、現在は常用漢字の「銑(せん)」「錘(すい)」「勺(しゃく)」「斤(きん)」「匁(もんめ)」「脹(ちょう)」の6字はほとんど使われていないため、外す方向で検討する。
(引用終わり)


 メートル法が定着した現在、「勺」、「斤」、「匁」が姿を消すのは仕方ないかもしれませんが、「銑」、「錘」、「脹」は「ほとんど使われていない」と評価するのはどうでしょう。
 しかし「常用漢字」とはそもそも何でしょう。Wikipediaによると、「法令・公用文書・新聞・雑誌・放送等、一般の社会生活で用いる場合の、効率的で共通性の高い漢字を収め、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安」であり、「常用漢字表の目的は、漢字使用の目安であって制限ではないため、強制力を有するものではない。」とありますから、常用漢字から外されようがあまり関係ないように見えます。
 とはいえ、公文書や国語教育、新聞報道ではそれなりの影響力があるでしょうから、「銑鉄鋳物」が「せん鉄鋳物」になってしまうのは杞憂ではなさそうです。漢字は言うまでもなく古代中国で生まれた文字ですが、これを取り入れた日本の文化形成に多大な影響を及ぼし、現代日本人にとっても切っても切れない存在です。「せん鉄鋳物」と表記されて寂しい思いをする人は日本人のごく一部かもしれませんが、むやみに漢字の使用に制限を設けようとする政策はいかがなものかと思います。